[レポート]継承される名建築の記憶と都市の新生 -「BASEGATE横浜関内」 【THE HERITAGE TIMES YOKOHAMA KANAGAWA】
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「BASEGATE横浜関内」3月19日グランドオープン
令和8(2026)年3月19日、横浜市中区の関内駅前に、大規模複合施設「BASEGATE(ベースゲート)横浜関内」がグランドオープンを迎える。かつて、横浜の行政の拠点として半世紀以上にわたり市民に親しまれてきた「旧横浜市庁舎」。その跡地を含む約1.65haの敷地が、歴史と未来が交差するミクストユースの拠点としてついに完成を見る。
本プロジェクトの核心は、戦後モダニズム建築の巨匠・村野藤吾が設計した旧横浜市庁舎行政棟の保存と活用にある。近代建築の価値を次世代へ引き継ぎながら、いかにして現代の都市ニーズに適合させるか。横浜の歴史的文脈を再解釈し、新たな活力を生み出す本事業の全貌について、その中心となる歴史的建造物を中心にレポートする。

目次
関内の記憶を未来へつなぐ「知のゲートウェイ」
「BASEGATE横浜関内」は、三井不動産を代表企業とするコンソーシアムが推進してきた、旧横浜市庁舎街区活用事業の総称である。JR根岸線・横浜市営地下鉄「関内駅」、横浜スタジアムや横浜中華街、日本大通りといった主要スポットに隣接する、まさに横浜の結節点(ゲート)に位置する。
事業のコンセプトは「新旧が融合し、人・モノ・情報が交差する拠点」だ。総延床面積は約12万8,500平方メートルに及び、敷地内は大きく分けて、地上33階建ての最新鋭「タワー棟」と、保存活用される「旧市庁舎行政棟(ホテル棟)」の2つの建築群で構成される。
単なる商業再開発にとどまらず、横浜が培ってきた「開港の精神」と「学問・文化」の伝統を重視しているのが特徴だ。ビジネス、観光、教育、エンターテインメントが多層的に混ざり合う、知的な刺激に満ちた街区を目指している。

セントラルプラザ:街に開かれた関内駅側の「顔」
関内駅側の正面に位置する「セントラルプラザ」は、本街区のメインエントランスとなる開放的な広場だ。市民や来街者を迎え入れるこの場所は、歴史的な旧市庁舎の佇まいと、現代的なタワー棟が調和する景観の結節点となっている。四季折々の植栽が施され、日常的な憩いの場であると同時に、地域と連携した多様なイベントの舞台としても活用される。

タワー棟:ビジネスとエンターテインメントの最前線
地上33階、高さ約170メートルのタワー棟は、関内エリアの新たなスカイラインを形成する。低層部には、日本最大級の常設型ライブビューイングアリーナ「THE LIVE supported by 大和地所」や、没入型体験施設「ワンダリア横浜」などのエンターテインメント施設が集結する。


また、オフィスフロアには関東学院大学がテナントとして入居する。関内駅北側の「横浜関内キャンパス」と密接に連携しながら、実社会の課題解決に取り組む産学連携の拠点として機能する。学生や研究者が日常的にビジネスの現場と交わることで、エリア全体に知的な活力を生み出すことが期待されている。
その他、最新のトレーニングマシンや低酸素環境などを備えた、ラグジュアリーな会員制フィットネスジム「YSA スポーツと医科学のジム 横浜関内」や横浜スタジアムを見下ろすことができる「スカイロビー」も魅力となっている。


土地の記憶を辿るストリート「継承の道」
タワー棟と旧市庁舎行政棟(ホテル棟)の間に整備された「継承の道」は、本プロジェクトの思想を最も象徴する空間の一つだ。
このストリートは、「新旧融合」を特色とするBASEGATE横浜関内の新しさを象徴する高層棟「タワー」と、歴史を代表する「ザレガシー(旧横浜市庁舎行政棟)」の間に位置し、街区内にちりばめられた土地の記憶を紹介する役割を担っている。ここを歩くと、かつての横浜の営みを伝える貴重な遺構に出会うことができる。

港町魚市場跡の碑
この地がかつて魚市場として賑わっていた歴史を物語る。横浜の食文化を支えた拠点としての記憶が、現代の商業空間の中に刻まれている。
2代目市庁舎を支えた「松杭」
地下遺構の調査で発見された、2代目市庁舎の基礎を支えていた松の杭。当時の土木技術や、横浜の地盤を克服して立ち上がった公共建築の力強さを今に伝える。

辻晉堂・レリーフ「海・波・船」(部分)
辻晉堂は村野藤吾の重要なコラボレーターとして知られ、「陶彫」と呼ばれる陶器彫刻の第一人者だ。大阪の新歌舞伎座、日生劇場、早稲田大学戸山キャンパス旧33号館など、村野建築の随所でその才能を発揮してきた。
かつての市民広間の壁面を飾っていた「海・波・船」は、幅50メートル、高さ7メートルという圧倒的な規模を誇る巨大な作品であった。今回の再生にあたり、その一部が丁寧に保存・展示されている。継承の道での展示に加え、ホテル2階のカフェエリアにもこのレリーフの一部が保存されており、当時の空間が持っていたダイナミズムを追体験することができる。


村野藤吾の傑作を再生した「OMO7横浜 by 星野リゾート」
本プロジェクトの目玉といえるのが、旧横浜市庁舎行政棟を保存・活用した「OMO7横浜 by 星野リゾート」である。
旧横浜市庁舎は、横浜開港100周年記念事業として昭和34(1959)年に村野藤吾の設計により竣工し、60年以上にわたり横浜市政を支えてきた。市民に親しまれた旧市庁舎の景観を継承するため、行政棟を原位置に残し、観光の賑わいの拠点となるようレガシーホテルとして活用した。
令和7(2025)年8月には、「長きにわたり地域のシンボルであった旧横浜市庁舎行政棟の保全と活用により、新旧が融合した新たな都市のランドマークが形成される」点が評価され、戦後の建造物として初めて「横浜市認定歴史的建造物」に認定された。

歴史を紐解く宿泊体験
「OMO7横浜 by 星野リゾート」では、宿泊者がこの名建築の魅力を深く味わうための仕掛けが充実している。

大階段と議場の椅子
1階パブリックスペース「OMOベース」には、1階と2階を繋ぐシンボリックな大階段を設置しました。これは旧横浜市庁舎の象徴であった旧市民広間 大階段のデザインを継承し、再構築したものです。村野氏のデザインを象徴する、滑らかな曲線を描く手すりの一部も再活用。賑わいの中心にふさわしい存在感を放ちます。2階の窓際の椅子には、旧市会棟本会議場の議員席を再利用。かつての威厳ある椅子が、ゲストがゆったりと寛げる場所へと生まれ変わりました。




ハマイズムコレクション
60年以上にわたる旧横浜市庁舎の構想と継承の歴史の中で、横浜で生まれた文化や歴史背景を知ることができる「ハマイズムコレクション」もOMOベースに展示されている。旧市会棟本会議場の絨毯や旧市民広間の大階段の手すりなど、かつての面影を残す展示物に触れたり、村野氏デザインの時計を間近に眺めることができる。

階数表示
「OMO7横浜 by 星野リゾート」には村野藤吾がデザインしたフロア階数サインが残されており、その数字デザインを継承・発展させ、「エレベーター内階数ボタン」「各階階数サイン」「客室番号サイン」に再デザインを施されている。再デザインにあたっては、村野藤吾のオリジナルデザインには存在しなかった「0」と「9」の数字が課題となったが、Togo Murano Archives 村野朋子氏、村野、森建築事務所で村野藤吾と共に活動していた鈴木志朗氏のデザインにより完成。ホテル改修全体のコンセプトである「歴史継承・新旧融合」を、サインデザインの細部に至るまで具現化した取り組みである。

横浜レガシーウォーク
OMOレンジャーとは、OMOのスタッフが、ご近所ガイドとして宿泊客をディープな街の魅力へ案内するサービス。街を知り尽くしたOMOレンジャーが、通常の観光では見落としがちな歴史の断片や、建物の意匠を深く楽しく解説する予定。街を巡った後は、村野藤吾氏が手掛けたホテル内の建築美を深掘り。細部までこだわり抜かれた新旧融合の空間を案内する。歴史的建造物とともに横浜の歴史に触れる機会となることが期待される。

テーマカラーが目を引く個性的な「客室」
全276室、広さ20㎡から73㎡の全9タイプが用意されている。客室のテーマカラーである赤・青・緑は、それぞれ旧横浜市庁舎内で使用されていた色を落とし込んでいる。赤は旧議長室の絨毯の色、青は旧市庁舎内の艶のある磁器質タイルの色、緑は旧市会棟本会議場の絨毯や議員席の色をイメージしている。



ビクトリーゲート
レガシー棟にはホテル以外にJR関内側の区画に明治42(1909)年に関内で創業した老舗書店、有隣堂が出店している。書店に加え、コワーキングスペース、雑貨マルシェ、アートに触れるギャラリー、洋食ダイニングなどを展開する。
このレガシー棟1・2階部分の「OMO7横浜 by 星野リゾート」と有隣堂間には4スパンほどピロティ状に改修された部分があり、「ビクトリーゲート」と名付けられている。
床面や柱・梁は旧市庁舎のものが残されており、モダニズム建築の特徴とも言えるPCカーテンウォールの構造が確認できる。また、空間的に過去を象徴する歴史的建造物と現在・未来を象徴するタワー棟を結ぶ空間としても効果的である。

愛市の鐘
JR関内駅から海に向かって「継承の道」を抜けたところ、ホテル北側広場には「愛市の鐘」が展示されている。この鐘は、昭和34(1959)年、横浜開港 100周年を記念して、旧横浜市庁舎に設置されていたもの。鋳金の人間国宝・香取正彦によって制作され、横浜市章であるハママークや黒船の意匠が刻まれ、横浜の歴史と未来への願いが込められている。かつて朝には「勤労の鐘」、正午には「市歌」、夕方には「愛の鐘」のメロディが鳴り響ていた。この鐘を吊るすために市庁舎屋上に設置された鉄塔は、漁網を吊るした形を模していて、この地がかつて魚市場であったことを伝えようとする、村野藤吾の心意気を感じさせるデザインとなっている。


継承される名建築の記憶と都市の新生
横浜市の新たな賑わい拠点として生まれ変わった旧横浜市庁舎。これまでも横浜市では、北仲地区など歴史的建造物を保全活用しなら新しい機能と融合させたまちづくりが進められてきたが、ここもその新たな事例として評価され、ゆっくりと市民の中に定着していくことを期待してやまない。
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