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[歴飯_87]去来庵



JR北鎌倉駅から建長寺方面に向かって歩く。明月院に続く小路近くの踏切を過ぎ、少し行くと、左手に「去来庵」と書かれた木製の看板と雰囲気のある門が見えてくる。ここは、古民家で味わうビーフシチューの有名店だが、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、現在は喫茶のみの営業となっている。

門をくぐり、苔が生した斜面を眺めながら階段を上がると、往来の喧騒とは切り離された、庭園と日本家屋に至る。「去来庵」の店舗は、昭和初期に建てられた別荘であり、鎌倉市の風情ある建物の保存活用を支援する制度「景観重要建築物等」にも指定されている。通りから直接家屋を見せないアプローチは、いかにも旧別荘らしい。



庭先に設けられた戸口から店内に入ると、タイル張りの通り土間に沿って座敷と窓が連なり、庭の緑が薄暗がりの店内に映える。戦前に建てられた数寄屋造りの別荘では、庇部分の屋根材を和瓦葺きから金属板葺き(銅板葺きが多い)にすることで屋根全体を軽くし、窓からの眺望を遮らないよう、庇を支える柱を減らす工夫が見られる。「去来庵」の店舗も窓部の庇には柱がなく、窓一面に庭の景色が楽しめる。こうして造られる深い庇により、室内の陰影が際立ち、空間に深みが出ている。



通り土間の奥は床の間のある小さな座敷となっており、茶室としても使えるよう床には炉が切られている。今回はこの奥座敷に案内された。床の間を背に座ると、正面には細かい組子細工が施された摺ガラスの建具越しに庭木の陰が揺れている。庭から聞こえる野鳥の囀り以外ほとんど音がない。「静謐」という言葉がぴったりだと思う。

喫茶のみの営業とのことだが、軽食はいただけるようだったので、抹茶ラテとたまごトーストを注文した。たまごトーストの自家製マヨネーズは注文を請けてから、作りたてが提供されるため、シンプルだが香りも良く美味しい。抹茶ラテも抹茶の香りが立ち、トーストと良く合っていた。チーズケーキも人気があるそうなので、次回は試してみたい。



「去来庵」は、円覚寺、明月院、東慶寺、浄智寺、建長寺と北鎌倉の主要な寺社のほか、鶴ケ岡八幡宮にもアクセスの良い場所に位置している。日本家屋と庭園を活かした古都鎌倉らしい雰囲気の中でいただく喫茶は一味も二味も違うので、鎌倉散策の休憩場所として是非訪ねていただきたい。



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