京浜急行本線横須賀中央駅を降り三浦街道を登っていくと、上町一丁目の交差点に至る。上町と呼ばれる一帯は軍港が近かったこともあり、かつては海軍の士官が多く住んだ地域だそうだ。街道筋には5つの商店街が形成され、地域の生活を支えている。中でも三浦街道沿いに連なる上町銀座商店街は、「看板建築」呼ばれるレトロな建築が多く残り、歩いていて楽しい。「看板建築」とは、関東大震災以降に拡がった建築で、木造建築の延焼防止のため通り沿いを中心にモルタルやタイル、銅等の金属板といった不燃材料で覆い、装飾が施されている点に特徴がある。表層を看板のように覆った姿から藤森昭信氏(建築史家、建築家)によって「看板建築」と名付けられた。「看板建築」の商店を巡りながら、上町銀座商店街から一本裏手に入る、かつては浦賀から江戸まで続いた旧道「浦賀みち」沿いに今回の歴飯で紹介する「ヨネヤ」がある。
上町銀座商店街の看板建築
かつては米穀商を営んでいた店舗だったとのことで、店名を「ヨネヤ」としたとのこと。店主によれば、明治末頃に建てられ、関東大震災でも倒壊を免れた建物とのことである。外観を見ると、側壁は石造りで屋根瓦を乗せた姿は川越等でも見られる蔵造りの商家にも似ており、防火や防湿等を考えて造られたことが窺える。
店内に入ると、右手にカウンター、左手壁沿いにテーブル席が続く。奥には団体で使用できる小部屋もあるそうだ。古材や古道具を活かした内装も素敵である。店主はDJでもあるそうで、カウンターにはDJブースも設けられている。石壁や土間に囲まれた空間からか、薄暗い店内を照らす照明と店内に響く音楽が心地良い。
早速カウンターで日本酒(寒菊 True Red)とトマトの酒粕和え、チーズの盛り合わせを注文した。寒菊 True Redはフルーツのような華やかさと甘さに微発砲の爽快感が合わさり、湯向きされたトマトの酒粕和えにピッタリの一杯であった。米屋であった歴史にちなんで、おにぎりも始めたそうで、ふっくらしたお米をしっとり覆った海苔、多種な具材も美味しい。
上町地区の歴史を紡ぐ「ヨネヤ」。商店街散策と合わせて是非お勧めしたい。
Comments