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[レポート]オルガンふれあい街歩き パイプオルガンと横浜の街2022関連企画 昭和初期の非公開西洋館見学【パティスリー・モンテローザ三陽物産 / 横浜みなとみらいホール】

更新日:2022年10月2日



令和4(2022)年10月1日、オルガンふれあい街歩き パイプオルガンと横浜の街2022関連企画として開催された昭和初期の非公開西洋館「山手133番館」の見学会を取材した。

「お菓子を通じて横浜の歴史・文化を継承する」を信念とする三陽物産が昭和初期に外国人向け住宅として建てられた洋館「山手133番館」を保全のため取得し1年以上かけて修復。今回が初披露のとなる見学会である。今回は、三陽物産が所有する横浜で活躍した明治期の楽器商ドーリング商会が輸入したリードオルガン演奏が聴ける。

見学会は全4回。各回15名。THE HERITAGE TIMES YOKOHAMA KANAGAWAは午前中最初の回に参加した。




参加者はまず港の見える丘公園に集合し、スタッフに誘導されて現地に着く。

正面の門を通り、玄関から一歩入ると、穏やかなオルガンの音が参加者を迎え入れる。

このオルガンは日ノ出町で創業した西川風琴製造所製のリード・オルガン。約110年前に製造されたオルガンである。



開口部から秋晴れの日差しが室内を明るく照らす中、スタッフに促されて席に着く。正面には、スミス・アメリカン社製のリード・オルガン。約130年前に製造されたオルガンである。主催者の趣旨説明や関係者の紹介の後、早速、演奏が始まる。演奏者は早川幸子氏。

山手の静かな環境の中で、穏やかで深い響きの音色が部屋の中を包み込んだ。

 

<早川幸子氏プロフィール>

横浜市出身。東京藝術大学、ハノーファー国立音楽大学卒。東京藝術大学大学院修士課程修了。関東学院大学チャペルコンサート・オルガニスト、フェリス女学院中学校・高等学校オルガニスト。歌の伴奏をきっかけにリードオルガンと出会い、温かい音色と息遣いに魅せられる。パイプオルガン、リードオルガン、笙やアコーディオンによる演奏活動を行う傍ら、リードオルガンとハルモニウムの奏法・修理法を伊藤園子・信夫氏に学ぶ。日本オルガニスト協会、日本オルガン研究会各会員。

 

<プログラム>


ヨハン・セバスティアン・バッハ

最愛のイエスよ、われらここに集いて


ヨハネス・ブラームス

《11のコラール前奏曲》作品122より第5番〈装え、おお愛する魂よ〉


エドワード・エルガー

《晩課のヴォランタリー》作品14より第2番 アレグロ


ウィリアム・ブラッドベリー

主われを愛す


アイルランド民謡

この世の波風さわぎ


レイフ・ヴォーン・ウィリアムス(ラニ・スミス編曲)

この世にあかしを立て


岡野貞一(荒木真編曲)

故郷


 

演奏を終えると、大きな拍手がおこる。演奏者はオルガンを讃えた。

演奏後は、建物内部の見学である。

まず、建物を所有する三陽物産の代表取締役社長山本博士氏から建物の概要について解説があった。

山手133番館は、アントニン・レーモンドの設計であることが推察されるなど興味深いエピソードがあり、またどのように改修が進められてきたかについてはYouTubeチャンネル「山手西洋館チャンネル」に詳しい動画がアップされているので是非、ご覧いただきたい。



館内には、居間と応接間にレンガ造の暖炉、上下窓、玄関のステンドグラス、収納式のアイロン台、スチールドアなどの設が残されており、往時を偲ぶことができる。

山手133番館は山手地区の南東の高台に位置しており、広く眺望が開けており、2階からはベイブリッジの頭頂部も見ることが出来た。かつては眼前に港と海、遠方には房総半島も臨むことが出来たと考えられる。まさに旧居留地山手の西洋館らしい建物であると言える。



館内の見学を一通り終えたところで、山本氏の案内で外構周りを見学した。

「初めて見た時にはこのような様子であまり惹かれなかったが、内部に入って気持ちが変わった。」「ガラリ戸を復元してつけただけで、こんなにも西洋館らしい外観になる」と改修前の様子などをフリップで参加者に見せながら解説し、参加者からも積極的に質問が寄せられるなど、熱気に溢れていた。



見学会の最後は、山本氏による山手の歴史名所ツアー。現在、元町公園に移築されている横浜市認定歴史的建造物「エリスマン邸」や「横浜英和学院」、「ヘボン博士住居」がもともとあった場所などの名所を案内しつつ、港の見える丘公園まで参加者を案内した。

山本氏からは「実は今回のイベントには定員の10倍応募があった。今日参加出来た人は本当にラッキーな方々。山手133番館にとっても今日は記念すべき歴史の1ページとなった。」と話があり、熱心な解説を行った山本氏に対して参加者から拍手が送られた。



今回、関係者として参加したみなとみらいホール2代目ホールオルガニストの「ホールでオルガンを持っている自治体は多いが、こうして街や街の歴史と結びついている都市は稀有。このように古いオルガンを残し、こうした機会を設けていただいた山本氏に感謝したい。」と話していたのが印象的であった。




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