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[歴飯_148]小梅堂



JR湯河原駅からバスに乗り湯河原温泉を目指す。湯河原温泉には「源泉 上野屋(国登録文化財)」や「富士屋旅館(国登録文化財)」、「ゆ宿 藤田屋(国登録文化財)」、「伊藤屋(国登録文化財)」など実際に宿泊が可能な歴史的建造物の温泉宿が並んでいるが、その並びのほぼ中央にある「伊藤屋」の隣に一見して歴史的建造物とわかる存在感のある建物がある。ひっきりになしに観光客が入っていくその店舗こそ今回の歴飯で紹介する菓子店「小梅堂」である。



外観から見てみると、木造総二階建、側面に千鳥破風をもつ入母屋瓦葺き屋根で、往時の趣を残している。一階の庇の軒飾り置かれた鳩瓦がアクセントになっている。向かって左がガレージ、右側が店舗となっており「小梅堂本店」の看板がかかっている。

店に入るとすぐに網代天井が目に飛び込む。一見して茶室のような落ち着いた風合いのコンパクトな店内には商品ケースが左手から奥に並び、奥の商品ケースの上には「神奈川県指定銘菓 きび餅」の表示が置かれ、左手は清算カウンターとなっており若旦那がにこやかに接客していた。



一通り店内を見た後、カウンターで名物のきび餅(個包装十個入り)を買う。カウンターの手前には昔の写真などが飾られており、「そちらもぜひ見てくださいね」と案内された。

小梅堂は明治43(1910)年創業。今や湯河原土産の定番となっているきび餅は初代小松清之助が何か名物をと創製したのが始まり。当初は相州産のきびもろこしと白玉を混ぜ、ふかしてお餅とし、きな粉をまぶした素朴な製法なものであった。現在でもその素朴な味を引き継いでいる。




湯河原温泉は古来から万葉集で詠われ、中世には武士や村人が湯治場として利用、江戸時代には数軒の半農自炊の湯屋もでき、江戸時代後期の全国の温泉効能番付では東の小結に位置づけられるほどの名湯。昔から外傷や火傷に良く効くので「傷の湯」と呼ばれ、明治時代の日清・日露戦争の傷病兵の療養所にも指定されたことで、その名が全国的に広まった。さらに明治29年(1896年)に小田原・熱海間に「豆相人車鉄道」が敷かれ利便性が向上すると伊藤博文等の政治家、東郷平八郎元帥などの将軍、国木田独歩、夏目漱石、竹内栖鳳等、文人墨客が多数訪れ、多くの文学作品にも湯河原温泉が取上げられた。 島崎藤村もその1人で、長い歳月をかけ完成に至った「夜明け前」の執筆の合間、「伊藤屋」に逗留していた島崎藤村のおやつは、小梅堂のきび餅であったという。

帰宅後、土産にしたきび餅を食べた。ぷるんと柔らかい食感で、きな粉のほのかな甘味ときび餅の味が相まって美味である。是非、湯河原温泉に訪れた際には、立ち寄って、お茶と共にいただきながら湯河原温泉の歴史物語に想いを馳せてほしい。



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