[歴飯_78]こゆるぎ庵
- heritagetimes

- 2021年8月1日
- 読了時間: 3分

JR大磯駅から線路沿いに西に向かい、統監道の手前の小径を国道1号線方面に南下すると、文豪・島崎藤村が晩年の約2年を過ごした旧宅が左手に見えてくる。その斜め前に立派な腕木門を構えているのが、今回訪れる「こゆるぎ庵」である。「こゆるぎ庵」と書かれた表札が掲げられた門を潜るとその先に、数寄屋風の平屋があり、ガラスの引戸を開けて中に入る。店内には二間続きとなっており、奥の部屋には座敷席と床の間があり、縁側にはゆったりとしたソファー席もある。一方、手前の部屋にはテーブル席と窓際のカウンター席がある。
その中から一番手前のテーブル席を選び座ることとした。
メニューにはガレットセットのランチのほかスイーツ(タルト・ガレット・ワッフル)が並んでいるが、昼時だったのでスープとコーヒーが付いたガレットセットを注文した。

部屋から外を眺めると、数寄屋風の建物と合わせるように、苔むす和風の庭になっており、大きな開口部から注ぐ光とともに目を楽しませてくれる。この建物自体は古民家と言っても昭和40年代の建物で築50年程度とのこと。確かに客室から中廊下を挟んだ先に水回りとキッチンが据えられており、構成は古民家というよりは近代住宅に近く建具の素材などもベニア合板を多用しているなど、当時の住宅の特徴を備えていながら、全体を数寄屋の風情が感じられるよう仕上げており、郊外別荘の風格を持った建物と言える。店主によると、古民家カフェとして再生する前はしばらく空家になっており、その前は音楽家の別荘として使用されていたという。

しばらくすると、注文したガレットセットが運ばれてきた。
ガレットは石臼挽き蕎麦粉のクレープに地元産の野菜と茹で卵、スモークチキンがたっぷりとトッピングされている。ナイフとフォークで切り分け、トッピングをしっとりとしたクレープ生地で包むように少しづつ口に運んだ。特性のソースが効いていて、しっかりとしたボリュームながら、飽きのこない味となっていた。

店名となっている「こゆるぎ」とは何か気になり調べると、相模国(現在の神奈川県の一部)の大磯より西河岸一体にかけた一帯の地名だったとあった。また、小田原の地名の由来は諸説あるのが一説によると「小由留木(こゆるぎ)」の文字を、草書体に書いたのを読み誤って起きたとのことであった。別荘地として文豪や政治家など多くの著名人に愛された大磯でゆっくりと流れる時間を楽しむ空間の名として、ぴったりだと感じた。
食事を終え、運ばれてきたコーヒーを飲みながら、そのゆったりとした時間を楽しんだ。
この周辺には、冒頭に触れた旧島崎藤村邸のほか明治記念大磯庭園や鴫立庵など歴史を楽しむスポットが多くある。それらの巡る際に、是非訪れていただきたい。


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