JR藤沢駅南口から江ノ島電鉄石上駅方面に向かうと藤沢市民会館が見えてくる。市民会館の一画に佇むのが旧近藤邸である。元は藤沢市辻堂東海岸の松林に大正14(1926)年に建てられた別荘建築である。設計者は旧帝国ホテル(明治村に一部移築保存)や自由学園明日館(現存)の設計者として知られるF.L.ライトの弟子、遠藤新である。ライト建築の特徴であった、「プレーリースタイル」(屋根を低く抑え、水平を強調した建屋が自然の中に溶け込む建築様式)をよく受継いだ建築家だ。一時は取壊しも検討されたが、市民や建築家の保存要望を受け、昭和56(1981)年に現在の場所に移築された。平成14(2002)年には国の有形文化財に登録されている。
無料で建物見学ができるが、内部では食事やお茶をいただくこともできる。ハンバーグステーキやカレーの喫茶メニューの他、藤沢のご当地グルメ「村岡マヨ焼きそば」等もあり、豊富なメニューとなっている。 玄関を入り左手奥の和室と右手のリビングが喫茶スペースとなっている。リビングには別荘であった頃の古写真や図面が飾られている。F.L.ライトや遠藤新の建築には、大谷石が使用されていることが多いが、ここでもリビングの暖炉と庭の池が大谷石でつくられている。余談ではあるが、この暖炉では「近藤邸を守る会」により、毎年火入れのイベントも行なわれている。藤沢の別荘文化を伝える旧近藤邸。藤沢を訪れた際は、立寄ってみてはいかがだろうか。
Comments