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heritagetimes

[歴飯_155]富士屋旅館 瓢六亭



湯河原温泉街の通りを藤木川に沿って登っていくと万葉公園過ぎた左手にジブリ映画に出てくるような朱色の橋が見える。その先にあるのが湯河原温泉を代表する温泉宿の一つである富士屋旅館である。今回「歴飯」で訪れたのは、富士屋旅館の食事処「瓢六亭」である。

橋を渡った先には大きく「FUJIYA RYOKAN」と書かれた看板が見える。

その看板に向かって右側が「瓢六亭」の入口となっている。大きな瓢箪型の看板が掛かる入口を入った瞬間、目の前のオープンキッチンから漂ってくる炭火の熱気とタレの香りが食欲をそそる。屋号の由来は六つの瓢箪で六瓢(むひょう)。無病を掛け合わせた日本の伝統的吉兆意匠で、「無病息災」を意味する。



店のスタッフに事前に予約していたことを伝えると、店内奥の予約席に通され、メニューを渡される。看板である鰻重を中心としたメニューだが、ひつまぶし、天丼、刺身御膳などもある。鰻重だけでも太鰻が2尾のる「きわみ極上」から「きわみ(太鰻1尾)」「特上(中太鰻2尾)」「特上(中太鰻2尾)」「上(中太鰻1.5尾)」「並(中太鰻1尾)」までいくつもの段階があるが、並を注文。あわせてお吸い物を「肝吸」に変えてもらった。



注文の品が届くまでの間、あたりを見渡す。鉄骨の柱に天井に鉄骨のトラスが渡っている。半個室となっているところは衝立で仕切られており、建具にはいくつもの組細工や彫り物などが施されて見ていて飽きない。

富士屋旅館は、戸時代後期にはすでに温泉宿を営んでいたと伝えられる老舗旅館。創業以来、創業家によって経営されていたが、人々の余暇に対するニーズ、旅行形態の変化により、湯河原温泉街そのものが衰退したこと、また、後継者不足などの問題で、平成14(2002)年に廃業した。しかし湯河原町をはじめとした観光協会、温泉協会など地域からの再生を望む声が強かったことなどから、地域経済活性化支援機構(REVIC)と横浜銀行が共同出資する「かながわ観光活性化ファンド」第一号案件として取り組むことが決定。平成28(2016)年に事業者を公募。選定された事業者による3年の大改修を経て、平成31(2019)年、17年ぶりの再開業となった。



3年に及ぶ大改修では、川沿いに建つ大正12(1923)年建築の旧館、京都から材木を運んで造られたという洛味荘は、意匠を保全しつつ傷んだ部分を復元。一方新館については、ほぼ骨組みだけを残して間取りも大幅変更したという。

瓢六亭はその新館部分にあたるので、内装や構造から往時の姿を思い起こすことは困難だが、転用材と思われる建具や装飾からは、いかに歴史ある旅館であったのかイマジネーションが広がる。



せっかくのオープンキッチンなので、調理の様子を見にいくと、ちょうど注文した鰻に串が打たれタレをつけられて焼かれていた。瓢六亭の鰻は蒸さずに焼く「地焼き」。火の粉が飛ぶほどの臨場感でさらに食欲がそそられる。

いよいよ席に鰻重が運ばれてきた。途端にタレの香りがあたりに立ち込める。蓋を開けてゆっくりと味わいながら食べ進めると、重箱の底が見えてきた。重箱は二重になっており、内側の底は蒸篭になっており、湯気がしっかり抜けてほかほかのご飯が、外がカリッとしている地焼きの鰻によくあっている。至福である。



至福のひとときを過ごして、店を後にした。

この日は湯河原温泉の街歩きイベント「湯探歩」の日だったので、富士屋旅館の前でもイベントが行われていた。

復活した老舗旅館を中核とした歴史を生かしたまちづくり。是非、一度体験していただきたい。



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