相模湾沿いの別荘地、三浦郡葉山町には明治以降の近代別荘に所縁のある老舗が多い。今回紹介する「日影茶屋」もその一つで、茶屋としての歴史は古く凡そ400年近く前に遡る。明治初頭には旅館業を開業(現在は料亭として営業)し、多くの要人や文化人を受け入れてきた。
「日影茶屋」では、以前紹介した[レポート]葉山 日影茶屋「秋の酔ひ~日影おでんと旨い酒」のように、歴史ある建物と料理を味わうことのできるイベントを定期的開催している。「夏の朝がゆ会」もその一つで、毎年8月の日曜日に開催(要予約)されている人気のイベントとなっている。
店内に入ると大広間に案内される。17畳と14畳の座敷を繋げた大空間にゆったりとテーブル席が配置され、いずれの席からも庭を眺められるようになっている。部屋を仕切る鴨居には、採光・通風・換気を目的に2室を繋ぐ「筬欄間(おさらんま)」が設けられている。床の間の床柱には貴重な銘木「黒檀(こくたん)」が使用されており、老舗旅館の風格を今に伝える。
今回のお品書きは、次のとおり。
先付:玉蜀黍の冷やし茶碗蒸し
焼物:葉山産栄螺つぼ焼き
口取:出し巻き玉子
海老みじん粉揚げ
鰻のざく
ミニトマト蜜煮
鳥肉酢味噌がけ
いんげん胡麻和え
煮物:鱸・帆立貝自然薯蒸し
うずみ豆腐粥
香の物
水菓子
茶碗蒸しは玉蜀黍の甘みがあり、ポタージュのような濃厚な味わいだった。豆腐とシラスの入った粥は出汁の効いた薄味で、焼物・口取・煮物の小鉢と良く合っている。最後に白玉と杏子を使った水菓子が提供されて、終了となる。食後に池を配した回遊式の中庭を散策するのも楽しい。
山を背負っていることもあり、夏の日差しが強くなる前の庭には、蓮の花が咲いていた。多くの要人・文化人が愛した葉山の自然や歴史文化を味わいに、是非一度日影茶屋を訪れてみてはいかがだろうか。
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