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[レポート]横浜開港資料館リニューアル内覧会【THE HERITAGE TIMES YOKOHAMA KANAGAWA】



横浜開港資料館「旧横浜英国総領事館」新展示室が完成


横浜の開港史を今に伝える横浜開港資料館(横浜市中区)。その敷地内に建つ、昭和初期の貴重な建築遺産「旧横浜英国総領事館(旧館)」の改修および新展示室の整備が完了した。令和8(2026)年3月23日、一般公開に先駆けて行われた完成記念式典・プレス内覧会の様子をレポートする。

完成記念式典

開会挨拶


佐藤信氏(横浜市ふるさと歴史財団 代表理事)

「この場所はかつて海に面し、幕府の奉行所が隣接していた、まさに開港場の一等地である。明治以降、多くの人々がここから世界へと旅立っていった。近代日本と英国の密接な関係を象徴するこの旧横浜英国総領事館に新たな展示室を整備し、新たな展示をお披露目できることを大変喜ばしく思う。市民が歴史を『自分たちのもの』として受け止めるための拠点として、さらなる発展を目指したい。」


佐藤信氏(横浜市ふるさと歴史財団 代表理事)
佐藤信氏(横浜市ふるさと歴史財団 代表理事)
小野寺紀子氏(横浜市教育委員会 生涯学習担当部長)ー下田教育長メッセージ代読

「令和3年度からの5か年計画に基づき、横浜開港資料館を文化観光の拠点とするため様々な取組みを進めてきた。旧館のバリアフリー化や外観復元、新たな展示室の整備により地域の回遊性を生む拠点としての役割を強化したほか、デジタルアーカイブを整備することができた。公開資料は20万点を超え、研究から商品開発まで幅広く活用されている。今回の整備は、文化財を未来へつなぐ具体的な取り組みの一環だ。隣接する神奈川県庁東庁舎の間にバラを生かした外構や「たまくす」周辺のデッキも整備され、来年3月の『GREEN×EXPO 2027』も見据え、歴史と自然を身近に楽しめる場を提供していく。」


小野寺紀子氏(横浜市教育委員会 生涯学習担当部長)
小野寺紀子氏(横浜市教育委員会 生涯学習担当部長)

来賓挨拶


アレクサンダー・マシューズ氏(駐日英国大使館 政治部参事官)

「1869年に領事館が置かれて以来、日英交流の中心であった。新展示室では両国の歩みや先人の結びつきを感じることができる。国同士の信頼は、人と人の交流や文化の共有から生まれる。この展示が日英の絆の深さを伝え、未来の交流を育む力となることを願っている。」


アレクサンダー・マシューズ氏(駐日英国大使館 政治部参事官)
アレクサンダー・マシューズ氏(駐日英国大使館 政治部参事官)
原信造氏(山下公園通り会 会長)

「ホテルニューグランドには『ペリー来航の間』があり、ペリー来航の様子を描いた絵を拡大して掲げているが、ペリーが上陸したこの地こそが横浜の発祥地だ。昨今はみなとみらい地区が注目されがちだが、本来の中心はこの関内・山下エリアである。ここが魅力的にならなければ横浜の観光とは言えない。新しくなった旧横浜英国総領事館が、山下町、中華街、元町を繋ぐ観光の核となり、地域がより活性化することを期待している。」


原信造氏(山下公園通り会 会長)
原信造氏(山下公園通り会 会長)
日比生猛氏(日本大通りエリアマネジメント協議会 代表理事)

「日本大通りの起点に建つこの旧横浜英国総領事館が、開かれた文化観光の拠点として活用されることに深く敬意を表する。日本大通りを訪れ多くの方が横浜の豊かな歴史に触れ、まち歩きの楽しさを深める拠点となることを期待している」


日比生猛氏(日本大通りエリアマネジメント協議会 代表理事)
日比生猛氏(日本大通りエリアマネジメント協議会 代表理事)

旧館改修・新展示室等の概要と今後の方向性について


青木祐介氏(横浜開港資料館 副館長)

イギリス総領事館と新展示室について

「これまで旧館は建物中央の記念ホールを除いて、執務室として使われていたが、今回の改修で建設時の姿に再現した上で総領事館時代に総領事の執務室であった1階の記念室と2階を新たに展示室とし見学できるようにした。ハード面においては、車椅子用昇降機を設置。新館から旧館の2階展示室の通路を設置し、バリアフリー化した。また、調査を行い、外観・内装の色彩等を創建当時のものに再現した。新たに展示室を設けるというソフト面では、往時は領事館の職員や家族の生活スペースだった2階の小部屋を展示室として活用して、近隣の観光地である山下町、中華街、元町、山手がかつて栄えた頃の様子を伝える展示を行った。」


車椅子用昇降機 画像出典:横浜開港資料館記者発表
車椅子用昇降機 画像出典:横浜開港資料館記者発表
たまくすの木や歴史的建造物の維持管理について

「たまくす周辺のデッキの整備に対するクラウドファンディングを行ったほか、一般の来館者の方にも、たまくすの木の維持管理にご寄附をいただいた皆様へは「御樹印」を頒布している。今後の方向性として、歴史を大切にしている近隣の皆様からの支援を通じてさまざまな事業を展開しており、お菓子や絵本などのオリジナルグッズの開発などを行っているほか、スポンサーシップ制度の創設も検討している。」


横浜開港資料館の「たまくすの木」 画像出典:横浜開港資料館記者発表資料
横浜開港資料館の「たまくすの木」 画像出典:横浜開港資料館記者発表資料
今後の方向性について

「あと数年で建物が100周年、開港資料館が開館50年を迎える。そうした節目の年に多くの皆様にご来館いただけるよう、地域の皆様とともに引き続き取組みを進める。」


青木祐介氏(横浜開港資料館 副館長)
青木祐介氏(横浜開港資料館 副館長)

横浜開港資料館における文化観光拠点計画について


羽毛田智幸氏(拠点計画推進課長)

「横浜開港資料館文化観光拠点計画は文化の振興と観光の振興を地域の活性化につなげ、そこで生まれた経済的な効果が文化の振興に再投資される好循環を作り出すことを目的に、文化庁に認定された計画で、令和3年度に文化庁により認定され、地域の関係者とともに全6項目16事業を展開する計画となっている。」


取組の重点項目は以下のとおり


1-① 「横浜開港」資料のデジタルアーカイブ整備公開推進

収蔵資料のデジタル化を進め約21万点の資料を登録、そのうち1万点のデジタル画像を活用いただいている。


横浜開港資料館デジタルアーカイブ
横浜開港資料館デジタルアーカイブ

1-② 旧館展示「横浜開港の記憶」制作

拠点計画エリアへの誘客拠点として旧横浜英国総領事館の2階に山下町や横浜中華街、元町商店街等を紹介する展示室を設けた。


旧館2階展示(山手)
旧館2階展示(山手)

2-① 多言語デジタルウェブコンテンツ制作事業

また、地域の皆様にご協力いただき、近隣の魅力あるスポットを紹介するウェブコンテンツ「こい旅横浜」。「中華街編」と「山下町編」をそれぞれ制作し、ホームページで公開する。

こい旅横浜 画像出典:横浜開港資料館記者発表資料
こい旅横浜 画像出典:横浜開港資料館記者発表資料

4-② 「食べて楽しむ・買って楽しむ」施設機能拡充

館併設のミュージアムショップ&カフェでは、「PORTER’S LODGE」でコラボ商品やオリジナル商品の販売を始めている。


6-② 旧英国総領事館等再整備事業

旧横浜総領事館の外観を総領事館時代の姿に復元するなど再整備工事が行われた。


羽毛田智幸氏(拠点計画推進課長)
羽毛田智幸氏(拠点計画推進課長)

横浜開港資料館の今後の取り組み紹介


西村健氏(横浜開港資料館 学芸担当係長)

リニューアルを記念し、4月1日より以下の展示が予定されている。これらの展示を通じて横浜開港資料館が持つ多彩な資料の魅力を発信していきたい。


① 横浜開港資料館旧館新展示室公開および展示室3リニューアル記念「横浜の記憶一多彩な収蔵資料一」(会期:4月1日 - 7月20日)

当館所蔵の27万点の資料から、5つのテーマに沿った貴重な原資料を公開。


② 昭和100年記念「広瀬始親ミニ写真展 昭和の背中」(会期:7月18日 - 9月27日)

昭和30年頃の横浜を鮮明に記録した写真パネル展示。


③ 「横浜に遺る中世文書(仮称)」(会期:9月19日 - 12月26日)

これまで存在は知られてきたが、当館の展示ではほとんど出陳したことのない中世文書を展示し、文書が伝来した横浜市域の旧家について取り上げる。また、2026年NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』に関連して、初公開資料を含む秀吉文書2点を展示する。


西村健氏(横浜開港資料館 学芸担当係長)
西村健氏(横浜開港資料館 学芸担当係長)

閉会挨拶


西川武臣氏(横浜開港資料館 館長)

「50年前、私が初めてここを訪れた際、かつて3階に住んでいたという日本人職員のご夫婦に出会った。お二人が『ここのバラを私たちが育てたのよ』と愛おしそうに話していた姿が今も忘れられない。ここは日本人商人のエリアと外国人居留地が交差する、まさに交流の結節点である。単に『楽しかった』で終わるのではなく、街の伝統を知り、その深みに触れて帰ってもらえるような活動拠点にしていきたい」


西川武臣氏(横浜開港資料館 館長)
西川武臣氏(横浜開港資料館 館長)

プレス内覧会

新展示室案内


西村 健(横浜開港資料館 学芸担当係長)

新館2階 展示室3

「新展示室の公開にあたり、膨大な所蔵資料を改めて精査した結果、当館のコレクションが持つ独創的な『古文書』『海外資料』『地図』『古写真・絵葉書』『瓦版・絵葉書』の5つのテーマに沿った構成とした。今回の展示ではこれに加えて、当館で非常に多くのコレクションを持つ「商標」を中央の展示台に並べた。通常、資料保存の観点から常設展示ではレプリカ(複製)を用いることが多いが、今回のリニューアル記念展では、展示されているすべての資料が『原資料(オリジナル)』である。原資料の持つ魅力を是非知っていただきたい。」


新館2階 展示室3
新館2階 展示室3
新館2階 展示室3 商標の展示
新館2階 展示室3 商標の展示

旧館(旧横浜英国総領事館)案内


青木祐介氏(横浜開港資料館 副館長)

旧館2階展示室

「旧館2階はかつて、領事館員の住居だった空間である。当時の暖炉が残されている窓枠や扉といった建具、壁面の塗装色は横浜英国総領事館時代の色に復原した。室内では、山下町や横浜中華街、元町や山手といったかつての外国人居留地を中心としたエリアの歴史を紹介している。」


旧館2階展示室
旧館2階展示室
旧館2階展示室
旧館2階展示室
旧館2階ギャラリー

「開港資料館の執務室として使用していた部屋をギャラリーとして公開。今まで一般来館者が見ることの出来なかった北側庭を俯瞰する景色を見ることができる。」


旧館2階ギャラリー
旧館2階ギャラリー
旧館1階記念室

「記念室は、横浜英国総領事館時代には総領事室として使用されていた部屋である。これまでは横浜開港記念日近くの特別公開日のみ公開していた。室内では、横浜のイギリス領事館の歴史について、そして幕末の外交官アーネスト・サトウについて紹介しているほか、かって建物入口上部に掲げられていたイギリス王室の紋章を展示している。」


旧館1階記念室
旧館1階記念室

北側庭(外構)案内


中橋洋平(横浜市みどり環境局公園緑地事業課担当係長)

「横浜市では『横浜みどりアップ計画』を推進しており、その一環として公共施設などでの魅力的な緑化を進めることで、地域の良好な景観形成や賑わい創出につなげている。このたび横浜開港資料館の文化観光拠点計画による建物改修に合わせて外構の植栽工事を実施し、建造物の歴史的な景観と調和した花とみどりの空間づくりや、ゆったり休憩できるベンチ等を設置した。ぜひ、横浜市指定有形文化財である横浜開港資料館と緑が一体となった景観をお楽しみいただきたい。」


北側庭(外構)
北側庭(外構)

整備のポイントは以下のとおり


①横浜開港資料館の歴史を見守ってきたバラ『クイーンエリザベス』などを、庭園を象徴するみどりとして守っていくため、日当たりの良い、より生育に適した環境に移植した。


②植物は、日陰・半日陰の環境に適した種類を選定した。また、ガーデンごとのテーマカラーに沿って花が咲く多年草やカラーリーフ等を植栽しており、資料館に調和した色どりを添えている。


②資料館と庭園の間の園路は周辺景観との一体性に配慮し、小舗石をアクセントにした舗装とした。


北側庭(外構)
北側庭(外構)
青木祐介氏(横浜開港資料館 副館長)

北側庭の整備により、日本大通りから開港広場側への回遊性が生まれる。また隣接する神奈川県庁東庁舎との間の門も開放し、オープンカフェからも通れるようになる。併設のミュージアムショップ&カフェ「PORTER’S LODGE」も合わせて楽しんでいただきたい。


ミュージアムショップ&カフェ「PORTER’S LODGE」
ミュージアムショップ&カフェ「PORTER’S LODGE」
内覧会を終えて

内覧会で紹介された新たな展示施設は、横浜開港資料館の魅力をより高めていることはもちろんであるが、それ以上に「地域の拠点」となり、このエリアを巡る方々に、地域の歴史と魅力を伝え、楽しみながらまち歩きをしてもらいたいという強い意志とそのための仕掛けが詰まっており、4月1日のリニューアルオープンが楽しみである。



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