横浜・山下公園からイチョウ並木を抜けて新山下本面に向かうと目の前に「MEGAドン・キホーテ港山下総本店」が見えてくる。そこは平成11(1999)年までバンドホテルが営業していた場所で、その跡地に平成12(2000)年に「MEGAドン・キホーテ山下公園店」が開店、平成28(2018)年には隣接していた国有地を取り込む形で売場を3倍増させた「MEGAドン・キホーテ港山下総本店」としてオープンしている。
そのドン・キホーテの建物に取り囲まれるように建ちながら、一角だけまるで違う世界観を醸し出しているビルがある。
ツタが絡まるそのビルの1階に店を構えているのが、今回「歴飯」で訪れた「マリンベーカリー」である。青いオーニングとネオンサイン、店内を見渡せるガラス張りの外観が目を引く。テラス席では美味しそうにパンを頬張る先客の姿が見られた。
入口のガラス扉を開けて店内に入ると、「エッグタルトが焼きたてです!」との声と共に美味しそうな焼きたてパンの香りに包まれる。そう広くない店内の両側の商品棚に所狭しとパンが並んでいる。
「エッグタルト」「クロワッサン」「あんバター」「プチバケット」と魅力的な商品が並んでいる中から「ラタトゥイユ風カリーフランク」を選び「アイスカフェラテ」と一緒に注文して店内の席に座って待つことにした。
資料によるとこの建物は昭和45(1970)年築の「丸善ビル」。ビルオーナーが店を出した後、イタリア料理店などを経て、令和元(2019)年、マリンベーカリーがオープン。マリンベーカリーのオーナーは元町出身。名だたるパン屋さんで修行を積み独立したとのこと。
店内を見渡すと、落ち着いた色の羽目板で統一された店内には、客席は4人掛けの席と2人掛け席が二つ計10席。天井には補強のためなのか鉄骨と波板鉄板が組まれている。広くは無いが、ガラス張りのおかげであまり狭さを感じない。
少しして商品ができたと声がかかる。ラタトゥイユ風カリーフランクは、外はパリッと、中はふわっとした食感で、噛み応えのあるジューシーなフランクフルトソーセージが、カレー風味に相まって、絶妙なバランスとなっている。
元町から流れてくる街ゆく人を眺めながら、しばし美味しいパンとコーヒーで、ゆっくりとした時間を楽しんだ。
実はこの店の裏手、ドン・キホーテの入口スロープの奥には、「旧イギリス海軍物置所護岸」という歴史的な遺構が残されている。ごく一部の保存ではあるが、当時の海岸線を示す、象の鼻防波堤に並ぶ幕末・明治初期の最古級の土木遺構である。是非、併せてご覧いただきたい。
Comments