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[歴飯_192]CRAFT. Table

更新日:10月11日

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みなとみらい線馬車道駅直上の交差点に向けてトスカナ式オーダーの列柱が特徴的なバルコニーを持つ白亜の近代建築「旧第一銀行横浜支店」がある。今回「歴飯」で訪れたのは、その一階にオープンした「CRAFT.」の飲食部門「CRAFT. Table」である。

旧第一銀行横浜支店は、その前身第一国立銀行横浜支店が明治6(1873)年に開設されて以来の歴史がある。ここでは店内の紹介に入る前に少しその歴史について触れておこう。

第一国立銀行横浜支店の初代の店舗は明治7(1874)年に建てられた。明治22(1889)年には二代目、明治44(1911)年には三代目へと煉瓦造で建て替えられた。一方、明治29(1896)年9月には営業満期に達し普通銀行へと転換して第一銀行横浜支店となった。


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三代目の建物が関東大震災により焼失した後、昭和4(1929)年に四代目の支店建築が、横浜ゆかりの建築家で銀行建築のスペシャリスト、西村好時の設計により建築された。第一銀行横浜支店は、その後、日本債券信用銀行横浜支店を経て横浜銀行本店別館となった。しかし、建物位置が都市計画道路・栄本町線と重なり、元の位置での保全活用は困難となったため、この建物の特徴である先端バルコニー部分を曳家し、他は忠実に復元することになった。平成7年(1995)2月には、旧敷地から現在の場所に曳家工事が行われた。平成12(2000)年3月に着手された第1工区・横浜アイランドタワーの建築工事により、高層棟と曳家部分をつなぐ形で旧建物の外観が復元され、平成15(2003)年2月に竣工、横浜市の歴史的建造物に認定された。


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平成 16(2004)年からは「都心部における歴史的建築物等の文化・芸術活用実験事業」の一環で、公募により選定されたグループ(のちのNPO法人BankART1929)がBankART1929 Yokohamaとして運営開始し、横浜ならではの資源をまちづくりに生かす実験事業の場となっていた。その後、平成 21(2009)年 には公益財団法人横浜市芸術文化振興財団がヨコハマ創造都市センターとして、平成 27(2015)年 からは公募により選定された NPO 法人 YCC が、「YCC ヨコハマ創造都市センター」として運営、さらに、令和2(2020)年 暫定1年の活用として、NPO 法人 BankART1929 が「ヨコハマ創造都市センターBankART Temporary」として運営していたが、令和3(2021)年 の天井脱落対策⼯事以降、休館となっていた。


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そこに株式会社竹中工務店、株式会社CRAFTING JAPAN、グッドルーム株式会社を構成事業者とする「BankPark YOKOHAMA(バンクパーク ヨコハマ)」が新たな運営事業者として公募により選定され、「様々な人・もの・文化が交差する明るい公園のような『出会い、学び、育つ』場所へ」をテーマに、工芸ギャラリーやクラフトカフェ、シェアオフィスなどの複合施設としてオープンした。


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いよいよ、正面の入口から入って、風除室、前室を抜けると、銀行建築の特徴でもある吹き抜けの大空間が現れる。正面に向かって左右に4ずつ列柱が並び、中央には長テーブルが置かれ、その上にはいつくかの工芸品やアート作品が飾られていた。さらに正面奥には、旧第一銀行横浜支店を中心としたキメコミ(木目込)アートが掲げられており、引き締まった印象の大空間に彩りを添えている。


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この1階の空間は株式会社CRAFTING JAPANが運営している発信拠点 「CRAFT.」となっていて、フローラルショップ&アトリエ「CRAFT. Flora – Ludique by Hanahiro」、工藝品や厳選食品を揃えている「CRAFT. Market」、そして飲食部門のダイニング「CRAFT. Table」で構成されている。


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飲食店としては従来型の店構えではなく、室内に備えられた各テーブルに座り、テーブル上の二次元バーコードから注文および会計できる方式となっている。今回は昼時の訪問だったので、メニューのなかから「横浜野菜のカレー」を注文した。注文の品が届くまで、もう少し当たりを見てみる。


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入口付近の「CRAFT. Flora – Ludique by Hanahiro」は彩豊かな植物が所狭しと並べられていて、見ているだけでも楽しい。自分で花を選んで簡単な花束にする「フルールコティディアン」というサービスも日常に花を取り入れたい、ちょっとした贈り物をしたいという方にピッタリ。「Ludique = 遊び心」という店名が良く馴染んでいる。


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「CRAFT. Table」に併設されたギャラリースペースでは、明治時代に初めて横浜港から日本の技と美を携えて海を渡り、欧米で人気を博したオールドノリタケの展示と販売が行われていた。聞くとオールドノリタケ研究家で日本を代表するコレクターである竹内友章氏のコレクションを中心とした展示とのこと。アールヌーボーやアールデコなどの西洋の最先端様式を取り入れ手作業で描かれた絵柄や金彩による装飾が美しく、時間を忘れてしまいそうである。この展示は常設ではない(令和7(2025)年10月19日まで)が、今後もこのような歴史とアートを肌で感じることのできる展示を期待してしまう。


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席に戻ると注文した「横浜野菜カレー」が届けられた。紅茶もセットで提供される。

スパイスの効いたルーに、素揚げにしたじゃがいも、かぼちゃ、ゴボウ、オクラなどの野菜が甘みを添える。カットされた豚肉は柔らかく、ほどよい重量感を持つ。午後の日差しが差し込むなか、一品ずつ丁寧に味わった。居心地もよく、食後の紅茶をゆったりと楽しみ、つい長居してしまった。


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ゆったりした時間を過ごして建物を出て改めて周囲を見渡す。北側に「旧横浜生糸検査所附属生糸絹物専用B号倉庫及びC号倉庫(北仲Blick)」と「旧横浜生糸検査所附属倉庫事務所」や「横浜第2合同庁舎(旧生糸検査所)」が並び、南側には「旧横浜正金銀行本店本館(神奈川県立歴史博物館)」が視界に入る。まさにここが横浜の歴史的建造物の一大集積地であることを思い知らされる。是非一度、歴史を生かしたまちづくりの見本市のど真ん中を体験しに、そしてゆっくり流れる時間を楽しみに来ていただきたい。


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