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heritagetimes

[歴飯_92]CAFÉ&RESTURANTS 里武士 馬車道



馬車道 横浜市庁舎の向い、北仲ブリック&ホワイト一帯は、かつて横浜港から世界に輸出された生糸の品質管理のための施設「生糸検査所」の跡地である。養蚕業が盛んであった長野県や群馬県をはじめ、各地で生産された生糸は生糸検査所に集められ、輸出前の検査が行われていた。現在の横浜第2合同庁舎(復元・横浜市認定歴史的建造物)の建物は生糸検査所本館であり、「KITANAKA BRICK NORTH」は、生糸を保管した付属倉庫棟(復元・横浜市認定歴史的建造物)、「KITANAKA BRICK SOUTH」は、付属倉庫事務所棟(旧帝蚕倉庫事務所・横浜市指定有形文化財)である。これら一連の設計は、国内の鉄筋コンクリート建築の先駆者であった遠藤於菟(えんどう おと)による。鉄筋コンクリートで造った躯体の外側に仕上げとして煉瓦の飾り柱を用いることで、一見煉瓦造を思わせる外観となっている。なかでも、「KITANAKA BRIC SOUTH」は建設当初の面影をよく留めており、横浜の生糸貿易の歴史を紡ぐ建物となっている。 今回の歴飯は、そんな歴史ある建物の1階にオープンした「CAFÉ&RESTURANTS 里武士 馬車道」を訪ねた。



「里武士」は、長野県野沢温泉村が創業地であり、馬車道店が2号店となる。良質な湧き水や自然素材の原料を、オーク樽やフーダーで発酵させたサワービール等が有名だそうだ。 店内に入ると、大きな一枚板のカウンターが窓辺と店側に広がり、タイル張りの壁にはタップが設けられている。奥には、やはり一枚板を並べたテーブル席が広がっており、シンプルだが、洗練された空間である。1杯目、ゲストタップとして入っていた爽やかなサワー系ビールと自家製鴨の生ハムを注文した。タップから注がれたビールを片手に、奥のテーブル席に座る。柑橘系を思わせる香りと鴨の生ハムとの相性は抜群で、生ハムにかかっているピンクペッパーが良いアクセントとなっている。



2杯目は、「里武士」オリジナル、ベルギーアウトベールセルとのコラボビール「一望千里」と自家製ポテトチップスを注文した。口いっぱいに芳醇な香りが広がったかと思うと、爽やかな酸味が続き、ついつい飲み進めてしまう。サワー系のクラフトビールが好きな方には是非試していただきたい1杯である。堅あげのポテトチップスはカレー風味で、さっぱりとしたサワー系ビールとの相性が良い。



なお、ポテトチップスのフレーバーは日替わりとのことなので、次回の来店時にも注文してみたい逸品である。ビールばかりに夢中になっていたが、ふと顔を上げると窓越しに、ヨコハマ創造都市センター(旧横浜銀行本店別館・横浜市認定歴史的建造物)が見えることに気が付いた。横浜銀行も系譜を辿れば生糸貿易と深い関係があるようだ。偶然ではあろうが、養蚕業が盛んであった長野から発祥したビールを、同県からも生糸が運ばれてきたであろう旧生糸検査所のあった地にて、同県出身の遠藤於菟が設計した歴史的建造物で味わうことができるのも「CAFÉ&RESTURANTS 里武士 馬車道」の魅力だと思う。






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