[レポート]コンサート in ヘリテイジ ピアノが案内する横浜の歴史とまち Vol.10 【公益社団法人横浜歴史資産調査会】
- heritagetimes

- 2月2日
- 読了時間: 7分
更新日:2月3日

<コンサート in ヘリテイジ ピアノが案内する横浜の歴史とまち Vol.10>
令和7(2025)年2月1日、「コンサート in ヘリテイジ ピアノが案内する横浜の歴史とまち Vol.10 」が横浜市山手町・元町公園内の西洋館ベーリック・ホール(横浜市認定歴史的建造物)のホールで開催され約60人が参加し、歴史的建造物での音楽を楽しんだ。
「コンサート in ヘリテイジ ピアノが案内する横浜の歴史とまち 」は横浜の歴史的建造物やまちの魅力をピアノの音色で伝えるコンサート。平成24(2012)年から後藤泉氏のピアノ演奏、長谷川正英氏の解説のコンビで続いており、今回で10回目。主催は公益社団法人横浜歴史資産調査会。後援はベーリック・ホールなどの山手西洋館の指定管理者である公益財団法人横浜市緑の協会。横浜歴史資産調査会の行政側のカウンターパートナーである横浜市都市整備局都市デザイン室が協力しているほか、「お菓子を通じて横浜の歴史・文化を継承する」を企業理念とする株式会社三陽物産が協賛し、参加者に横浜三塔をモチーフとしたお菓子「横浜三塔物語スティックケーキ」が配られた。
司会の米山氏、演奏の後藤氏、ベーリック・ホール館長の降旗美樹氏の挨拶のあと、いよいよ演奏と解説が始まる。



この日、演奏された曲目と解説は下記の通り。
J.S.バッハ(1685 - 1750) - グノー(1818 - 1893):アヴェ・マリア
ドイツの大作曲家J .S .バッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻第1曲のプレリュードにフランスの作曲家グノーがメロディを乗せた名曲。
この曲は第1回大倉山記念館で開催された「ピアノが案内する横浜の歴史とまち」でも演奏した曲。10回目を記念して選曲した。
グノーが器楽版として発表した1853年から「アヴェ・マリア」の歌詞が載せられた1859年は横浜ではペリーが来航し、開港となる時期にあたる。
ショパン(1810-1848):ワルツ Op.64-1「子犬」、Op.64-2
子犬のワルツの愛称で知られる可愛らしいワルツと、続き番号で出版されたメランコリックなワルツ。
ショパンが生きているうちに発表された最後の曲。ワルツはドイツで発祥し、ウィーンで大流行した。聴くだけではなく踊るための楽曲。
ブラームス(1838 - 1897):16のワルツより Op.39-1,2,3,15
ピアノ連弾のために書かれた16曲をブラームス自身がピアノソロに編曲した。
ピアノソロに編曲されたが、演奏するのが難しいという評判がたったためさらに簡易に演奏できるようブラームス自身が再編集した。
サティ(1866 - 1925):最後から2番目の思想
3曲からなる組曲で、それぞれが作曲家に捧げられている。第1曲牧歌(ドビュッシーに)、第2曲朝の歌(デュカスに)、第3曲瞑想(ルーセルに)。
サティをこのコンサートで取り上げるのは初めて。サティの音楽は革命的で、それまで人を集めて聞かせる音楽を「家具のような音楽」として、現在のBGMに繋がるような発想を持ち、音楽そのもののあり方を変えた。
サティは「白いものしか食べない。」と言い、鶏肉やホワイトアスパラなどを食べていたという。
「最後から2番目の思想」が作曲された1915年。横浜では「二代目横浜駅(横浜市認定歴史的建造物)」が竣工。
サティ:ジムノペディ第1番
没後100年を迎えたサティはフランスの作曲家で、伝統を脱ぎ捨てた数々の革命的な手法での作品を発表した。ジムノペディは彼の初期の作品で、ゆるやかな3拍子の名曲。
「ジムノペディ」が作曲された1888年の翌年、横浜市政がスタートする。

ショパン:英雄ポロネーズ Op.53
ポーランドの作曲家ショパンは、愛国心溢れる青年であった。祖国を離れたあとも、その思いますます強く、ポーランドの民族的な踊りのリズムに基づく曲がたくさん作曲されている。英雄ポロネーズもその一つで、ポロネーズのリズムに乗って、誇り高い精神が描き出されている。
ある意味ショパンらしくない、守る人を意識した力強い楽曲。パリで作曲された。
ショパンは繊細、ブラームスは堅実、サティはユニーク。横浜の代表的な歴史的建造物に当てはめると、ショパンは装飾が美しいジャック(横浜市開港記念会館)。ブラームスはどっしりとした威厳のあるキング(神奈川県庁本庁舎)、サティがイスラム調でユニークな存在のクイーン(横浜税関)のようなイメージ。そうしてイメージを重ねるのも楽しい。
「英雄ポロネーズ」が作曲された1842年。日本では江戸幕府が異国船打払令を廃止、薪水給与令復活した。
休憩
J.シュトラウス2世(1825 - 1899):春の声 Op.410
ヨハン・シュトラウス2世はウィーン生まれの作曲家、指揮者で今年生誕200年を迎えた。
19世紀のウィーンにおいて舞踏会用のワルツが大流行した。シュトラウス2世はワルツ王と呼ばれ、ヴァイオリンを奏でながら自らの楽団を率いて舞踏会で演奏をし、たくさんの魅力的なワルツを生み出した。「春の声」の原曲はソプラノ独唱付の演奏会用ワルツである。
シュトラウス2世の楽曲は、横浜に駐留していたイギリスやフランスの軍楽隊も度々演奏しており、ヨーロッパでの初演からあまり間を置かず演奏されている。
「春の声」は1882年の楽曲。横浜では横浜商業高校(Y校)の前身、横浜商法学校が開校した。
J.シュトラウス2世:南国のばら Op.388
「南国のばら」はイタリア国王に献呈されている。
2027年に横浜で横浜国際博覧会が開催されることにちなんで選曲。
元々は自作のオペレッタ「女王のレースのハンカチーフ」の楽曲。イタリア国王がこのオペレッタを気に入ったとの話を聞いたシュトラウス2世は、即座にこのオペレッタに登場するモチーフを編曲し、これをイタリア国王に献呈した。
J.シュトラウス2世:トリッチトラッチポルカ
おしゃべりという意味の軽快な踊り(ポルカ)。
J.シュトラウス2世は鉄道会社などの依頼で行った先で様々なアレンジをして喜ばせていた。
J.シュトラウス2世:美しく青きドナウ Op.314 Op.2
オーストリアの第2の国歌とも言われる曲。ウィーンではカウントダウンとともに新年が明けると国営放送でこの曲が流れる。
今でもウィーンでは新年にこの曲が流れると、みんなが曲に合わせて踊り出すほど「踊る曲」として定着している。
「美しく青きドナウ」が作曲された1867年。日本では大政奉還の年。この後戊辰戦争を経て近代化に向かう節目の年である。
アンコールでは、司会の米山氏が旧国鉄の制帽を被って登場。「横浜は鉄道の街。それにちなんで選曲をした。では、出発進行!」と笛の合図で演奏がスタートした。

アンコール1:ポルカ「観光列車」
オーストリアの首都ウィーンと南部の港湾都市トリステを結び観光列車を走らせていたオーストリア南部鉄道の開通式に着想を受けた作品。1864年に開催された「産業協会舞踏会」のために作曲された。
アンコール2:J.シュトラウス1世「ラデツキー行進曲」

最後の楽曲はウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によるニューイヤーコンサートの締めくくりの曲として知られる「ラデツキー行進曲」。会場全体の手拍子で大いに盛り上がり、大団円の中でコンサートが終了した。

今回、10回目を迎えた「コンサート in ヘリテイジ ピアノが案内する横浜の歴史とまち」。歴史的建造物の中で美しいピアノの調べと横浜のまちの歴史を聴くこのコンサートが今後も続いていくことを期待している。
後藤泉氏プロフィール
桐朋女子高等学校音楽科を経て桐朋学園大学ピアノ科卒業。同大学アンサンブル・ディプロマコース修了。田沢恵巳子、ゴールドベルク山根美代子、三浦みどり、P. ポンティエの各氏に師事。これまでにウィーン・フィル首席奏者を始め、海外のトップ奏者と数多く共演するほか、ソリストとして、小林研一郎指揮日本フィル、井上道義指揮新日本フィル、ローマン・コフマン指揮ベートーヴェンオーケストラ・ボン、キーウ室内管弦楽団などと協演。ベートーヴェンをライフワークとするほか、飛鳥II船上でのコンサート、他分野とのコラボレーション、各地での様々な形でのコンサートも好評を博している。
<コンサート in ヘリテイジ ピアノが案内する横浜の歴史とまち Vol.10>
日 時:令和7(2025)年2月1日(木)午後2時 - 4時30分
会 場:ベーリック・ホール(横浜市中区山手町)
出 演:【ピアノ演奏】後藤泉氏【解説】長谷川正英氏(横浜市)【司会】米山淳一(公益社団法人横浜歴史資産調査会 常務理事)
主 催:公益社団法人横浜歴史資産調査会
後 援:公益財団法人横浜市緑の協会
協 力:横浜市都市整備局都市デザイン室
協 賛:株式会社三陽物産
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