令和4(2022)年12月17日(土)から開催された「お城 EXPO 2022」をレポートする。(12月18日(日)まで)
「お城 EXPO 」は、平成28(2016)年12月にパシフィコ横浜会議センターで初開催以降、毎年横浜で開催され、今回で7回目。ピーク時には2万人、コロナ渦での開催となった昨年でも約1万3千7百人の来場者があった人気イベントである。今年も前売り「入城券」を購入し、いざ「参城」。
会場はパシフィコ横浜ノース。パシフィコ横浜ノースは令和2(2020)年4月、「パシフィコ横浜展示ホール」と「ザ・カハラ・ホテル&リゾート横浜」の間ににオープンした約6,300㎡の多目的ホールと大中小42室の会議室からなる国内最大規模MICE施設。その大きな会場をフル活用する形で、1階展示ホールのほか、2階から4階までぎっしり特別な展示やプログラムが展開されている。1階展示ホール前の入城口でチケットを見せ、そこでリストバンドが渡されいよいよ展示ホールに入る。
1階展示ホールには城郭の関連団体が情報発信のためのブースを出展している「城めぐり観光ゾーン」や書籍や城関係グッズの販売を行っている「城下町物販ブース」、イベントステージなどがある。このゾーンでは過去最大の出典者(城めぐり観光ゾーン(79)、城下町物販ブース(20))がリストに名を連ねた。
「城めぐり観光ゾーン」に神奈川県内から「公益社団法人相模原市観光協会」、「歴 x トキ / 三浦一族城郭保存活用会」、「小田原城・石垣山城・北条五代観光推進協議会」、「横浜の中世城郭・公益財団法人横浜市ふるさと歴史財団」、「公益社団法人鎌倉市観光協会」、「伊勢原市」、「横須賀市/ 横須賀市観光協会」が参加していた。また、2階ユニバーサルラウンジの隣では「湯河原町」が参加していたので各ブースの様子をレポートする。
<公益社団法人相模原市観光協会>
「公益社団法人相模原市観光協会」のブースでは、津久井城の歴史や遺跡調査、津久井湖城山公園の紹介に関するパネルのほか、発掘調査で出土した遺物も展示。また発掘調査の様子をタブレット端末でもご覧いただけます。そして、津久井城の歴史・構造・発掘調査の結果まで解説した津久井城ガイドブックの決定版「津久井城ものがたり」と、津久井城城主内藤氏の家紋と津久井城俯瞰図を組み合わせたデザインで、外袋に津久井城5代目城主内藤直行が書状に用いた「金割字寶朱印」をあしらったの御城印が特別販売されていた。
津久井城は戦国時代に小田原北条氏に仕えた内藤氏が城主を務めた山城で、天正 18(1590)年、豊臣秀吉による小田原攻めに伴い落城し、江戸時代初頭には麓に陣屋が置かれた。現在は津久井湖城山公園(相模原市緑区)内にその遺構が眠っている。
ブースのパネルでは平成22(2010)年から津久井湖城山公園内で行われてきた10年の及ぶ市民協働による発掘調査の成果がをまとめられており見応えがある。
<歴 x トキ / 三浦一族城郭保存活用会>
「歴 x トキ / 三浦一族城郭保存活用会」のブースでは、三浦一族ゆかりの城の紹介のほか、山城ガールむつみ氏のプロデュースよる御城印がずらりと並べられて販売されていた。
今回は新たに「新井城」の御城印が登場。新井城は戦国時代の三浦一族の本城。築城・廃城年代は明らかになっていないが、三浦一族が伊勢宗瑞(北条早雲)に攻められ、壮絶な最期をを遂げた舞台と考えられている。ブースには当日セミナーも担当している山城ガールむつみ氏も立ち、三浦一族ゆかりの城について来場者に語っていた。
<小田原城・石垣山城・北条五代観光推進協議会>
「小田原城・石垣山城・北条五代観光推進協議会」のブースでは、「「小田原城」「石垣山城」の御城印、北条五代武将の武将印・ステッカー、トートバックなど豊富なグッズが販売されていた。「北条五代観光推進協議会」は北条氏にゆかりのある14市町(伊原市・大阪狭山市・沼津市・三島市・伊豆市・伊豆の国市・横浜市・相模原市・鎌倉市・小田原市・箱根町・八王子市・川越市・寄居町)の行政及び観光協会が連携し、北条氏の様々な偉業や魅力を活用した観光事業を展開し、北条氏ゆかりの地として歴史や文化を広く全国に紹介し、地域の活性化を図ることを目的として結成された団体である。
昨年に引き続き『北条五代』を大河ドラマに!」と銘打った「北条五代」を題材としたNHK大河ドラマを誘致するための署名も行われていた。
<横浜の中世城郭・公益財団法人横浜市ふるさと歴史財団>
「横浜の中世城郭・公益財団法人横浜市ふるさと歴史財団」のブースでは、横浜市内の「小机城」「茅ヶ崎城」「榎下城」「寺尾城」の御城印に加え、「畠山重忠」の武将印のほか、「横浜城郭図(中世)」の販売のほか、令和3(2021)年度に実施された小机城址の発掘調査に関するパネル展示や動画の紹介が行われていた。
小机城(横浜市港北区)は、鶴見川に突き出た丘陵上の要害で、15世紀半ば(室町時代)までには築城されていたと考えられている。文明10(1478)年実際に戦の舞台にもなった。小田原北条氏の関東進出の重要な軍事拠点としての役割を担い、江戸時代に廃城されたと考えられている。
<公益社団法人鎌倉市観光協会>
「公益社団法人鎌倉市観光協会」のブースでは、鎌倉市内の歴史にちなんだ観光PRのほかカレンダーや武将印の販売が行われていた。
また、奇しくも、このお城EXPO2022の閉幕直後令和4(2022)年12月18日夜最終回を迎えるNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に因んで、「吾妻鏡」の江戸時代の複製から北条義時が62歳で逝去する場面を示すページが展示され、鎌倉歴史文化交流館の学芸員による解説も行われていた。鎌倉歴史文化交流館の「北条氏展」は令和5(2023)年3月11日まで。
<伊勢原市>
神奈川県伊勢原市の市域北東に丸山城址(丸山城址公園)がパネルで紹介されている。丸山城はかつて鎌倉時代には幕府とのつながりも深い御家人である糟屋藤太有季の居館、また室町時代には上杉定正の館として使用されていたと伝えられている。過去に実施された発掘調査では、周囲を囲む形で深さ6mを超す堀や土塁等の遺構が確認されている。
<横須賀市/ 横須賀市観光協会>
「横須賀市/ 横須賀市観光協会」のブースでは、バックパネル一面に源平合戦図屏風の図を広げ、角を挟み並んでブースを出展している「歴 x トキ / 三浦一族城郭保存活用会」と連携した横須賀市の観光情報のPRを行なっていた。
<湯河原町>
「湯河原町」のブースでは、「土肥会」による甲冑の展示とその活動紹介が行われていた。
土肥実平は源頼朝の挙兵に応じ、石橋山の戦いでその危急を救った武将。「土肥会」は石橋山の合戦から750年を機に昭和5(1930)年に創立し、令和4(2022)年に創立90周年を迎えた土肥実平を顕彰し、観光振興やまちづくりに生かしている市民団体。甲冑を着用した記念撮影に人気が集まっていた。
「城めぐり観光ゾーン」を概ね見終えたところで昼食時となったので、4階に用意された休憩処で昼食をとった。昼食処では、お城EXPO限定メニューとして「お城EXPO2022炒飯弁当(崎陽軒)」「ホテルメイドの中華弁当(横浜ロイヤルパークホテル)」「ホテルメイドの洋食弁当(横浜ロイヤルパークホテル)」「江戸清肉まん(横浜中華街発展会協同組合)」「チョコ兜ケーキ(ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル)」「チーズ小判スフレ(ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル)」「特製お城ケーキ(ドトールコーヒー)」が販売されていた。その中から「お城EXPO2022炒飯弁当」を選んで購入し昼食をとった。
昼食後は、3階の「お城シアター」「城の基礎知識」「よみがえる中世城郭模型展」「日本100名城&続100名城パネル展」「城の自由研究コンテスト 小中学生の部優秀作品展」「コーエーテクモゲームス特別展示 『信長の野望』で描く日本の城」「企画展示 城郭と技術」「長野剛 武将イラスト原画展」等を見学。
<よみがえる中世城郭模型展>
「よみがえる中世城郭模型展」では本邦初公開のものも含む岡田英樹氏製作の中世城郭模型10点が展示されている。1/2300から1/4700スケールで当時の縄張・惣構などが精巧に推定再現され、今となっては当時の面影がほとんどない中世城郭の実像に思いを馳せることができる。10点中半数の5点は神奈川県内の山城(河村城・大庭城・衣笠城・茅ヶ崎城・浦賀城)が紹介されていた。
<日本100名城&続100名城パネル展>
全国の名城を紹介する200枚のパネルが並ぶ様子は毎年圧巻。じっくり見ているとあっという間に時間が過ぎる。
今回は神奈川県内の城情報に焦点を当ててダイジェストで紹介したが、お城EXPOの見所は、全国から集まった城関連のブースやプログラムであり、十分まる一日楽しめる内容である。また、全国の城情報に触れることで、まるで日本全国を旅をした気分も味わえ、また各地の「歴史を生かしたまちづくり」の取組みを知ることもできる貴重なイベントであるといえる。今後もこのイベントが横浜で開催されることを願う。
Commentaires