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[書籍紹介]「シモン・ド・ベリシェはかく語りき」【講談社】



講談社X文庫のサブレーベルで少女小説などをラインナップしている「ホワイトハートシリーズ」から令和5(2023)年7月3日、「シモン・ド・ベリシェはかく語りき」が刊行された。

作者の篠原美季氏は横浜市在住。「英国妖異譚」で「ホワイトハート大賞優秀賞」を受賞しデビュー。「英国妖異譚」はシリーズ化され、主人公たちの成長に伴い、パブリックスクールを卒業した後は「欧州妖異譚」シリーズとして書き続けられている。

本巻もそのシリーズの一つで、過去に文庫特典やホームページ上で無料公開した作品に加筆修正したものと中編の書き下ろし「黄色い館の住人」で構成されている。


 

<あらすじ> シリーズHPより


貴公子シモン・ド・ベルシェが不思議な縁で借りることになった日本の賃貸物件は、港町横浜にある、いわくつきの古い洋館。そこにはどうやら幽霊が出るらしく—


「黄色い館の住人」

貴公子シモンが不思議な縁で借りることになったのは、港町横浜にある、いわくつきの古い洋館。だが、実際に住み始めた洋館には、なぜか季節外れのクリスマスカードが飾られ、さらに見えない先住者が夜ごとシモンを悩ませた。時を同じくして、近所では幽霊騒動が勃発し、イギリスのパブリックスクールから帰省中の桃里理生がその対応に当たるも、前途多難だった。そんな中、京都に出向いていたユウリが戻ってくるが、なぜかシモンがつれなく、淋しい思いをしてしまう。他者を慕う気持ちと、他者から離れたくなる心――。それらの思いが時を超えて交錯し、港町横浜に眠っていた記憶が、今、動き出す。


 


このタイトルにある「黄色い館」のモデルとなっているのが横浜市認定歴史的建造物「山手133番館」であり、この物語はそのオーナーである三陽物産・山本博士氏が山手133番館を取得し、創建当時の姿に復元する経緯に作者がインスパイアされて生まれた作品である。

作中には、山手133番館がモデルとなっている洋館以外にも、山本氏がモデルとなっている「無邪気な」人物、ホテルニューグランドを思わせる描写、真葛焼などのキーワードも散りばめられており、初めてこのシリーズを読む人でも十分に楽しめる内容となっている。

経緯については巻末の「あとがき」に詳細が書かれているので、ぜひそちらもお読みいただきたい。

これまでも横浜は小説だけでなく、様々な音楽、演劇、映像作品、漫画などの舞台となってきたが、これほどまでに歴史的建造物の保全活用や「歴史を生かしたまちづくり」に寄り添ったストーリーとなっているものはそう多くないだろう。

ぜひ、一度、お手に取って読んでいただきなりたい。


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