[レポート]神奈川台場跡発掘調査現地説明会【THE HERITAGE TIMES YOKOHAMA KANAGAWA】
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- 5月12日
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令和8(2026)年5月10日、区画整理事業に伴い発掘調査が進められている「神奈川台場跡」について、現地説明会が行われたので、「THE HERITAGE TIMES YOKOHAMA KANAGAWA」もこれに参加した。
現地では、パネル展示の前では概要説明、調査地北側から石垣を中心とした説明、調査地西側から石垣全面の水防関連遺構の説明があった。
説明の内容を現地で配布された「神奈川台場発掘調査現地説明会資料((公財)横浜市ふるさと歴史財団埋蔵文化財センター・東高島駅北地区土地区画整理組合)令和8年5月10日)」にそって紹介する。
発掘調査の概要
所在地:横浜市神奈川区神奈川一丁目17番2 神奈川台場跡(横浜市神奈川区 No.75遺跡)
調査主体:(公財)横浜市ふるさと歴史財団埋蔵文化財センター
発注者:東高島駅北地区土地区画整理組合
調査目的:東高島駅北地区土地区画整理事業に伴う発掘調査
調査面積:約3,800平方メートル
調査期間:令和7(2025)年12月〜(調査継続中)
現地説明会:令和8(2026)年5月10日
神奈川台場跡は横浜開港の翌年に横浜の対岸にあたる海岸部に造られた台場(砲台)跡である。台場とは、主に幕末期に日本近海に現れた外国船を監視・迎撃する海岸砲台のことを指し、規模の大小はあるが、日本各地に約 1000か所造られたとも言われており、著名なものに観光地の「お台場」として広く周知されている品川台場がある。
神奈川台場は、万延元(1860)年に完成し、その一番の役割は横浜の防衛であったが、国防以外にも、外交的役割から、西洋諸国に倣い、祝砲や礼砲の発射が行われた。
神奈川台場の設計は勝海舟が行い、建設及び警備には松山藩があたった。慶応3(1867)年には古河藩が警備につきますが、翌慶応4(1868)年戊辰戦争が始まり、同年、新政府軍の佐賀藩に引き渡された。やがて陸軍省、大蔵省、鉄道省の管轄へと変わり、明治維新後の埋立によりその姿はほとんど埋没してしまったが、今回の発掘調査によって、石垣とともに、海に造られた砲台の水防関係の遺構がはじめて確認され、築造時やその後の様子が分かってきた。
当時の神奈川台場は陸地と2本の道によって結ばれ、本体部分は横246m、縦 95mと非常に大きく、面積は横浜スタジアムと同じぐらいの大きさで約26,000平方メートル。
この本体と陸を結ぶ道の1つである東取渡り道との接道部分の石垣が今回の発掘調査によって検出された。調査範囲では、絵図などから、2段構造の石垣があると予想されたが、上段石垣にあたる本体の石垣は今調査では検出されていない。
神奈川台場は土丹岩と砂で構築されている。この土丹岩や砂層との間に、間知石の端材や砂利を敷き詰めたような層が一面に広がる様子も今回の調査で確認できている。
海に突き出た台場の基礎は、土丹岩のような固くて崩れにくい素材と水を流しやすい砂層や端材・砂利層などを互層にし、水による崩れを防ぐ仕組みが各所に施されていたと考えられる。
また今回もっとも注目すべきは蛇籠の検出である。各地に残る台場の中でも、蛇籠の検出は初めてであり、台場の築造を考える上で、非常に重要な遺構と言える。
石垣関連遺構

石垣
今回の調査では下段石垣のみが検出されている。また、下段石垣は土丹壁で頑丈に覆われ、その上には丁寧な斜め方向の埋土が観察された。
下段石垣は8段ないしは9段の石積みで、この石垣は調査区外の東西方向に続いているとみられる。石垣の傾斜は74度、石の積み方は横方向に目地が通る「布積み」である。石は安山岩を使用し、築石はすべて切り出した切り石であった。ほぼ全てが四角錘状の間知石であり、大きさは正面の小面が25〜55cm四方と大小あり、奥行にあたる控え長は約50cmと、短いものが多くみる。
石垣の背面構造は、栗石や砂利層からなる裏込めと、その背後につき固めた盛土層がある。今回検出の裏込めは間知石の後ろ60〜70cmと、それほど多量にはみとめらない。しかし、裏込めのすぐ後ろを覆う土丹層によって、石垣を補強している。
石垣の下には根石や胴木等は現状では確認されず、基盤の岩盤の上に据え付けている可能性がある。
間知石端材・砂利層
石垣の背後には間知石の端材や砂利などを敷き詰めた層が見られる。
端材層は石垣方向に向い、勾配5度前後で傾斜している。これは神奈川台場の基礎土台部分が土丹と砂で構成されており、土丹岩が水を通しにくい性質があるため、間知石端材層は、土丹層からなる不透水層の上に造られた透水層の役割を果たしていた可能性がある。
土丹とは、主に第三紀〜洪積世のシルト岩や泥岩が固結上と岩の中間的な性質を持つ堆積岩の俗称で土木用語です。青灰色(乾燥すると黄白色化します)で非常に硬く、基礎地盤としてすぐれているため、水中での捨て石にも多用されている。
石垣前面の水防関連遺構

杭木・捨て石・土留め板
2列に並んだ杭木とその間に捨て石として土丹岩を多量に充填した層がみられる。沖積層の基盤層が検出されているが、その上の自然砂層に杭が打ち込まれ、間に捨て石が多量に投下されている。抗が基盤層にささらずとも、こうした土丹岩で間を埋めることにより、水防施設として機能していた。また、石垣側の杭の前には土留め板とみられる板材がささっており、砂層の流出を防止していたとみられる。
蛇籠・土俵
蛇籠が3基みつかっている。蛇籠とは石や砕石を円筒形や箱形に組んだ籠に詰めた土木資材・工法で、古くは古代からみられる。現在でも用いる素材は変化しているが、河川の護岸工事や法面保護に用いられている。近世においては相当普及しており、土木用語の解説では「竹を以って亀甲目の円筒形に編み、内部に玉石あるいは割石を充填するもの」とされている。今回見つかったものは亀甲目ではなく、縦材と横材が一直線に交差する平織であった。これまで各地に残る台場でも検出例はなく、本事例が初めてとなる。
また土俵とみられるものが1基みつかっている。
これらは捨て石層の上からみつかっており、蛇籠は海に小口面を向けた小口積みにしている。周辺からは縄や竹が出土しているが、杭などに止めたり複数の蛇籠や土を縫ったりして繋いだ状態では検出されていない。
出土遺物
会場では調査で見つかった遺物も展示されていた。江戸時代の陶器、明治以降の陶器(一部に輸入品)、ガラスの薬瓶、通貨のほか木製の下駄や櫛、荷札、提灯など多様な遺物が並んでおり、どののような経緯でここに運ばれて来たのか想像するだけで楽しい。
見学を終えて
海際を描いた絵図には波除杭のみが描かれることが多いが、実際は海中には蛇籠や捨て石などの設備もあり、今回それらが発掘調査によって見つかったことにより、波除以外の様々な構造が一連の水防施設として機能し、海岸や海に近接する施設を守っていたことが分かった。
また石垣より内側の砲台土台部分をどのようにして海の中に築造したのかについて、土丹岩や砂、間知石の端材や砂利などの検出により、その堆積の様子から初めて築造の詳細な状況を確認できた。
さらに、本事業に伴う発掘調査によって初めて海水面の下を調査したことにより、下段石垣の形に沿うようにして沖積層の基盤層(岩盤)が見つかった。
まさしく、神奈川台場が造られた場所には比較的浅いところに島状になった岩盤があり、その岩盤があったからこそ、この場所に砲台を築造したとの地形的理由の一つが解明された。
神奈川台場の遺構は発掘調査現場周辺にも石垣が露出している箇所も数箇所あり、それを回ってみるのも良いだろう。
また、神奈川台場地域のまちづくり推進を目的として活動する公益社団法人神奈川台場地域活性化推進協会と横浜市は「神奈川台場」の魅力や歴史的価値を身近に感じられるデジタルコンテンツを制作したと発表した。
今後も、神奈川台場を主役とした「歴史を生かしたまちづくり」から目が離せない。
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