横浜市庁舎の向い、北仲ブリック&ホワイト一帯は、かつて横浜港から世界に輸出された生糸の品質管理のための施設「生糸検査所」の跡地である。各地で生産された生糸は生糸検査所に集められ、輸出前の検査が行われていた。現在の横浜第二合同庁舎(復元・横浜市認定歴史的建造物)(以降「庁舎」という)の建物は、長年「キーケン」の愛称で親しまれた「生糸検査所」の本館であり、「KITANAKA BRICK NORTH」は、生糸を保管した付属倉庫棟(復元・横浜市認定歴史的建造物)、「KITANAKA BRICK SOUTH」は、付属倉庫事務所棟(旧帝蚕倉庫事務所・横浜市指定有形文化財)である。これら一連の施設は、関東大震災により甚大な被害を受けた生糸貿易を復興するために、震災の3年後にあたる大正15(1926)年に建てられた。設計は、国内の鉄筋コンクリート建築の先駆者であった遠藤於菟(えんどう おと)による。鉄筋コンクリートで造った躯体の外側に仕上げとして煉瓦の飾り柱を用いることで、一見煉瓦造を思わせる外観となっている。庁舎の頂部には、蚕蛾をモチーフとした装飾が付いており、建物の歴史を物語る。
今回の歴飯は、この庁舎内にある「喫茶室」を紹介する。重厚な車寄せの下の自動ドアから庁舎内に入る。職員や庁舎に用事のある来場者用のゲートを正面に、左手に喫茶室の扉が見えてくる。「喫茶」と書かれた内照式サインのガラス戸を開けると、右手にレトロ感溢れるメニューケースと券売機が置かれている。どのメニューも魅力的だが、今回はアイス珈琲とハムサンドを注文した。窓際にはカウンター席、廊下側にボックスシート席があり、大きな縦長窓からは店内に光が射し込み、夕方でも十分に明るい。
ボックスシートに座って暫し店内を眺めていると、サンドイッチが運ばれてきた。ハムにスライスしたキュウリとマヨネーズを合わせたサンドイッチは、シンプルながら食べ応えがあり、美味しい。もっちりしたパンも癖になる。サンドイッチのパンは、横浜市南区永田で創業90年を超える老舗「かもめパン」の食パンを使用しているそうだ。アイス珈琲も深煎りながらすっきりとした味わいで、食事と合わせて丁寧に作り込まれているのが分かる。
庁舎内にあるため、休庁日は開いていないが、平日に近くを通る際は是非立ち寄ってみてはいかがだろうか。
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