[歴飯_191]三崎館本店
- heritagetimes

- 9月22日
- 読了時間: 2分

三崎港の目の前に佇む老舗旅館「三崎館本店」。京浜急行久里浜線の三崎口駅からバスで港へと向かうと、正面に掲げられた名物「鮪のかぶと焼き」の看板と、門をまたぐように大きく掲げられた赤文字の「三崎館本店」の看板が出迎えてくれる。これをくぐって玄関に足を踏み入れると、老舗旅館らしい趣が漂い、宿泊客と同じようにフロントで受付を済ませる流れもまた特別な体験だ。

ロビーには、明治41(1907)年に材木商を営みながら創業した歴史を物語る写真や、宿泊した著名人の写真が並ぶ。さらに、同館が登場する人気ゲーム「トロと休日」のキャラクターまでもが来訪者を出迎えてくれる。こうした展示の数々が、建物の持つ記憶と現代の文化を結び付けている。

今回案内されたのは2階の南側の角部屋。畳敷きの小さな個室ながら、大きな窓からは三崎港やマグロ市場「うらりマルシェ」を一望でき、開放感は抜群だ。部屋には双眼鏡も備え付けられており、港を行き交う船の姿を眺めることもできる。実は窓の下に広がる道路や市場の敷地は、関東大震災で地盤が約1.5メートル隆起し、陸地化した部分を埋め立てて整備された場所であるという。

現在の木造3階建ての建物は震災後の昭和初期に建てられ、増改築を重ねながら複雑に入り組んだ廊下や階段を持つ現在の姿となった。地域のランドマークとしても知られ、港町の景観に欠かせない存在である。

料理はスタンダードな「まぐろ御膳」を選んだ。松花堂弁当箱には、目鉢鮪の刺身、ホホ肉の照焼、尾の身の天麩羅、そして珍しいハツ(心臓)の時雨煮が彩りよく並ぶ。ご飯と味噌汁、お新香が添えられ、鮪をかたどった箸置きが愛らしいアクセントになっている。普段なかなか味わえない部位を堪能できる点も、この店ならではの楽しみだ。

三崎港は昭和40年代、マグロ漁の水揚げで最盛期を迎え、漁師や漁業関係者が連日のように宴会を開き、料亭街は大いに賑わった。しかし今、その名残を伝える店は[歴飯_151]で紹介した「さくらや」など数軒にとどまり、三崎館本店はその代表的な一つである。名物「鮪のかぶと焼き」も、厳しい時代を乗り越えるために漁師飯をヒントに考案されたとされる。

神奈川の水産業の栄枯盛衰を見つめてきた三崎館本店。往時の賑わいを感じさせる老舗旅館で味わう鮪料理は格別だ。海南神社や[歴飯_187]CABA Coffee Beansとあわせて、ぜひ立ち寄っていただきたい。
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