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[歴飯_152]からすみ蕎麦月と松



鎌倉時代には和賀江島湊が整備され、海の玄関口であった鎌倉市材木座。かつては材木を扱った商工組合「座」がおかれたことから材木座の地名が付けられた。住宅街となった今でもまちを歩くと歴飯_126亀時間や歴湯_07清水湯のように立派な木材を使った古民家や商店に出会う。そんな歴史ある地区の一画に店を構えるのが、今回の歴飯で紹介する「からすみ蕎麦月と松」である。鎌倉市扇ガ谷にて古民家で味わう中華料理「イチリンハナレ」を営む株式会社ウェイブズが「不易流行」をコンセプトに日本の伝統文化を大切にしながら、新たな価値を融合させた店舗を手掛けている。



樹齢100年の松と赤提灯に誘われて門をくぐると、数寄屋造りの味わいある玄関へと前庭が続く。店内は庭を囲むように広間、個室、お茶室と3つの座席が設けられている。今回は広間の席に案内された。築100年程度とされる家屋に日本庭園から一面に射し込む陽光が陰影を添え、何とも味わい深い。鴨居や書院など随所に職人技を感じる造作も目を奪われる。改修工事には鶴岡八幡宮の宮大工も携わったとのことからも、旧き良き日本文化への拘りが感じられる。



同店のメニューは名物のからすみ蕎麦に小皿料理を付けたコース料理で構成されている。今回は「からすみ蕎麦のショートコース」を注文した。暫くすると突き出しにちりめん雑魚とほうじ茶が提供される。ほうじ茶を飲みながら、山椒が優しく香る雑魚をつまんでいると、コース料理が運ばれてきた。一品目は夏至の時期を感じさせる「白バイ貝のつぼ焼きと伏見唐辛子」である。優しい味付けのバイ貝は柔らかで歯切れもよく、伏見唐辛子の苦みも夏を感じさせる。二品目の「鱧とたたきオクラ」は湯引きされた鱧にオクラのとろみと梅の酸味が良いアクセントとなっていた。



小皿料理を食べ終わると、いよいよメインの「からすみ蕎麦」が運ばれてくる。打立ての御蕎麦に自家製のからすみを乗せた「からすみ蕎麦」からフワッと広がるからすみの特有の香りに食欲をそそられる。からすみは削りとスライスの2種類が乗せられており、蕎麦に絡ませながら食べ進めていく。からすみの塩気が程よく、蕎麦と絡めると深みのある旨みを感じられる一品であった。

鎌倉駅からはやや距離があるが、鎌倉のまちを散策しながら旧き良き日本文化を味わってみてはいかがだろうか。




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