[レポート]小田原市 文化財建造物秋の観覧会【THE HERITAGE TIMES YOKOHAMA KANAGAWA】
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- 2023年12月13日
- 読了時間: 3分
小田原城や関連史跡だけでなく、近代別荘や町家など市内に多くの歴史的建造物を有する神奈川県小田原市。令和5(2023)年12月2日、3日に「国登録有形文化財」や「小田原ゆかりの優れた建造物」を一般公開するイベント「文化財建造物秋の観覧会」が開催された。
鴨宮エリア、板橋エリア、南町エリアと市内3地区で複数の歴史的建造物が公開されたが、今回は板橋エリアの様子をレポートする。
【旧古稀庵(山縣有朋邸)庭園】
「あいおいニッセイ同和損保研修所」となっている敷地には、明治期の政治家で軍人でもあった山縣有朋の別邸「古稀庵」の庭園と後に復元せれた門が現存している。山縣は庭園にも造詣が深く、敷地内の湧水や引込み水を用いた庭園を数多く作庭した。古稀庵の庭園は、東京都目白にある椿山荘、京都市蹴上の無鄰菴と並ぶ、山縣が作庭した近代庭園の傑作と評価されている。ここでは、イギリスから輸入した鉄管を用いて水を引き込む私設水道『山縣水道』まで開設させていることからも、その拘りが感じられる。庭園は敷地の高低差を活かして、高台に洗頭瀑と呼ばれる小さな滝から水を流し、順々に澤を作り、その廻りに植栽を配することで、山間を巡っているような庭園を作り出している。




【皆春荘】小田原市指定歴史的風致形成建造物
明治40(1907)年に内閣総理大臣を務めた清浦奎吾が建てた別邸。南隣は古稀庵であり、大正3(1914)年に別庵として編入された歴史を持つ。現在の庭園は古稀庵に編入されてから山縣が作庭したもので、清浦別邸時代の主屋と合わせて時代の変遷を見ることができる。主屋は、座敷棟、玄関、台所棟、離れ棟、納戸棟から構成され、数寄屋造りの特徴もみられるが、玄関扉は当時としては珍しい内開き、床柱には白樺を使用するなど、随所に遊び心や拘りも見て取れる。現在澤は存在しないが、庭園には水を引き込んだ跡がしっかりと残っており、山縣時代の庭の様子も見ることができる。




【三淵邸・甘柑荘】
初代最高裁判所長官であった三淵忠彦が、昭和初期に建てた別邸である。設計は横浜市戸塚区にある旧住友家俣野別邸(横浜市認定歴史的建造物)を手掛けたことでも知られる、佐藤秀三による。日本の伝統的建築に西洋のモダンな趣向を取り入れた和洋折衷の意匠を探求した。甘柑荘の外観も一見数寄屋建築のように見えるが、玄関の土間には丸太が埋め込まれ、外観はどこか山荘のようでもある。甘柑荘は令和6(2024)年のNHK連続テレビ小説『虎に翼』のモデルとなった女性初の裁判所長三淵嘉子所縁の地でもある。


今回紹介した施設の他にも小田原市板橋地区には、旧内野邸や松永記念館等の歴史的建造物も点在しており、歴飯138_ TEA FACTORY 如春園、歴飯159_薬膳喫茶KURA等の拠点もある。今後さらに回遊性が高まっていくことが期待される地区でもあるので、是非一度訪ねていただきたい。
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