[歴飯_71]蕎麦 桶や
- heritagetimes

 - 2021年6月8日
 - 読了時間: 3分
 

横須賀佐島と葉山の間、秋谷海岸あたりの国道134号線沿いに「蕎麦 桶や」はある。狭い歩道しかない道から数段の階段をあがった引戸の入口から入る。
店主に促され、入口すぐのテーブル席に座る。1階には2人がけのテーブル席が2つ、4人がけが1つ、一段上がった厨房の前のカウンターに3席設けられていた。
お茶と一緒に、さらさらと美しい筆書きで書かれたメニューが運ばれてきた。一品料理、蕎麦、デザートなどが一枚一枚の和紙に分けられて書かれていて束ねられている。
それぞれ「小田原のかまぼこ屋さんのさつま揚げ」、「蕎麦屋の焼鳥」、「秋谷の天草使用ところ天」など、キャッチフレーズがついており、こだわりが伝わってくる。この日は梅雨の雨で昼過ぎではあったが少し肌寒かったので、その中から暖かい「とろろ蕎麦」を注文した。

注文の品が届くまでの間、店内を見回していると、「会心の蕎麦 高橋邦弘」と書かれた色紙があった。蕎麦打ちの神様と呼ばれている高橋邦弘氏からこの店に贈られた言葉である。店主は高橋氏の孫弟子にあたり、「しながわ翁」「手打蕎麦おかむら」で約7年間修行したのち、2年間、鎌倉で週2日の間借り営業を経て、ここに開業した。
店は大正期の蔵を改装したもの。店主によると、建築士であるこの建物のオーナーがこの蔵を残して活用したいと考え、店の後ろにある物件とあわせて購入し、改装したとのこと。そう思って改めて店の中を見ると、蔵の良さをしっかり残しながら、シンプルで無駄のない改装がなされていて、全体として落ち着いた雰囲気となっている。

しばらくすると、注文した「ととろ蕎麦」が席に運ばれてきた。運ばれてきただけで、出汁の優しい香りがあたりを包みこんだ。木の碗の蕎麦の上にこんもりとふわふわのとろろがのせられ、大判の海苔がそえらえている。
一口、蕎麦を口に運ぶと、細身ながらコシのある麺から、蕎麦の香りがしっかりと主張してくる。ととろと合わさると、さらに喉越しの旨味が加わり、スルスルと食べ進めてしまう。最後まで一気にいただくことができた。

食後に、店主の許しを得て、2階の座敷にも上がらせていただいた。急な階段を登ると、畳の座敷になっていて、座卓が3つ並んでいる。座敷には窓が一つあり、光が差し込んでいた。窓から外を覗くと、国道134号と街並み越しに秋谷海岸の海が見えた。
帰りがけに「書道教室」という張り紙があることが気になり、店主に伺ったところ、月に2度ほど店主が先生となって、書道教室を開いているとのこと。これで、お品書きの字の美しさも合点がいく。
夏になれば、海水浴客で賑わうこの地域は、高速道路の便が良いこともあり、年間を通じて横浜エリアから新鮮な魚や野菜、名物の「幸せの青い卵」などの買い物に訪れ、店に立ち寄る客も多いという。是非、海の幸、山の幸を楽しみに、そして美味しい蕎麦をいただきに訪れていただきたい。


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