小田原駅東口を出て線路に並行して北に向かい、すぐ左手の少し奥まった敷地の先の階段を上がると、ピンク色の可愛らしい平屋の西洋館がある。
今回訪れたのは、この旧大雄山線管理事務所の建物を、昭和初期の雰囲気そのままにカフェとしてリノベーションした「大雄山線駅舎カフェ1の1」である。店名の「1の1」はこの住所が「小田原市栄町1丁目1番地」であることに由来する。
大きく張り出した庇ポーチがかかる入口を入ると、向かって右側手前が受付とキッチンになっており、客室は向かって左側奥に向かってL字型に伸びていて、往時から使用していたのではないかと思われる使用感のある個性豊かな全部で40席程度の椅子やテーブルが並んでいた。
昼時であったこともあり、店内はほぼ満席で少し待ったが、しばらくして客室のほぼ中央、2人がけのテーブル席に案内された。
メニューに目を通すと、ハンバーグ、ドリア、パスタなどを中心にバラエティに富んだラインナップ。どれも魅力的であったがその中から「三浦の赤たまご 鉄板焼ナポリタン」の大盛りを注文した。
改めて店内を見渡すと、天井には、灯具のメダリオンの痕跡が見られるほか、伊豆箱根鉄道で当時使われていたつり革や車内非常ボタン、運転レバー、切符といった貴重な品々が展示されており、一つ一つを見るのも楽しい。
注文を待つ間、店内の展示品を紹介する資料をいただけたり、隣の席の小学生くらいの子には、鉄道員制服の帽子を被せ記念写真を撮るといった待ち時間も楽しむためのサービスが提供されている。
この建物を所有する伊豆箱根鉄道大雄山線は元々大雄山鉄道として大雄山最乗寺(通称、道了尊)へお参りするための交通手段として大正14(1925)年に開業した。開業当時は小田原駅に乗り入れておらず500mほど手前に仮小田原駅(後に相模広小路駅に改称、小田原駅までの路線延伸に伴い昭和10(1935)年廃止)であったので、当初開業時にはこの建物の裏手に大雄山鉄道は走っていなかったと考えられる。いずれにしても昭和初期には駅施設として使用され始めたものと推察される。
そんなことを考えているとまもなく、注文の品が運ばれてきた。熱々の鉄板に乗ったナポリタン。さらにその上には目玉焼きがのっていて豪華。味は甘味と酸味がしっかりともっちりと柔らかい麺に絡んだ昔ながらナポリタン。さらに鉄板で熱いまま提供されるため、最後までアツアツのまま楽しめた。ボリュームも満点ですっかり満腹になってしまった。
デザートにもプリンやパフェなど魅力的なメニューが並んでいたが、今日は満腹のためここまで。デザートは次回の楽しみにすると決めて会計に向かう。会計時に「ご満足いただけましたか?」と問いかけてきたスタッフから、どの素材にもこだわりを持った地元の素材を使っていることを聞いた。ホームページによると、運営は「漁港の駅TOTOCO小田原」や「道の駅足柄 金太郎のふるさと」を運営し、神奈川地域の地元農業・業業従事者などと協力して、地方に眠る逸材を発掘し、ヒット商品にブランディングする「株式会社相州村の駅」。今回は食材だけでなく歴史的建造物もうまくブランディングにつなげられたようだ。
最後に「お客さまお帰りです。いってらっしゃい!」の声と合わせてチンチン電車の鐘を3回鳴らして見送ってくれた。
歴史的建造物としても見どころ満載で、食事も美味しく、元気の出るカフェ。是非、一度訪れていただきたい。
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