[開港5都市]景観まちづくり会議2026長崎大会 - 18 全体会議Ⅱ【THE HERITAGE TIMES YOKOHAMA KANAGAWA】

令和8(2026)年11月2日(月)、「開港5都市景観まちづくり会議2026長崎大会」3日目、オプショナル企画を除く長崎大会最後のプログラムである「全体会議II」は長崎市役所の2階多目的スペースにて、青柳智子氏(東山手「地球館」)の司会進行ではじまった。

主催者挨拶:桐野耕一氏(長崎大会実行委員長/長崎居留地歴史まちづくり協議会)

今回の長崎大会の実現には、他都市との継続的な繋がりや、テーマ別分科会に積極的に参加し議論を深めてくれた若い世代の力が不可欠であった。挑戦的な試みも含む大会となったが、半年間にわたり準備を重ねてきただけに、無事に終了を迎えて「祭りの後」のような感慨を抱いている。市民と行政は時に対立することもあるが、本大会のように一体となって作り上げるプロセスを通じ、互いの立場を理解し尊重し合える関係性が築かれたことは大きな成果である。開催に向けて尽力した山田市長をはじめとする行政関係者に深く感謝するとともに、大きな事故もなく全日程を終えられたことに安堵している。
全体会議Ⅰ報告・テーマ分科会報告:平山広孝氏(長崎市景観推進室係長)

10年前から本会議に関与してきた中で、全体の雰囲気が大きく変化したことを実感している。特に若い世代の参加が増加しており、次世代への継承が着実に進んでいる。横浜市で20代の代表者が誕生した事例に象徴されるように、自身が「レジェンド」となりつつある現状を踏まえ、今後はミドルジェネレーション(中堅世代)の層を分厚く形成していく必要性を感じている。10年前とは比較にならないほど組織の世代交代と深化が進んでいることは、非常に感慨深い。
今回の全体会議1に登壇した西村(幸夫)先生の招聘は、横浜市の国吉氏からの紹介によって実現した。都市の取り組みが多角化・深化する中で「改めて景観とは何か」を問い直す必要があり、その基軸として西村先生による基調講演を企画した。景観とは単なる高さ制限や色彩規制にとどまらず、本来は人々の生活や営みそのものに根ざした概念である。多様な分野が横断的に連携しなければ真の景観は形成できないという本質的な課題提起がなされた。西村先生が本大会のために特別に作成したスライドと「都市の物語は次の世代が引き継ぎ、育てなければならない」という強いメッセージは非常に印象的であり、我々の取り組みを客観的に振り返る貴重な機会となった。この学びを通じ、参加者全員でこの会議を運営していくという意識が改めて共有された。
また、今回の新たな試みとして設定した「テーマ別分科会」は、代表幹事会での議論を経て実現したものである。従来の開催都市任せの運営では登壇者調整などの負担が大きく難しかった取り組みだが、FG会議などで回数を重ねて調整してきたからこそ可能となった。商店街活性化や街並み継承など、参加者一人ひとりの関心に応じた切り口で深い学びの場を提供できたことは大きな成果である。会場の負担や制限は大きかったものの、専門知識を持った参加者同士が視点を共有し合える場として非常に有効であったため、今後もこうした共有の機会を継続していきたい。加えて、参加者に楽しんでもらう工夫として実施したシール収集企画も盛況となり、会議全体を通じて学びと交流が調和した有意義な開催となった。関係者各位の多大な協力に深く感謝する。
まちあるき分科会1「『宣教師の丘』東山手を巡る旅」報告:野村紀代子氏(東山手地区町並み保存会)

まちあるき分科会1「『宣教師の丘』東山手を巡る旅」では、宣教師の丘と称されミッションスクールが残る東山手を巡り、居留地時代の面影を感じながら街の特性を生かした景観まちづくりについて議論した。活水女子大学ではプロテスタントの創立背景や女性自立への思いを聴講し、海星学園ではカトリックの御御堂や屋上から居留地全体を一望した。校舎改築時の屋根の色を巡るエピソードでは、地域の歴史的色彩に対する参加者の深い関心が示された。東山手洋風住宅群での意見交換では、学生との連携や分散型宿泊の活用案などが提示された。参加者からは、現地を歩くことで当時の暮らしや人の物語に触れ、街の魅力を再発見できたとの感想が多く寄せられた。保存会として、これらの意見を今後の活動に活かしていきたいと考えている。
まちあるき分科会2「過去と未来が石畳に響く『学園の丘』東山手ツアー」報告:井須良麦氏(長崎東山手洋館活用プロジェクト)

まちあるき分科会2「過去と未来が石畳に響く『学園の丘』東山手ツアー」では、改修を終えた旧英国領事館を出発し、東山手甲十三番館、東山手十二番館、復元工事中の長崎居留地12A、洋風住宅群、海星学園を巡るルートを実施した。ガイドは団体の女子学生3名が初挑戦し、おもてなしの視点を学ぶ貴重な機会となった。東山手十二番館では、地域への来訪動機を創出する社会実験企画「マジカルポートレート居留地」の一環として集合写真を撮影した。東山手地球館では青柳(智子)館長から活動紹介を受けた後、巡ってきた4つの洋館の利活用策について他都市の参加者とワークショップ形式で協議した。会場からは撮影スタジオやビアホール、図書館といった多様なアイデアが出され、歴史的建築の新たな可能性を模索した。今回の取り組みは、若手メンバーの成長と居留地の魅力発信において有意義な成果を得た。
まちあるき分科会3「新旧建物探訪」報告:山口雅彦氏(一般社団法人長崎県建築士会長崎支部)

まちあるき分科会3「新旧建物探訪」では、5つの拠点を巡回し、南山手地区における歴史と現代が重なる多層的な都市の姿を体感した。大浦天主堂や南山手レストハウスに見る原点と保存、街並み保存センターが担う制度とコミュニティ、さらにホテルインディゴ長崎グラバーストリートやヴィラコモン長崎が表現する現代への継承と価値創造が、連続した営みとしてつながっていることを確認した。長崎大会のテーマ「つながりをデザインする」に照らし、歴史的資産を過去の遺物とせず現代の生活や経済活動へ活用する重要性と、それを支える技術的・デザイン的中介者としての専門家の役割を再認識した。また、大浦天主堂付近のタイルの手すりに刻まれた職人の刻印に感銘を受ける参加者も多く、手仕事の記憶や本物の歴史的資産が持つ力を実感する有意義な機会となった。
まちあるき分科会4「港まちが経験したパンデミックや被災経験を活かしたまちを歩く」報告:梅元建治氏(一般社団法人ナガサキベイデザインセンター)

まちあるき分科会4「港まちが経験したパンデミックや被災経験を活かしたまちを歩く」では、横浜・神戸大会からのオンライン会議を経て、長崎における災害や感染症の歴史的経験を現地で体感する企画として実施された。昭和57年の長崎大水害で流出し復元された眼鏡橋ではバイパス水路による治水対策を学び、450年前の町割りが残る街並みを視察した。明治初期のコレラ流行時に衛生環境改善のため整備された石張りの公共下水道跡を巡り、近代医療発祥の地とされる小島養生所跡(資料館)ではパンデミック対策や病理研究の歴史に触れた。一連の現地視察を通じ、日常の暮らしや地域活動の蓄積こそが非常時に地域を支える最大の力になるという認識を共有した。また、今後の会議運営においてFG(未来世代)が中心的な役割を担うべきとの提言がなされたほか、ネットワークを生かした事前防災への貢献の重要性が再確認された。
まちあるき分科会5「 平成初期から続く『斜面市街地再生』と『唐人屋敷顕在化』のいま」報告:平山広孝氏(長崎都市・景観研究所)

まちあるき分科会5「 平成初期から続く『斜面市街地再生』と『唐人屋敷顕在化』のいま」では、中華街近くの斜面市街地・中新町における空き地活用や唐人屋敷の顕在化事業を現地で視察した。人口減少と高齢化が進む斜面市街地では、空地を自治会長の協力により借上げ、月額500円で貸し出す市民農園を2020年から運営している。農具や水道を整えて若い世代の参入を促し、収穫した作物を地域住民へ配ることで、若い人の来訪と地域貢献が連動する持続可能な仕組みづくりを行なっている。あわせて、平成初期から取り組んでいる江戸時代の中国人居留地・唐人屋敷跡の顕在化事業についても解説を行った。意見交換の場では地元自治会長からのビール提供による交流の機会も設けられ、地域の強固な絆と社会貢献活動の一体的な展開を参加者が直接体感する有意義な視察となった。
まちあるき分科会6「江戸時代のまちづくり-朱印地と町人文化の足跡(北巡り)」報告:岩崎直哉氏(長崎町人町プロジェクト)

まちあるき分科会6「江戸時代のまちづくり-朱印地と町人文化の足跡(北巡り)」では長崎くんちをはじめとする町人文化の背景を探るため、徳川幕府公認の「朱印地」や寺町筋を視察した。勝海舟の滞在で知られる本蓮寺を出発し、風頭山麓沿いに点在する歴史ある寺院群を巡回した。日光東照宮ゆかりの長崎東照宮や旧安禅寺を訪れた際には、丸山の遊女が客の滞在を願って雨乞い代わりに狛犬を回したという伝承など、地域に眠る生活史が紹介された。さらに寺町の北端から南端に位置する歴史的寺社群を辿り、居留地とは異なる庶民的で豊かな町人文化の記憶が今なお街並みに息づいていることを提示した。現地歩きを通じて長崎の多面的な歴史景観と文化遺産の深みを共有し、参加者の知見を広げる有意義な機会となった。
まちあるき分科会8「『岬のエリア』の歴史資産とまちづくり」報告:岩本諭氏(FG長崎2045)

まちあるき分科会8「『岬のエリア』の歴史資産とまちづくり」では、長崎発祥の地とされる「岬のエリア」を巡り、新設されたまちづくり協議会によるエリアマネジメントの試みや開発前夜の街並みを視察した。旧市役所や旧県庁の跡地利用、国道34号の「ほこみち(歩行者利便増進道路)」といった国・県・市の大型プロジェクトが本格化する直前の現状を歩いて確認した。途中に置かれた道路元標の可視化についての議論や、江戸町商店街での意見交換を実施した。参加した他都市の参加者からは、先進的なエリアマネジメントにおける人件費確保策(広告料や駐車場収益の活用等)や、県庁跡地を子どもが遊べる緑の空間とする案など、実践的なアドバイスが多数寄せられた。10年後の未来を見据え、官民連携による新たな景観まちづくりに向けた知見を共有する有意義な機会となった。
周遊バスツアー「祈りと営みが作った景観」報告:原田宏子氏(長崎地域力研究会)

周遊バスツアー「祈りと営みが作った景観」は、マイクロバスで外海地区の8箇所を巡り、歴史的景観の背景にある「人の思い」に触れる旅として実施された。遠藤周作文学館では作家や五島へ渡った人々の物語と絶景を体感し、出津教会ではドロ神父の情熱とそれを誇りとして継承する地域住民の精神構造を学んだ。大中尾棚田では、先祖が開拓した棚田を未来へ残そうとする仏教集落の活動を学び、新米のおにぎりや煮しめを味わう体験を通して景観の真髄を五感で享受した。参加者からは、長崎の人々が歴史を現代の物語へと紡ぎ直している点や、人々の営みや食文化も大切な街歩きの対象であるという高い評価が得られた。景観とは単なる建造物ではなく人々の暮らしや情熱によって育まれるものであり、地域への思いこそが街づくりの原点であるという深い知見を共有する有意義なツアーとなった。
FG 会議企画「ニューカマー &ニュープロジェクトプレゼン大会」報告:岩本諭氏(FG長崎2045)

公設市場跡地を改修した「つきまち横丁」を会場に、若手や新規参加者によるプレゼン大会が開催された。本企画は初参加者や新プロジェクトの参入機会として新たに位置付けられたものであり、11組の登壇者が各5分間の発表を行った。会場には70〜80名の参加者が詰めかけ、賑やかな歓声や応援が飛び交う中で熱気に満ちた交流が展開された。同企画は新規参加者が本会議へ参入しやすく親しみやすい場として機能しており、発表後は同横丁を最大限に活用した大懇親会が催され、参加者同士の親睦とネットワークの深化が図られた。
大会アピール:岩本諭氏(長崎大会副実行委員長/斜面地・空き家活用団体つくる)

開港5都市景観まちづくり会議2026長崎大会
大会宣言
私たち開港5都市は、それぞれの港が育んできた歴史、文化、景観、そして人々の営みを共有しながら、長年にわたり景観まちづくりの歩みを重ねてきた。
まちづくりとは、過去から受け継いだ物語を大切にしながら、私たちの時代にふさわしい新たな章を書き加え、次の世代へとつないでいく営みである。先人たちが築き上げてきた価値を尊重し、その時代に生きる私たち自身が未来への責任を果たしていかなければならない。
2026長崎大会では、「つながりをデザインする~持続可能な都市間コミュニティの形成~」をテーマに揚げ、各都市が培ってきた経験や知恵を共有しながら、未来につながる景観まちづくりについて議論と交流を深めた。
また、2016年から始まったFG会議は、未来を担う若い世代が主体的に参画し、新たな視点と行動力によって会議に新しい価値を生み出してきた。私たちは、これまで開港5都市が育み、受け継いできた景観まちづくりの理念や実践、そして都市間交流の精神を次世代へ託し、ともに未来のまちづくりを創造していくことの重要性を改めて認識した。
私たちは、本大会で生まれたつながりをさらに発展させ、市民、事業者、行政、そして未来を担う若い世代とともに、それぞれの地域の個性と魅力を生かした景観まちづくりを進める。
そして、開港5都市の絆を礎として、新たな連携と交流の輪を広げながら、次代を担う世代へこの会議の理念と実践を継承し、ともに新たな時代の物語を紡ぎ、持続可能な都市間コミュニティの形成に取り組むことをここに宣言する。
令和8年11月2日
開港5都市景観まちづくり会議2026長崎大会
参加者一同
次期開催都市あいさつ:本間海渡氏(新潟市)

2027年新潟大会の実行委員長を仰せつかることとなった。まずは本長崎大会の開催にご尽力いただいた長崎のメンバーの皆様に、心より感謝申し上げる。前回大会とはまた異なる魅力を体感することができ、大変満足している。
先ほどの代表者会議において、2027年新潟大会の日程が承認された。現状では2027年11月6日(土)および7日(日)の2日間開催を検討しているが、長崎大会からの引き継ぎを進める中で、内容によっては3日間の開催へ変更となる可能性もある。その際は改めて皆様に周知できるよう準備を進めていく。
新潟は開港5都市の一つであり、豊かな水辺空間を有しながらも、その魅力を十分に伝えきれていない点が課題である。しかし、この課題こそが次なる大きな可能性を秘めていると捉えている。本会議が持つネットワークやコミュニティを十分に活かし、皆様とともに都市の発展とまちづくりに取り組んでいきたい。
昨日のテーマ別分科会では、私の方から新たな取り組みについて発表させていただいた。このプロジェクトも前回の長崎大会の内容を引き継いで企画したものである。各都市がそれぞれ課題と向き合う中で、5都市が集うこの場をさらに有効に活用してほしいと考えている。
先ほど採択された大会宣言の中には「共に新たな時代の物語を紡ぐ」という言葉があった。基調講演の西村先生も「物語」という言葉を用いておられたが、私たちが本分科会で100年前や200年前の歴史を語り継ぐと同時に、今度は我々自身が100年、200年先の未来に向け、語り継がれるまちづくりの1ページを刻んでいかなければならないと意を強くしている。
また宣言の結びには「持続可能な都市間コミュニティの形成」が掲げられた。これが本宣言における最大の目標である。この宣言を単なるお題目で終わらせぬよう、新潟がしっかりとバトンを受け継ぎ、来年の企画へとつなげていく所存である。そして、このコミュニティの先にある皆様のまちづくりが、より大きな価値を生み出すものになると確信している。
新潟においては、「新潟市景観ネットワーク」という組織が母体となって本大会を推進している。私が実行委員長に就任すると同時に、同ネットワークの会長職もお預かりすることとなった。今回の貴重な機会を最大限に生かすべく、組織規約の目的も大きく改定した。港町としての価値向上に確実につなげられるよう、行政と民間が一体となって価値ある時間を創出していく。
2027年、皆様と再び新潟で再会できることを祈念し、次期開催都市代表者としての挨拶とする。
大会旗引き渡し

長崎大会の桐野耕一氏(長崎大会実行委員長)・岩本諭氏(長崎大会実行副委員長)から新潟市の本間海渡氏(新潟市)・西野廣貴氏(新潟市)に大会旗が引き継がれた。
主催者謝辞:桐野耕一氏(長崎大会実行委員長)

3日間にわたる開港5都市景観まちづくり会議長崎大会が、絶好の天候のもと無事に開催できたことに対し、函館、新潟、横浜、神戸から訪れた参加者へ深く感謝を申し上げる。次回開催地である新潟市からの力強い決意表明を受け、しっかりと引き継いでいきたい。
長崎の街並みは、5年前の大会開催時と比較して新庁舎の建設をはじめとする都市整備が進み、一変している。しかし、一連の議論の中で示された通り、先人たちの思いを継承しながら現代の営みを刻み、次の世代へと繋いでいくことこそがまちづくりの本質であると改めて実感した。変貌を遂げる都市環境の中にあっても、歴史と誇りを未来へ引き継ぐ姿勢を再確認する有意義な機会となった。
本大会で培われた強い絆と成果を力とし、来年また全員が元気な姿で新潟の地で再会できることを祈念し、感謝の言葉をもって閉会の挨拶とする。

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