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[歴飯_97]パンとエスプレッソと由比ガ浜商店



京都市嵐山にある築210年の旧家「旧小林住宅(京都府指定有形文化財)」を活用した「パンとエスプレッソと嵐山庭園」、大阪市中央区「堺筋倶楽部(旧川崎貯蓄銀行大阪支店 矢部又吉設計)」の「パンとエスプレッソと堺筋倶楽部」のように、歴史的建造物を活用した店舗も展開している「株式会社日と々と」。鎌倉市由比ガ浜通りに歴史的建造物をリノベーションした新店がオープンしたと聞き、訪ねた。

JR鎌倉駅西口から御成通り商店街を抜け、由比ガ浜通りに入る。六地蔵を過ぎ、交差点を渡ると、左手に[歴飯_11 THE BANK]でも紹介した旧鎌倉銀行が見える。この向かいにあった酒屋(榮屋商店)の跡に「パンとエスプレッソと由比ガ浜商店」がオープンした。

1階左端のたばこ販売窓口や丸型ポスト、2階窓枠周りの立体的な額縁等、酒屋であった頃の特徴的な外観はそのままに、新たに大きなガラスが入った木枠の引き戸が設置されている。



店内に入ると、2階の根太(床板を受ける横材)を残し、一部減築しているためか、2階の窓からの光りも入り、大きなガラス戸と相まって、開放的なつくりとなっている。カウンターに並んだパンからは美味しそうな香りが漂う。奥の扉から中庭に出ると、倉庫であった建屋を改装したテラス席も用意されている。倉庫は壁板をはがして屋根と軸組だけにした半屋外的な座席となっており、気持ちのよさそうな空間が作られている。店と倉庫の間には、酒屋であったことから同地を守ってきたであろう、屋敷神を祀った屋代と鳥居もある。



レジで会計を済ませ、窓際の席に着く。朝食の時間帯の来訪ということもあり、由比ガ浜商店のマフィンを使用したサバサンドとアイスコーヒーを注文した。ふわふわのマフィンと脂の乗った塩サバとマヨネーズの相性が良く、柑橘類(夏みかんと思われる)のピールが爽やかな香りを添えていて美味しい。「同じ日の連続じゃつまらない、一度きりの「一日」を大切にしたい」との同社の想いが込められた上質な時間と味を堪能できた。なお、由比ガ浜商店の限定品として、ランチタイムには鎌倉名物のしらすをふんだんに使用した「しらすトースト」も提供しているようなので、次回はランチタイムに再訪したい。



鎌倉駅から長谷方面に向かう由比ガ浜通りは、長谷寺の参道的な性格も有しており、かつては、花屋や酒屋、和菓子店等が多く軒を連ねていた。鎌倉市景観重要建築物等にも指定されている寸松堂やのり真安斎商店、国登録有形文化財の古民家スタジオ・イシワタリ(旧田島屋材木店)、THE BANK(旧鎌倉銀行)、萬屋本店(旧萬屋商店)など、往時の面影を残す建物も現存しているが、多くは時代の変化とともに姿を消してしまった。そんな歴史を持つ通りにオープンした「パンとエスプレッソと由比ガ浜商店」は、美味しいパンとコーヒーを楽しみながら、気軽に鎌倉のまちの歴史や歴史的建造物の持つ魅力に接することのできる場所になるのではないだろうか。


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