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heritagetimes

[歴飯_81]古民家カフェ 恭月



国道234号線の山北町・樋口橋の交差点を南に折れて酒匂川を足柄橋を超えた先に、日本の滝百選にも選定されている「酒水(しゃすい)の滝」の観光バス用の駐車場が見えてくる。

その駐車場の道を挟んだ、一段高い場所に古民家カフェ恭月はある。

おそらく元々は茅葺であったであろう大屋根を持つ平屋の向かって右手にある入口に向かうと、最初に迎え出てくれたのは可愛い黒兎であった。人慣れしているのか、それとも餌を強請っているのか、人懐っこく寄ってきた。



入口は引戸の玄関になっていて、中に入ると正面に冷蔵ショーケースがあり、ケーキが並んでいた。「いらっしゃいませ」と店の人に促され、靴を脱ぎショーケースの左手の板の間の客室に上がった。田の字四つ間取りの和室を客室にしており、一番奥の床の間前の4人がけテーブルに案内された。

メニューのメインはパンケーキとなっており、注文の際には、パンケーキの写真が並ぶ大きなパネルが運ばれてきて、じっくり選ぶことができる。季節のメニューはマロンとアップルでだった。もちろんショーケースのケーキも選ぶことができるが、せっかくのおすすめということなので、アップルパンケーキと紅茶をオーダーした。



入店がちょうど午後3時ごろとあって、他のテーブルも含めほぼ満席で、ケーキをテイクアウトするお客もたびたび訪れており、地域の人気店であることが伺えた。

しばらくすると先に紅茶が運ばれてきた。紅茶は南部鉄器の鉄瓶に入っており、暖かいままたっぷり2杯はいただけそうだ。一杯目を注ぎ、パンケーキを待つ。



しばらくするとパンケーキが運ばれてきた。しっかりとした生地のパンケーキが二つ折りになっており、そこにリンゴのコンポートがたっぷり詰め込まれ、その上にホイップクリームがかけられている。一口食べてみると、見た目とは違い、甘すぎない自然な味で、リンゴ本来の味がよく伝わってくる。紅茶との相性も良い。

パンケーキを味わいながら改めて店内を見渡すと、野地板は裏から加工されているが、大きな梁の小屋組は見渡せる。シンプルで丁寧なリノベーションである。

そんなことを思いながら、パンケーキを食べ終え、2杯目の紅茶を時間をかけて飲み干した。縁側から午後の陽が柔らかく差し込んできた。



会計をするため、玄関の方に向かうと、入店時には気がつかなかったチョークアートが見送ってくれた。ショーケース脇に地元のスダチと自家製の梅干し(地場のブランド梅「十郎」を使用)が売られていたので、梅干しを買い求め、店を後にした。

帰りがけ、少しだけ足を伸ばして酒匂川に向かう途中、急流の水路に出会した。この水路は「東京電力リニューアブルパワー株式会社山北発電所」の導水路であった。山北発電所は、大正3(1914)年に運用が開始された歴史ある水力発電所で、取水口付近に煉瓦造水路橋などを現役で残している。名勝である滝はもちろんのこと、こういった地域の近代化遺産の見学と合わせて立ち寄るのも良いかもしれない。




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