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[レポート]重要文化財「旧東慶寺仏殿」「月華殿」内部特別公開【三溪園】

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三溪園(横浜市中区)で、重要文化財「旧東慶寺仏殿」および「月華殿」の保存修理事業の完了を記念し、令和6(2024)年4月27日(土)から5月6日(月・祝)まで行われた、建物内部の特別公開に参加した。



まず、三溪園内苑の奥にある月華殿を見学した。

月華殿は、慶長8(1603)年に徳川家康が京都伏見城内に建てた諸大名の控えの間であった、と伝えられている。

大正7 (1918)年に京都・宇治の三室戸寺金蔵院から付属していた茶室(現在の春草廬)とともに三溪園へ移築された。移築に際しては、運搬のために解体した部材を一本ずつ丁寧に新しい晒し布で巻いて運んだといわれている。

平面は「竹の間」、「檜扇の間」及び三面の縁で構成され、屋根は一重、入母屋造、檜皮葺、庇柿葺であり、昭和6(1931)年に国重要文化財に指定された。

今回の修理工事では、屋根の葺き替え(檜皮葺・柿葺屋根ほか)と耐震補強工事が行われた。



見学の入口付近には、「月華殿」と書かれた扁額が掲げられている。今回修理工事に伴い取外したところ、裏面に「大正八年七月 原三溪」と刻まれていることが確認されたという。

また、ここでは、美しく重ねられた庇の柿葺の断面も確認できる。

現場で配布された資料によると、月華殿の屋根は、昭和63(1988)年以来、大規模な葺き替えが行われておらず、劣化は深刻な状況であった。



屋根の葺き替えにあたって行われた解体作業中の調査では、柿葺屋根には大正時代(移築当初)に葺かれた屋根の端材が残されており、昭和戦後復旧・平成の葺き替えの際の板とは材種が異なり、厚くて短かったことが判明、今回の修理では大正時代の仕様で葺き替えたとのことであった。

「荷物を身体の前に」「内部は撮影禁止」など、文化財を傷付けないための見学の注意事項を聞き、内部を見学する。



今回の改修では、耐震補強もなされているのだが、構造合板を壁の中に、鉄筋コンクリートの重石を床下に置くものであり、見た目上はその変化を感じさせないものとなっていた。

廊下を抜けて縁側に出ると「檜扇の間」と「竹の間」が見える。

それぞれ安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した絵師、海北友松(1533 - 1615)の作と伝えられる障壁画「檜扇図」、「竹図」が、その間には下絵が狩野永徳(1543 - 1590)によるものと伝えられる「菊花葉の透し彫り爛漫」も確認できた。

畳も張り替えられ、これから茶会などで活用されるのが楽しみである。



今度は外苑に戻り旧矢箆原家住宅の手前にある「旧東慶寺仏殿」に向かう。

「旧東慶寺仏殿」は縁切寺・駆け込み寺の名で知られる鎌倉・東慶寺にあった禅宗様の建物で、江戸時代の初めごろに造られたものと考えられている。

東慶寺は明治時代以降衰退し、建物の維持が困難になっており、これを憂えた原三溪が明治40(1907)年に三溪園に移築した。この時、三溪によって建物内に納められた棟札には、禅師説法の道場にするため、そして三溪園の鎮護とするために移築したことが書かれていたいう。



桁行三間、梁間三間で、屋根は一重もこし付、寄棟造、茅葺、もこし柿葺となっており、月華殿と同じく、昭和6(1931)年に国の重要文化財に指定された。

今回の修理工事では、屋根から解体をはじめて建物の骨組みを途中まで解体する半解体修理を実施し、茅葺・柿葺屋根の葺替えのほか葺き替えと耐震補強工事が行われた。

内部に入る前に正面から見上げると葺き替えられた屋根と、その下に「矧木」や「埋木」により材として健全な箇所を極力残して部分的に補修した垂木が見える。



現場で配布された資料によると、これまで「寛永11年に鎌倉で新築され明治40年に三溪園に移築」とされてきたが、今回の修理にあわせて行なった「釘跡調査」や「放射性炭素年代調査」により、「徳川忠長御殿の材料を使って、新材を補って寛永11年に鎌倉で新築され明治40年に三溪園に移築」であることがわかったとのことであった。



早速、「月華殿」と同様の注意事項を聞き、内部を見学する。

内部に入ると高い天井のややがらんとした空間が広がり、正面には須弥壇が見える。天井の格天井は漆と金箔押しが復元され当初の輝きを取り戻したようだ。

一通り内部の見学を終えたあと、入口で案内をしていたスタッフに「松風閣から葺き替えられた屋根の全貌が確認できるので、体力に余裕があれば是非ご覧ください。」と勧められたので、アドバイスに従って、急な階段を登り松風閣から屋根を見た。新緑の木立に囲まれた茅葺き屋根が輝いて見えた。



今回の特別公開は、通常非公開の文化財内部の見学を通じて、文化財を後世に受け継ぐためにふるわれた職人技術を見ることができる貴重な機会となった。



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