[レポート]お城EXPO 2024【パシフィコ横浜ノース】
- heritagetimes

- 2024年12月25日
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令和6(2024)年12月21日(土)から開催された「お城 EXPO 2024」をレポートする。(12月22日(日)まで)
「お城 EXPO 」は、平成28(2016)年12月にパシフィコ横浜会議センターで初開催以降、城郭文化の振興と発展やお城好きの方々との交流を目的に毎年横浜で開催され、今回で9回目。ピーク時には2万人、前回の「お城EXPO 2023」は、前夜祭を含む3日間で約1万8千人の来城(来場)者があった人気イベントである。

会場はパシフィコ横浜ノース(一部パシフィコ横浜アネックスを使用)。パシフィコ横浜ノースは令和2(2020)年4月、「パシフィコ横浜展示ホール」と「ザ・カハラ・ホテル&リゾート横浜」の間ににオープンした約6,300㎡の多目的ホールと大中小42室の会議室からなる国内最大規模MICE施設。その大きな会場をフル活用する形で、1階展示ホールのほか、2階から4階までぎっしり特別な展示やプログラムが展開されている。1階展示ホール前の入城口でチケットを見せ、いざ「参城」。

1階展示ホールには城郭の関連団体が情報発信のためのブースを出展している「城めぐり観光情報ゾーン」や書籍や城関係グッズの販売を行っている「城下町物販ブース」、イベントステージなどがある。このゾーンでは114の出展者(城めぐり観光ゾーン(81)、城下町物販ブース(18)ほか)がリストに名を連ねた。
「城めぐり観光ゾーン」には神奈川県内から「公益財団法人横浜市ふるさと歴史財団」、「小田原城・石垣山城・北条五代観光推進協議会」、「津久井城~内藤大和入道あらわる!~/相模原市」、「横須賀市/横須賀市観光協会」「歴 x トキ / 山城ガールむつみ / 三浦一族の城」、「伊勢原市」が参加していた。また、3階「城報ラウンジプラス」では「一般社団法人湯河原温泉観光協会・土肥会」「株式会社パスコ」が参加していたので各ブースの様子、また、その他の見所も合わせてレポートする。
<K-65 公益財団法人横浜市ふるさと歴史財団 小机城ー横浜の中世城郭ー>
「公益財団法人横浜市ふるさと歴史財団」のブースでは、横浜市内の「小机城」「茅ヶ崎城」「榎下城」「寺尾城」「横浜城郭図(中世)」の販売、小机城址の発掘調査に関するパネル展示や動画紹介のほか、公益材団法人横浜市ふるさと歴史財団埋蔵文化財センターが令和3(2021)年と令和5(2023)年に試掘調査を実施し、令和6(2024)年3月に刊行した「試掘調査報告書 横浜市港北区『小机城跡』」も販売していた。

小机城(横浜市港北区)は、鶴見川に突き出た丘陵上の要害で、15世紀半ば(室町時代)までには築城されていたと考えられている。文明10(1478)年実際に戦の舞台にもなった。小田原北条氏の関東進出の重要な軍事拠点としての役割を担い、江戸時代に廃城されたと考えられている。
今年のブースでは新たに製作された測量成果をもとに作られた大型の地形図も展示されていた。

横浜市港北区のキャラクター「ミズキー」
<K-66 伊勢原市>
神奈川県伊勢原市の市域北東にある丸山城址(丸山城址公園)がパネルで紹介されている。丸山城はかつて鎌倉時代には幕府とのつながりも深い御家人である糟屋藤太有季の居館、また室町時代には上杉定正の館として使用されていたと伝えられている。過去に実施された発掘調査では、周囲を囲む形で深さ6mを超す堀や土塁等の遺構が確認されている。
ブースでは発掘調査の成果、歴史ツアー「謎多き城跡と神秘の大山訛り」の紹介、初の御城印販売などが行われた。

<K-67 津久井城~内藤大和入道あらわる!~/相模原市>
「津久井城~内藤大和入道あらわる!~/相模原市」のブースでは、津久井城跡の市民協働発掘調査の内容、城主を務めた内藤大和入道を紹介するパネル、出土品の「古瀬戸茶入」の展示のほか、津久井城ブランド品、津久井湖城山公園ガイドブック「津久井城ものがたり」、御城印の販売が行われていた。

津久井城は戦国時代に小田原北条氏に仕えた内藤氏が城主を務めた山城で、天正 18(1590)年、豊臣秀吉による小田原攻めに伴い落城し、江戸時代初頭には麓に陣屋が置かれた。現在は津久井湖城山公園(相模原市緑区)内にその遺構が眠っている。
その特徴はなんといっても平成22(2010)年度から進められている市民協働調査。その調査内容の一部も知ることができる。

<K-68 小田原城・石垣山城・北条五代観光推進協議会>
「小田原城・石垣山城・北条五代観光推進協議会」のブースでは、「小田原城」「石垣山城」の御城印、北条五代武将の武将印・ステッカー、トートバックなど豊富なグッズが販売のほか、甲冑・着物の着付け無料体験が実施されていた。

「北条五代観光推進協議会」は北条氏にゆかりのある14市町(岡山県井原市、大阪府大阪狭山市、静岡県沼津市、三島市、伊豆市、伊豆の国市、神奈川県横浜市、相模原市、鎌倉市、小田原市、箱根町、東京都八王子市、埼玉県川越市、寄居町)の行政及び観光協会が連携し、北条氏の様々な偉業や魅力を活用した観光事業を展開し、北条氏ゆかりの地として歴史や文化を広く全国に紹介し、地域の活性化を図ることを目的として結成された団体である。ブースでは『北条五代』を大河ドラマに!」と銘打った「北条五代」を題材としたNHK大河ドラマを誘致するための署名も例年通り行われていた。

<K-79 横須賀市/横須賀市観光協会>

横須賀市にかつてあった衣笠城は平安時代から鎌倉時代にかけて三浦半島に勢力を張った「三浦一族」の本城で、康平年間(1058年~1064年)三浦為通によって築城されたといわれている。
治承4年(1180年)8月、源頼朝の旗揚げに呼応して、この城に平家側の大軍を迎えての攻防戦は、いわゆる衣笠合戦として名高い。ブースではこの衣笠城のジオラマと源平合戦図屏風(複製)が展示されていた。
<K-89 歴×トキ/山城ガールむつみ/三浦一族の城>

「歴 x トキ / 山城ガールむつみ / 三浦一族の城」のブースでは、三浦一族ゆかりの城の紹介のほか、山城ガールむつみ氏のプロデュースよる御城印がずらりと並べられて販売されていた。

源頼朝の旗揚げを助け、共に鎌倉時代の幕を開いた三浦一族。その後、三浦義澄、三浦義村、和田義盛、佐原義連といった一族が幕府で重用され、中世を代表する武家へと発展した。その活躍は青森から九州まで、全国に広がり、鎌倉時代から戦国時代、さらには江戸時代まで生き抜く名族となった。
<一般社団法人湯河原温泉観光協会・土肥会>
3階「城報ラウンジプラス」では、「一般社団法人湯河原温泉観光協会」「土肥会」による甲冑の展示・体験とその活動紹介が行われており、甲冑の着用体験に人気が集まっていた。
土肥実平は源頼朝の挙兵に応じ、石橋山の戦いでその危急を救った武将。「土肥会」は石橋山の合戦から750年を機に昭和5(1930)年に創立し、土肥実平を顕彰し、観光振興やまちづくりに生かしている市民団体。

<株式会社パスコ・横浜市立小机小学校6年生の総合的な学習の時間 - 城熱プロジェクト>

石垣修復体験VRの紹介のほか、測量成果を活用した小机城のジオラマプロジェクションマッピングが展示されていた。また、合わせて横浜市立小机小学校6年生の「総合的な学習の時間 - 城熱プロジェクト」で作成された小机城をPRする「のぼり」とプロジェクトの活動内容を紹介する展示もあった。

<日本100名城&続100日本名城パネル展>
全国の名城を紹介する200枚のパネルが並ぶ様子は毎年圧巻。じっくり見ているとあっという間に時間が過ぎる。神奈川県内の「日本100名城」は「小田原城」1か所、「続日本100名城」は「小机城」「石垣山城」の2か所の計3か所が選出されている。

<城の自由研究コンテスト 優秀作品展>

毎年夏にお城をテーマにした自由研究を募集している「城の自由研究コンテスト」。第23回となる今回の応募作品の中から受賞作品が展示していた。
神奈川県内からも茅ヶ崎市立柳島小学校3年の久保蒼一郎氏の「北条100年のひみつを追え!~小田原北条氏の強さは何だったのか~」が小学生の部の佳作で、横浜市立本牧中学校2年の市毛愛理氏の「先祖は豊後武士!?~岡城誕生は文治元年か、元暦元年か~」が中学生の部の優秀賞で入賞している。

<企画展示「城郭からみる日本遺産」>

文化庁が地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリーを認定する「日本遺産」を、その構成文化財となっている「城郭」を軸に様々な角度から紹介していた。
令和6年(2024)年9月に文化庁とお城EXPOの主催者の1つである(公財)日本城郭協会が日本遺産オフィシャルパートナーシップを締結したことを受け、城郭や城郭に関連する文化財を通じて日本遺産の紹介することを目的としている。

日本遺産(Japan Heritage)とは、文化庁が認定する地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリーのこと。また、文化庁はこれらのストーリーを語る上で不可欠な魅力ある有形・無形の様々な文化財群を総合的に整備や活用する取組の支援や、これらを国内外への発信することによって、地域の活性化や観光振興を目指している。
神奈川県内には、「『いざ鎌倉』~歴史と文化が描くモザイク画のまちへ~(鎌倉市)」、「江戸庶民の信仰と行楽の地~巨大な木太刀を担いで『大山詣り』(伊勢原市)」、「鎮守府 横須賀・呉・佐世保・舞鶴 ~日本近代化の躍動を体感できるまち~(横須賀市)」、「旅人たちの足跡残る悠久の石畳道ー箱根八里で辿る遥かな江戸の旅路(小田原市・箱根町)」があり、小田原城跡と山中城跡が「旅人たちの足跡残る悠久の石畳道ー箱根八里で辿る遥かな江戸の旅路」が構成要素となっている。
<城ラマ展 籠城戦を戦い抜いた城>

城郭復元マイスター二宮博志氏が地形や縄張りにこだわり制作している「城ラマ」シリーズ。この中から、かつて籠城戦が行われた城7点を二宮氏自身による解説パネルと共に展示している。城郭ジオラマの世界に大きなインパクトを与えた「城ラマ」の過去最大の展示となっている。神奈川県内の城からは「小机城」が展示されていた。
会場では二宮博志氏によるギャラリートークも行われており、大盛況であった。

小机城は鶴見川を天然の堀とした標高42m(比高22m)の台地の上に、西郭、つなぎの郭、東が配置され、その周りを横堀によって囲んだ構造になっている。
長尾景春の乱の折、小机城は景春方の城となったため、扇谷上杉氏の太田道灌によって攻められた。太田道灌は鶴見川の対岸にあるの甲山に布陣。2か月の包囲戦の後、小机城を落城させた。その後一時廃城になったと伝わるが、小田原北条氏二代の氏綱の頃に武蔵進出の拠点として再整備され、以降、早雲四男である幻庵(宗哲)の系統の北条一門が主に城主を務めた。

この城は北に流れる鶴見川と南を通る街道によって、神奈川湊からの交通・物流を抑えることができ、また、早雲、氏綱、氏康3代に使えた宿老で、小机城代を務めた笠原信為を筆頭に北条軍団の一翼を担う小机衆が組織されるなど、小机城は小田原北条氏の経済、軍事両面で重要な拠点であった。天正18(1590)年の小田原合戦においては、城主氏光は兵を率いて足柄城、次いで小田原城へ籠城したため、小机城は自落したとも伝わる。
<休憩処 / 弁当軽食販売処>

ノース隣のパシフィコ横浜アネックスホール2階には「休憩処」「弁当 / 軽食販売処」が用意されていた。昼食時の休憩処では多くの入城者で賑わっていた。
「弁当 / 軽食販売処」では、お城EXPO限定メニューとして「お城EXPO2024特製炒飯弁当(崎陽軒)」や「特製中華まん(江戸清)」「チョコ兜ケーキ(ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル)」「上海五目もち米焼売(馬さんの店龍仙)」「特製お城ケーキ(ドトールコーヒー)」「マカデミアナッツチョコレート(ザ・カハラホテル&リゾート横浜)」などが販売されていた。

今回も神奈川県内の城情報に焦点を当ててダイジェストで紹介したが、お城EXPOの見所は、全国から集まった城関連のブースやプログラムであり、十分まる一日楽しめる内容である。また、全国の城情報に触れることで、まるで日本全国を旅をした気分も味わえ、また各地の「歴史を生かしたまちづくり」の取組みを知ることもできる貴重なイベントであるといえる。今後もこのイベントが横浜で開催されることを願う。
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