[歴飯_109]石窯ガーデンテラス
- heritagetimes

- 2022年10月5日
- 読了時間: 3分

JR鎌倉駅から逗子ハイランド方面に向かうバスに乗り、浄明寺バス停で降りる。源頼朝の重臣であった足利義兼により建立された「浄妙寺」は、鎌倉五山第五位の寺格を持つ古刹である。山門をくぐり、本堂に参拝後、境内を眺めていると木立の間に佇む大屋根の洋館に気が付いた。
明治政府が発布した神仏分離令により、各地で廃寺が相次ぐ中、東京から程近い鎌倉では、廃寺となった寺院の跡地に邸宅が建つようになる。今回紹介する「石窯ガーデンテラス」として活用されている瀟洒な洋館も、かつて浄妙寺の隣にあった延福寺(足利家に所縁の寺院)の跡地に建っている。この洋館は、逓信省鉄道局長、貴族院議員等を歴任した犬塚勝太郎が大正11(1922)年に自宅として建てたものである。犬塚は欧米の鉄道視察等で欧州に滞在しており、この時の縁からドイツ人建築家が設計したという。浄妙寺の所有となり、長く活用されていなかったが、貴重な鎌倉の洋館を後世に伝えていくために、平成12(2000)年に「石窯ガーデンテラス」がオープンし、現在に至っている。

浄妙寺の本堂脇から苔むした小道を上がっていくと、左手に「石窯ガーデンテラス」が見えてくる。エントランスに向かって進むと洋館の窓に設けられたステンドグラスが目を惹く。ドイツ壁(モルタルを壁に掃き付ける仕上げ)による左官仕上げの外壁と赤い瓦屋根、中央の煙突に付けられた避雷針が特徴的な外観となっている。1階は奥に石窯のある厨房、厨房に向かって左手にテラス席、右手に暖炉のある客席が続く。1階はレストランとする際に大規模に改修したそうだが、2階は洋館の風情を活かした客席としている。ステンドクラスや調度品の一部は建設当時のものが使用されているそうだ。

テラス席は本格的なイングリッシュガーデンに面して設けられており、遠景に鎌倉の山並みも楽しめる座席となっている。洋館の風情をより近くで感じられる室内の席に着き、「国産豚ロースのロースト シャスールソース(漁師風のソース)」のランチセットを注文した。メニューは他にも、イングリッシュガーデンにちなんだ、ガーデンプレートやアフタヌーンティー等もある。毎朝石窯で焼き上げたパンは、ふっくらとした食感の中にしっかりと小麦の風味が感じられ、スープやローストされた豚肉、トマトベースのソースと良く合う。脇に添えられたマッシュポテトにソースを絡めて食べるのも美味しい。

紅葉の深まる秋には、鎌倉の山々を眺めながらのティータイムを、薔薇の咲き誇る季節には、洋館と薔薇のつくる異国情緒溢れる景色を楽しみながらのランチも素敵だと思う。古刹と洋館がつくる鎌倉の風情を感じに出かけてみてはいかがだろうか。
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