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[レポート]~横浜市認定歴史的建造物「旧根岸競馬場一等馬見所」認定記念~館蔵コレクション展示「根岸競馬場と建築家J.H.モーガン」【THE HERITAGE TIMES YOKOHAMA KANAGAWA】

更新日:4月20日


一等馬見所(左)と二等馬見所(右)(横浜開港資料館蔵)
一等馬見所(左)と二等馬見所(右)(横浜開港資料館蔵)

令和7(2025)年4月12日から~横浜市認定歴史的建造物「旧根岸競馬場一等馬見所」認定記念~館蔵コレクション展示「根岸競馬場と建築家J.H.モーガン」が始まった。

令和7(2025)年1月、「旧根岸競馬場一等馬見所」が横浜市認定歴史的建造物に認定された。根岸に競馬場が造られたのは 慶応 2(1866)年のことで、翌年には最初の競馬大会が開催されている。昭和18(1943)年に閉場するまでの76年、年2回春と秋に競馬が行われた。根岸競馬場は日本で最初の洋式競馬場であり、その後、日本各地の競馬場のモデルにもなった。洋式競馬発祥の地。横浜がそう呼ばれるのは、1859年7月1日(安政6年6月2日)の横浜開港がきっかけである。

横浜には外国人居留地が設けられて、西洋文化が入ってくると、洋式競馬や馬具も伝えられる。居留地の外国人たちは運動や娯楽として乗馬や競馬を楽しんだ。そして、常設の競馬場を求める彼らの声を受けて、1866(慶応2)年に幕府によって根岸の丘に競馬場が造られます。しかし、1923(大正12)年9月1日に発生した関東大震災で馬見所(スタンド)が半壊し、新たな馬見所を建設することになった。その設計を手がけたのが、すでに横浜で建築家としていくつもの仕事をしていた J.H.モーガンであった。モーガンによって設計され、建設された馬見所が、現在も残る一等馬見所である。


一等馬見所 正面(横浜開港資料館蔵)
一等馬見所 正面(横浜開港資料館蔵)

横浜開港資料館及び横浜都市発展記念館では、建築家J.H.モーガンの関係資料を所蔵しており、なかでも彼が横浜で設計した作品の設計図面群は、モーガンの設計プロセスを知る上で欠かせない資料であり、そのなかに根岸競馬場も含まれている。

「根岸競馬場一等馬見所」の横浜市認定歴史的建造物への認定を記念して開催するこの館蔵コレクション展示では、当館及び横浜都市発展記念館が所蔵する横浜と競馬場に関する資料、建築家J.H.モーガンの関係資料を展示している。 THE HERITAGE TIMES YOKOHAMA KANAGAWAでは、その様子をレポートする。

なお、本展示の会期(令和7(2025)年4月12日)から写真撮影のルールが変更され、展示室内では開港資料館所蔵資料のみ写真撮影可能となっている。


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展示されているのは横浜開港資料館の2階企画展示室。入口には根岸競馬場一等馬見所と二等馬見所の前にモーガンとたまの夫人が立つコラージュが撮影スポットとして用意されている。展示は「1. 横浜と競馬場の歴史」、「2. 根岸競馬場馬見所の建設と建築家J.H.モーガン」、「3. 現在の根岸競馬場」、「4. 浮世絵に見る外国人の乗馬」、「5. 居留地と競馬場」、「6. 風刺に見る競馬」で構成されている。


  1. 横浜と競馬場の歴史

    「1. 横浜と競馬場の歴史」では、居留地周辺で外国人が乗馬を楽しんでいる状況がわかる資料、「生麦事件」に関する資料、日本最初の洋式競馬場である根岸競馬場に関する資料が展示されており、いかに居留地に住む外国人が娯楽や運動としての乗馬を求めきたか、その要望が根岸競馬場建設へとつながっていったことがわかる。


    スタンド(一等馬見所の建設前)(横浜開港資料館蔵)
    スタンド(一等馬見所の建設前)(横浜開港資料館蔵)
  2. 根岸競馬場馬見所の建設と建築家J.H.モーガン

    「2. 根岸競馬場馬見所の建設と建築家J.H.モーガン」では、馬見所を設計した建築家J.H.モーガンに着目し、J.H.モーガンに関する資料、馬見所建設に関わる資料が展示されている。今回の展示の最大の見どころで、28点にも及ぶ図面や写真などの原資料の展示で、馬見所の建設の様子やJ.H.モーガンと横浜との関係を深く知ることができる。設計図、竣工時の馬見所の様子がわかる写真アルバムはもちろん、J.H.モーガンのパスポートや名刺などの原資料は必見である。


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  3. 現在の根岸競馬場

    「3. 現在の根岸競馬場」では、米軍に接収されゴルフ場になっていた根岸競馬場の様子や令和4(2022)年に撮影された一等馬見所の内部の様子が紹介されている。


    ゴルフ場になった根岸競馬場(五十嵐英壽氏撮影・横浜市都市発展記念館蔵)
    ゴルフ場になった根岸競馬場(五十嵐英壽氏撮影・横浜市都市発展記念館蔵)

  4. 浮世絵に見る外国人の乗馬

    「4. 浮世絵に見る外国人の乗馬」では、西洋人が乗馬する様子を居留地の西洋人たちの姿を描いた浮世絵を展示しており、当時の日本人が、いかに洋式乗馬や洋式馬具に興味を持っていたかがわかるもたれていたことが窺える。


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  5. 居留地と競馬場

    「5. 居留地と競馬場」では、競馬が開催され居留地全体が祭りのように盛り上がっている様子をタウネンド氏旧蔵写真アルバムに所収されている写真や当時の絵葉書で紹介している。


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  6. 風刺に見る競馬」

    「6. 風刺に見る競馬」では、1861年に来日したイギリス人のC.ワーグマンにより1862年から1887年まで発行された、日本で最初の風刺漫画『ジャパン・パンチ』で扱われた競馬に関する記事等を展示。当時、居留地界隈で無類の競馬好きとして知られていたN.P.キングストンの挿絵がかわいい。当時の熱狂ぶりが伝わる展示となっている。


    「横浜秋季競馬会 ディオゲネ[キングドン]ス大いに興奮する!!!」『ジャパン・パンチ(Japan Punch)』1872年10月
    「横浜秋季競馬会 ディオゲネ[キングドン]ス大いに興奮する!!!」『ジャパン・パンチ(Japan Punch)』1872年10月

「横浜と競馬」「J.H.モーガンと横浜」というテーマは、近代の横浜の歴史を知る上で、欠かすことのできないテーマである。

本展示の会期はゴールデンウィークを挟んだ、令和7(2025)年5月11日まで。期間中には一部の資料の展示替えや担当調査研究員による展示解説、関連講演会もあるので、ぜひ見学に訪れていただきたい。


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