JR鎌倉駅から長谷方面に向かう由比ガ浜通りは、酒屋や米屋、花屋、乾物商等かつては多くの商店や問屋が軒を連ねていた。神奈川県道32号線と由比ガ浜通りの交差点付近に旧問屋の名残を留める一画がある。旧農水産加工物問屋卸売商店(乾物商)「のり真安斎商店」は、大正2(1913)年に同地にて創業し、現在の建物は関東大震災直後の大正13(1924)年に建てられたものである。石段や土間、上下に開放する揚戸と呼ばれる建具等、大正期の建物にも関わらず、江戸から明治期にかけて建てられた近世商家の特徴が見られる。「のり真安斎商店」の建屋は、長谷付近の商業の歴史を残す貴重な建物として、鎌倉市景観重要建築物等にも指定されている。
今回紹介するカフェとくらしの道具店「vuori」は、そんな歴史を持つ、安斎商店の倉庫として昭和45(1960)年に建てられた鉄骨造2階建ての建屋をリノベーションした店舗である。店名の「vuori」とは、「山」を意味しており、山で過ごすひと時のような時間を過ごしてもらいたいとの想いが込められているそうだ。
店内に入ると、1階のカフェは、コンクリートの土間に木製の柱や梁、建具、什器が温かみを感じる空間をつくっている。入口近くの席に着き、キャロットケーキとチャイを注文した。クルミがぎっしり入ったキャロットケーキはクルミの香ばしさとシナモンの香りに食欲がそそられる。酸味の効いたチーズクリームが味を引き立てている。スパイスの効いたチャイとのマリアージュも楽しめる。
涼しくなってくる秋口や初冬の鎌倉散策でぜひ味わっていただきたい一品である。夏限定のかき氷や白いんげんを使った白いお汁粉等のメニューも人気があるそうなので、次回の来訪時には注文してみたい。
飲食後、くらしの道具の店となっている2階に上がる。ここでは、作家による陶器の器やガラスの灯具等日常生活に彩を添えるような素敵な小物、レターセットや古書等も販売されており、ついつい目が奪われてしまう。
カフェとくらしの道具店「vuori」、山に分け入るような感覚で、思い思いの過ごし方を見つけてゆったり愉しんでみてはいかがだろうか。
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