写真提供:開港5都市景観まちづくり会議横浜大会実行委員会
令和6(2024)年11月25日(月)、「開港5都市景観まちづくり会議2024横浜大会」3日目、横浜大会最後のプログラムである「全体会議II」は横浜市役所アトリウムにて、秋山友志氏(開港5都市景観まちづくり会議横浜大会実行委員会副委員長)の司会進行ではじまった。
横浜市役所(8代目)は、横浜関内地区約20か所に分散していた市役所機能を集約し、令和2(2020)年に竣工した地上32階地下2階の超高層ビル。議会棟・行政棟を分節化することで、市政における二元代表制を象徴している。デザイン監修は槇文彦。竹中・西松建設共同企業体が施工した。
写真提供:仙石智義
低層部のアトリウムは、3階まで吹き抜け。晴れた日にはガラス張りの天井や壁から光がそそぐ開放的な空間となっている。市庁舎低層部の活用基本方針(コンセプト)に沿うイベントについて、庁舎管理上の支障が生じない範囲で一般利用も可能となっている。この日も秋の穏やかな光が差し込んでいた。
分科会報告
分科会1「吉田新田から始まった横浜の発展!運河を生かしたまちづくり」
・報告者:河北直治氏(NPO法人HamaBridge濱橋会)
写真提供:仙石智義
「登り窯の見学と、開港場の後背地を支えた新田の歴史を活かしたお三の宮・イセザキで活動をする人々との交流、運河網を船上クルーズで体感した。」
「新たな取り組みと人材確保について、地域の特性の違いはあるが、若返り・多文化共生・参加意識・継続性など課題へのアプローチ事例を共有した。」
分科会2「開港期の横浜商人の街・関内を探り、未来を考える」
・報告者:中川理夫氏(一般社団法人関内まちづくり振興会)
「セントラル関内の街歩き、歴史や新しい動きに関するミニ講義、グリーンスローモビリティの試乗、戦後建築のリノベーション事例のツアーを体験。これらを踏まえて活性化のヒントやまちの未来について意見交換を行った。 」
「周辺で開発が進む状況で歴史ある既成市街地が今後どうあるべきか。新たな住民や事業者が参入する中で幅広いステークホルダーが参画する議論が必要。」
分科会3「ブラ山手~異国情緒の秘訣は”人”にあり~」
・報告者:石垣美由紀氏(NPO法人横浜山手アーカイブス)
「かつて外国人居留地であった山手は、様々な歴史的建造物が残る緑豊かな住宅街。まち歩きを通し歴史資産の実態を当事者の目線を通して学ぶことで、開港5都市の歴史資産のあり方について考えることができた。」
「街歩きの中で、関わる人の熱意、修復技術の積み重ね、多くの活用の仕方、緑が多いことが印象に残った。」
「この街並みを好きと感じることで、街のファンが増え、多様なネットワークで街が創られることが異国情緒が守られる秘訣なのではないか。」
分科会4「大規模災害に負けない!開港5都市だからできる連携の未来を考える」
報告者:角野渉氏(NPO法人HamaBridge濱橋会副理事)
写真提供:仙石智義
「各都市のプレゼンにより効果的な防災の取組を共有した。」「ボードゲームやワークショップを行い和やかな雰囲気の中、いずれかの都市が被災した時にどのような支援ができるかなどについて意見交換ができた。」
分科会5 「鎌倉時代から続く横浜金沢の景観まちづくりと郊外観光の可能性」
報告者:船本由佳氏(ヘリテイジタイムズ横浜・神奈川)
「市内の中心部から30分ほど電車で南下した金沢エリアは鎌倉時代から続く海辺の景勝地であった。各地に点在する歴史的景観を訪ねて、郊外観光の可能性について意見交換した。」
「今後は『暮らしを見る』『暮らしを知る』という視点も大切で、それこそ、サスティナブルツーリズムを成立させるものではないかという意見も出された。」
オプショナル企画報告
オプショナル企画1「よこはま酒楽祭 with 開港5都市」
・報告者:佐藤元氏(アクティブお三の宮エリア)
「例年、豊穣祭として新酒を味わう企画に今回特別に開港5都市関係者枠を設け、泉橋酒造の橋場友一氏による酒造りの話、濱橋会歴史部会の河北直治氏より横浜発展の礎である吉田新田の歴史を聞き、地元の新酒と選りすぐりのお酒を楽しんだ。」
オプショナル企画2「FGショートプレゼン大会」
・報告者:船本由佳氏(ヘリテイジタイムズ横浜・神奈川)
写真提供:仙石智義
「各都市からのショートプレゼン大会を開催した。」
「かつてのFG(Future Generation)も、年を取り、フューチャーを名乗るにはベテラン感が出てきてしまったと実感がある中、FGという呼称に沿って、さらに次世代のNG(Next Generation)、FGを卒業したMG(Middle-age Generation)などの呼び方も乱れ飛び、FGで満足せず、さらに進化を続けていくことの大切さを感じた2時間であった。」
オプショナル企画3「開港の町横濱で出来たてビールと工場夜景を楽しむ魅惑のディナー&クルーズ
・報告者:久継太郎氏(UDC-SEA withはまみらいプロジェクト)
「ビール発祥の地山手に由来を持つキリンビールで出来立てのビールを楽しんでもらった。」
「今回は交流を目的として、特にアトラクションを用意しなかった。」
「開港5都市なのだからやはり海のアトラクションは一つはいると思い企画した。皆さんに楽しんでいただけたのでは。」
オプショナル企画番外編「関内外地区におけるグリスロの観光活用について」
報告者:秋山友志氏(横浜商科大学)
「分科会1・2で活用された『グリーンスローモビリティ(グリスロ)」の試乗会とグリスロの観光活用ワークショップを観光まちづくりを学ぶ学生たちと実施した」
代表者会議報告
報告者:鈴木淳氏(横浜市都市整備局都市デザイン室担当係長)
「大会宣言の採択と次回開催都市の決定を行い、来年度の開催都市は神戸に決定した。」
大会宣言
報告者:山本博士氏(開港5都市景観まちづくり会議横浜大会実行委員会委員長)
写真提供:仙石智義
開港5都市景観まちづくり会議2024横浜大会
大会宣言
令和を迎えた前回の横浜大会から激動の時代を一巡するなかで、景観まちづくりにおける、まちの景観や人々の営みの根本を改めて問いただされた。対面プログラムが大きく制限されながらも、オンラインを活用し成功に導いた神戸大会から、続く長崎大会、新潟大会、函館大会と、FGの大きな活躍も追い風となり、大会がスケールアップしただけでなく、開港5都市のつながりそのものへのアプローチが多様化した。
本大会は、この4年の新たな歩みを更に進めるため、「みらいへの架け橋〜時代の積層で輝くまちとひと〜」をテーマに開催した。
全体会議Ⅰでは、「あぶない刑事からみる横浜の都市景観」というテーマで映画プロデューサー近藤正岳氏の基調講演が行われ、変化する横浜とともに歩んできた作品と5都市のつながりや、作品による様々な都市景観へのアプローチを学んだ。
パネルディスカッションでは、都市景観を形成する歴史文化とのタッチポイントづくりに関する5都市の多様な取組が紹介され、歴史文化を広く知ってもらい、時代に合った形で継承するための工夫を学びあった。
分科会では、2023函館大会のテーマにあった、対話を大切な要素として取り入れた。横浜の発展の礎となった吉田新田と登り窯や運河の新しい取組、変化するオールドアンドニューの関内、異国情緒の秘訣に迫った山手、5都市で連携して考えた防災、古き良き魅力を増していく金沢といった、密度の高い5つのテーマについて熱く語り合った。
オプショナル企画は前夜祭のよこはま酒楽祭に始まり、FGショートプレゼン大会、ディナー&クルーズを行った。互いの都市や活動を称え、開港5都市の絆を深めた。
この大会で実現した、景観まちづくりの対話の場を継続し、開港5都市の交流の積層を重ね、今後大きな困難に直面した際も固い絆で共に支え合い、みらいへの架け橋を繋いでいくことをここに宣言する。
2024年11月25日
開港5都市景観まちづくり会議2024横浜大会
参加者一同
大会旗引継
横浜大会の実行委員会、山本博士氏、実行委員会顧問の国吉直行氏(開港5都市景観まちづくり会議横浜大会実行委員会顧問)から曹英生氏(南京町景観形成協議会常任委員)、岡本智佳子氏(神戸市都市局政策課)に大会旗が引き継がれた。
次回開催都市あいさつ
曹英生氏(南京町景観形成協議会常任委員)
写真提供:仙石智義
「今朝、山本氏に『来年、神戸牛楽しみにしています。』と言われ、お酒を飲み過ぎて調子の良い約束をしてしまったのかと思った。」「横浜大会も行政と市民団体が一致団結していて素晴らしかった。この会を継続していくと良いと思った。」「前回の神戸大会を開催した5年前から、神戸の街も色々整備が進んでいる。」「来年の神戸大会は11月29日から3日間開催予定。偶然にも11/29イイニクの日なので是非お越しいただきたい。」
主催者挨拶
宮川眞壽美氏(開港5都市景観まちづくり会議横浜大会実行委員会顧問)
写真提供:仙石智義
「大会を盛り上げていただき各都市の参加者に感謝している」「天候にも恵まれた。どうぞお気をつけてお帰りください。」と大会を締め括った。
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※ THE HERITAGE TIMES YOKOHAMA KANAGAWAは「開港5都市景観まちづくり会議横浜大会実行委員会の構成団体として参画している。
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