[歴飯_194]オールデイダイニング「1909ユウリンショクドウ」
- heritagetimes

- 1 日前
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横浜の歴史的遺産を再生 有隣堂BASEGATE横浜関内店オールデイダイニング「1909ユウリンショクドウ」が描く都市の文脈
令和8(2026)年3月19日、横浜市中区の旧横浜市庁舎跡地に、大規模複合施設「BASEGATE(ベースゲート)横浜関内」がグランドオープンを迎えた。同施設は、建築家・村野藤吾が設計した旧横浜市庁舎行政棟をリノベーションした「レガシー棟」と、オフィスが集積する33階建ての「タワー棟」を中心に構成されている。戦後モダニズム建築の代表作を保存・活用しつつ、最新のビジネス機能を共存させる試みとして、全国的にも注目を集めるプロジェクトである。

旧市庁舎の構造を継承した「レガシー棟」の構成
レガシー棟は、昭和34(1959)年に竣工した旧庁舎の外観や構造を最大限に維持しつつ、現代の商業・オフィス機能に適合するよう改修された。建物の1階から地階にかけては、大規模なピロティ状の空間「ビクトリーゲート」が東西に貫通し、都市の開放的な動線を確保している。

有隣堂BASEGATE横浜関内店 外観
このビクトリーゲートを境として、建物は南北のブロックに区分けされている。南側のブロックには、明治42(1909)年創業の地元老舗書店・有隣堂が核テナントの一つとして入居した。1階および2階には、同社が得意とする書籍・文具・雑貨の物販に加え、コワーキングスペースエリアが広がり、創業以来の「知」の拠点としての役割を継承している。今回、歴飯で訪れたのは、店舗の地下1階にオープンしたオールデイダイニング「1909ユウリンショクドウ」である。

有隣堂の変遷とYouTubeによる全国的な認知拡大
有隣堂はこれまで、横浜および神奈川県内を中心とするローカルな書店チェーンとして地域に深く根付いてきた。しかし近年、公式YouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」における独自路線の発信により、その認知度は全国区へと急拡大している。
特に番組のMCを務めるキャラクター「R.B.ブッコロー」の歯に衣着せぬ毒舌や、偏愛的な知識を持つ社員・ゲストを紹介する独自のスタイルが幅広い層の支持を獲得した。今回のBASEGATE横浜関内への出店は、こうしたデジタル戦略で培ったファン層を実店舗へと誘致する、同社の新たなリアル拠点としての側面も併せ持っている。

機能美がもたらす地下空間の落ち着き
地下1階の店舗フロアは、村野建築特有の素材感が色濃く残る設計となっている。剥き出しのコンクリート梁や柱が持つ力強さは、かつての庁舎としての機能性を象徴するものだ。装飾を排した無骨なコンクリートの質感が、かえって地下特有の静謐さと室内の落ち着いた雰囲気を作り出しており、梁や柱に施工された鉄骨の耐震補強も相まって、現代の商業空間にはない独特の重厚感を付与している。

「1909ユウリンショクドウ」の店内は大きく二つのエリアに区切られている。一つは、中央にカウンター機能を持つ大テーブルを配したエリア。もう一方は、2人掛け・4人掛けのテーブル席が整然と並ぶエリアである。それぞれのエリアの最奥部にはソファ席が用意されており、利用客の目的に合わせたゾーニングがなされている。

豊かな時間を過ごすディナータイム
取材時、夜間の時間帯ということもあり、一部の食事メニューは完売していた。提供可能なメニューの中から「1909の前菜盛り合わせ」「フライドポテト」「はまポークのソーセージの盛り合わせ」を選択し、飲料とともに注文した。
提供された料理はいずれも見た目も美しく、メニューはスタンダードなものが並んでいるが、それぞれ素材にも工夫があり、味も十分に楽しめた。特に「はまポーク」を用いたソーセージなど、地元横浜の食材を取り入れる工夫は、地域密着型企業である有隣堂の姿勢を反映している。



文化発信の拠点としての展望
同一フロア内には、有隣堂が手がけるクリエイティブ拠点「GRAVIBES(グラバイブス)」が隣接する。同施設はアナログレコードやグラフィックデザインを通じた発信を行い、伝統と現代文化の融合を図っている。さらに、オールデイダイニング1909内には完全予約制の個室「有隣食堂」も併設されており、多様なニーズに対応可能な設備を整えている。

オープン初日、店内では記念のジャズ演奏が行われ、多くの来場者が長居する様子が見受けられた。戦後モダニズム建築というハードウェアに、デジタル時代に対応した老舗企業のソフトウェアが融合したことで、関内エリアに新たな公共的空間が誕生したと言える。

看板メニューを求めて―週末ランチ特別メニュー
前回の夜間の訪問に続き、同店の看板メニューを体験すべく週末のランチタイムに再訪した。正午前の入店であったが、店内はすでに多くの客で席が埋まっており、関内エリアにおける新たな定番スポットとしての浸透ぶりが窺える。
週末限定のランチメニューとして提供されているのは「ふわとろオムライス」である。酸味を抑えた上品な味わいのケチャップライスの上に、バターの香りが際立つ、文字通り「ふわふわ、とろとろ」の卵が贅沢に盛り付けられている。そこに深みのあるデミグラスソースが合わさる構成は、かつて多くの人々が親しんだ「食堂のオムライス」を体現している。

有隣堂は戦後の昭和32(1957)年から平成6(1994)年の期間、有隣堂(現在の伊勢佐木町本店)の地下1階で「喫茶室」を営業していた。外部の喧騒から少し離れた店舗地下の落ち着いた雰囲気は、当時の様子を引き継いでいるように思える。当時の様子を知る者はその思い出とともに、知らない者は新たな体験として、老舗書店とモダニズム建築の巨匠の想いが重なる空間を体感してみてはいかがだろうか。

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