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[歴飯_151]さくらや



三崎港の中心、三崎公園の周囲には歴史的な趣に溢れる建物が並んでいるが、海南神社に向かう参道の角に佇んでいる3階建の建物がある。そこが今回歴飯で紹介する「さくらや」である。

到着した時には店の前に何人か入店待ちの客がいたが、タイミングが良かったのか、程なくして店内に案内された。入って入口すぐ手前右側のテーブルに座ってメニューを見る。

三崎の磯料理屋らしく、マグロを中心とした魚料理の定食や丼がたくさんメニューに並んでいて目移りするが、刺身と揚げ物が両方味わえる定番の「御定食」を注文した。また同行者の一人は小丼を6種の中から2種選べる「小丼セット」を、もう一人は「中とろ・赤身・ねぎとろの三色丼」を注文した。



注文の品が届く間、店内を見渡す。入口から入って手前側には4人掛けテーブルが6卓並んでいて、奥が上がり間の調理場になっている。調理場に向かって左側には上階に向かう鉄砲階段が取り付いている。

改めて建物の外観を見ると、1階は立ち上がり部がタイル貼り、ガラスが入った引戸の左側にはメニュー表が並んだショウウィンドウが、右側も元々は開口部だったと思われるが、メニュー表で塞がれている。1階には瓦4枚程度の瓦屋根調の下屋があり、その上には「磯料理・まぐろ料理 さくらや」と書かれた内照式の看板が付いており「えび」と「まぐろ」のイラストが添えられている。2階3階の開口部には低い欄干が据えられていて、全体の構成はシンプルながら料亭としての基本的な要素を備えている。


店内に戻ったところで注文の品が運ばれてきた。「御定食」には三崎鮪の刺身に海老と鮪のフライ、小鉢、ご飯、味噌汁、漬物がつく。刺身が美味しいことは言うまでもないが、マグロのフライがとても柔らかい食感で、ジューシーなマグロの旨みが口全体に広がる。 

「小丼セット」は「鮪丼・ねぎとろ丼・鮪ソースかつ丼・鮪の山かけ丼・天丼・あじのたたき丼」から「ねぎとろ丼」と「鮪の山かけ丼」を選んだもの、そしてもう一つの「中とろ・赤身・ねぎとろの三色丼」も運ばれてきた。どの刺身も艶やかで美味しそうですあるが、同行者の感想も「大満足」とのことであった。



食後に店主の許しを得て、2階を見せていただいた。2階は床間に網代船底天井を備えた座敷になっていた。店主によると「三崎港が景気が良い頃は船の入港にあわせて芸者を呼ぶ宴席がよく開かれていた。」とのこと。また、「この建物は昭和2(1927)年に上棟。その後3階建てになったが、時期はよくわからない」とのことであった。



三崎の漁港は、東京湾の入口にあり、城ヶ島が遮蔽となる良港として早くから沖合・沿岸漁業の拠点として発達した。漁船の近代化、大型化が進んだ昭和初期からは、まぐろ類の水揚げで全国有数の遠洋漁業基地として知られるようになる。「さくらや」の開業は丁度その頃ということになる。三崎港が隆盛を誇ったのは、戦後大資本が進出し、マグロに対応した船内冷凍技術が確立された昭和30年代。「さくらや」は、この時代の賑やかな三崎の様子を今に伝える貴重な歴史資産と言える。是非、建物とともに三崎の歴史を後世に伝え続けていただいきたいと願いながら、美味しい食事で満たされて、店主に礼を言い、店を後にし、海南神社へ向かった。






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