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[レポート]葉山 日影茶屋「秋の酔ひ~日影おでんと旨い酒」【THE HERITAGE TIMES YOKOHAMA KANAGAWA】



逗子海岸から海辺を横須賀方面に向かう神奈川県道207号森戸海岸線を進む、緩やかな坂の途中にある切通しを抜け、道なりに進むと左手に相模湾、正面に小高い丘(軍見山(旗立山とも言う)を望む鐙摺(あぶずり)と呼ばれる場所に出る。この地名は、かつて源頼朝がこの地を訪れた際、険しい道に馬の鐙が擦れたことに由来しているそうである。そんな歴史ある場所の一画に葉山の老舗「日影茶屋」は位置している。

「日影茶屋」は寛文元(1661)年に、相模湾越しに江ノ島と富士山を望む海辺に峠の茶屋として創業した歴史を持つ。明治9(1876)年には旅館業を開始し、明治27(1894)年に葉山御用邸が造営されると、別荘地としての葉山の人気は一段と高くなり、外務大臣も務めた金子堅太郎や大杉栄など多くの要人や文化人をはじめ、別荘を持たない観光客の宿泊先として利用されている。現在の店舗は大正12(1923)年の改築された建屋をベースに、昭和9(1934)年、昭和40(1965)年にそれぞれ大規模な改築が行われている。こうした歴史的価値が評価され、平成23(2011)年には、客室棟と蔵が国の有形文化財に登録された。

昭60(1985)年に発売されたサザンオールスターズの2枚組オリジナルアルバム「KAMAKURA」に収録されている「鎌倉物語」の一節にも歌われていることから、その名を知る人も多いだろう。



そんな「日影茶屋」の中庭にておでんとお酒を楽しめるイベント「秋の酔ひ~日影おでんと旨い酒」があると聞き、参加した。昭和9(1934)年の改修で増築された破風の付く車寄せから店内に入る。待合室を過ぎ、奥の扉から中庭に出ると2階建ての店舗がL字型に中庭を囲んでいることが分かる。池に設けられた鹿威しと水音、時折山から吹く風音だけが響く中庭は、往来の喧騒から切り離された別世界のようである。客席は、赤毛氈が掛けられた縁台が池に沿って並んでいる。客室棟の2階は、中庭に向かって手すりと廊下、その奥にかつての客室へと続く障子戸が設けられており、旅館を営んでいたころの風情が残っている。



座席に着き、熱燗と日影おでんのセットを注文した。暫くすると厨房から中庭のコンロにおでんの入った土鍋が運ばれてくる。小皿に取り分けられる熱々のおでんは、とろろ昆布が乗せられており、あっさりとした出汁に良いアクセントとなっている。セットは全8種の具から大根や玉子など5種が盛り付けられているが、追加でも注文できる。おでんを頬張りながら飲む熱燗の美味しさに、気が付けば8種全ての具を注文してしまった。食後にふと周りを見渡すと、すっかりと日の暮れてきた中庭に客室棟が浮かび上がり、幻想的な光景をつくっている。イベントは令和4(2022)年10月31日まで開催中とのことなので、この機会に葉山の老舗の味と空間を是非味わってみてはいかがだろうか。





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