[レポート]お城EXPO2025【パシフィコ横浜ノース】
- heritagetimes

- 1 日前
- 読了時間: 9分

お城EXPO 10周年
令和7(2025)年12月20日(土)から開催された「お城 EXPO 2025」をレポートする(12月21日(日)まで)。
「お城 EXPO 」は、平成28(2016)年12月にパシフィコ横浜会議センターで初開催以降、城郭文化の振興と発展やお城好きの方々との交流を目的に毎年横浜で開催され、今回で10回目。前回の「お城EXPO 2024」は、約2万人の来城(来場)者があった国内最大の城関連イベントである。

会場はパシフィコ横浜ノース(一部パシフィコ横浜アネックスを使用)。パシフィコ横浜ノースは令和2(2020)年4月、「パシフィコ横浜展示ホール」と「ザ・カハラ・ホテル&リゾート横浜」の間にオープンした約6,300㎡の多目的ホールと大中小42室の会議室からなる国内最大規模のMICE施設。その大きな会場をフル活用する形で、1階展示ホールのほか、2階から4階までぎっしり特別な展示やプログラムが展開されている。あいにくの雨であったにもかかわらず開城時間には多くの人が詰めかけ待機列ができた。入城に20分程度かかり、いざ「参城」。

1階展示ホールには城郭の関連団体が情報発信のためのブースを出展している「城めぐり観光情報ゾーン」、イベントステージ、公式お城グッズ売場などがある。このゾーンでは91の自治体、38の企業・団体の計129の出展者がリストに名を連ねた。その中から神奈川県内から出展しているブースの紹介をする。
062 伊勢原市
神奈川県伊勢原市の市域北東にある丸山城址(丸山城址公園)における発掘調査の成果がパネルで紹介されている。丸山城はかつて鎌倉時代には幕府とのつながりも深い御家人である糟屋藤太有季の居館、また室町時代には上杉定正の館として使用されていたと伝えられている。

過去に実施された発掘調査では、周囲を囲む形で深さ6mを超す堀や土塁等の遺構が確認されている。パネル展示のほか、御城印の販売、「ウズマキかわらけ」の現物展示も見られる。丸山城址は現地に行くと、城址としての痕跡を見つけることは難しいが、それでも行きたくなる諏訪間伸氏(伊勢原市教育委員会専門員)の丁寧な解説が嬉しい。

084 歴xトキ 山城ガールむつみ・085 横須賀市/横須賀市観光協会
二つ並んだブースで、2団体が連携して三浦一族関連の展示・販売を行なっていた。
源頼朝の旗揚げを助け、共に鎌倉時代の幕を開いた三浦一族。その後、三浦義澄、三浦義村、和田義盛、佐原義連といった一族が幕府で重用され、中世を代表する武家へと発展した。その活躍は青森から九州まで、全国に広がり、鎌倉時代から戦国時代、さらには江戸時代まで生き抜く名族となった。

横須賀市にかつてあった衣笠城は平安時代から鎌倉時代にかけて三浦半島に勢力を張った「三浦一族」の本城で、康平年間(1058年~1064年)三浦為通によって築城されたといわれている。治承4年(1180年)8月、源頼朝の旗揚げに呼応して、この城に平家側の大軍を迎えての攻防戦は、いわゆる衣笠合戦として名高い。「横須賀市/横須賀市観光協会」ブースではこの衣笠城のジオラマと源平合戦図屏風(複製)が展示されていた。

「歴xトキ 山城ガールむつみ」ブースでは、三浦一族ゆかりの城の紹介のほか、山城ガールむつみ氏のプロデュースによる御城印がずらりと並べられて販売されていた。
山城ガールむつみ氏(歴史&山城ナビゲーター・三浦一族研究会副会長)はセミナーが行われるサロンでも「三浦一族の城~伊勢宗瑞来襲!~」と題し、三浦一族が滅亡するまでの流れと、最後の城となった新井城について解説した。
086 津久井城 - 関東屈指の山城500周年 - / 相模原市
「津久井城 - 関東屈指の山城500周年 - / 相模原市」のブースでは、津久井城跡の市民協働発掘調査の内容、城主を務めた内藤大和入道を紹介するパネル、出土品の展示のほか、津久井城ブランド品、津久井湖城山公園ガイドブック「津久井城ものがたり」、御城印の販売が行われていた。

津久井城は戦国時代に小田原北条氏に仕えた内藤氏が城主を務めた山城で、天正 18(1590)年、豊臣秀吉による小田原攻めに伴い落城し、江戸時代初頭には麓に陣屋が置かれた。現在は津久井湖城山公園(相模原市緑区)内にその遺構が眠っている。津久井城の呼称がはじめて歴史に登場したのは、今から 500 年前にあたる、1525 年(大永 5 年)のこと。古文書『妙法寺記』には「未だ津久井の城落ちず」と甲斐の武田勢に攻められるも守り抜いた津久井城の記載がある。また、平成22(2010)年度から進められている市民協働調査。その調査内容の一部も知ることができる。

087 小田原城・石垣山城・北条五代観光推進協議会
「北条五代観光推進協議会」は北条氏にゆかりのある14市町(岡山県井原市、大阪府大阪狭山市、静岡県沼津市、三島市、伊豆市、伊豆の国市、神奈川県横浜市、相模原市、鎌倉市、小田原市、箱根町、東京都八王子市、埼玉県川越市、寄居町)の行政及び観光協会が連携し、北条氏の様々な偉業や魅力を活用した観光事業を展開し、北条氏ゆかりの地として歴史や文化を広く全国に紹介し、地域の活性化を図ることを目的として結成された団体である。ブースでは『北条五代』を大河ドラマに!」と銘打った「北条五代」を題材としたNHK大河ドラマを誘致するための署名も例年通り行われていた。

また、「小田原城」「石垣山城」の御城印、北条五代武将の武将印・ステッカー、トートバックなど豊富なグッズが販売のほか、実際に小田原城に使用されているものと同じ瓦の展示も行われていた。

城報ラウンジプラス「小机城X横浜X 北条幻庵 体験して、楽しんで、楽しめる。小机城の魅力を一度に味わえるコーナー」
昨年、城めぐり観光案内ゾーンに出展していた「公益財団法人横浜市ふるさと歴史財団」は埋蔵文化センターとして、横浜市港北区地域振興課、横浜市歴史博物館、株式会社パスコ小机城プロジェクト、神奈川大学国際日本学部とともに「城報ラウンジプラス」で小机城をテーマとしたコーナーを構成している。

最初のコーナーでは、現在、横浜市歴史博物館で開催中の企画展示「北条幻庵 ー横浜・小机城と関東の戦国ー」のPRや図録販売、「小机城」、「榎下城」、「寺尾城」、「茅ヶ崎城」の御城印、「横浜城郭図~中世~」の販売、小机城跡で発掘された遺物などが展示されていた。

次のコーナーでは、小机小学校の生徒が総合的な学習の時間で取り組んだ「城熱プロジェクト」の内容が紹介されていた。生徒たちが作成した小机城を紹介するリーフレットのバリエーションに圧倒される。

次のコーナーは株式会社パスコが中心となり、横浜市内の城をプロットした大型の床面航空写真、小机城址の発掘調査でも活躍した高性能測量機器の展示、昨年に続いて小机城を体感できるVR体験、小机城の堀切を再現したフォトスポットなど充実した内容となっていた。
ここでは今年からパスコ城跡調査イメージキャラクター「しろあとくん」が初登城。今後の展開に注目が集まる。

また、午後2時からは、実際に小机城の発掘調査を担当した近藤匡樹氏(横浜市教育委員会)による「発掘調査からみる小机城 今和3・4年度調査」の解説があり、多くの人が聴いていた。

日本100名城&続日本100名城パネル展
全国の名城を紹介する200枚のパネルが並ぶ様子は毎年圧巻。じっくり見ているとあっという間に時間が過ぎる。今年は韓国の城、ヨーロッパの名城の紹介パネルも並んでスケールアップしていた。神奈川県内の「日本100名城」は「小田原城」1か所、「続日本100名城」は「小机城」「石垣山城」の2か所の計3か所が選出されている。

城の自由研究コンテスト 優秀作品展 横浜市内の中学生が2年連続入賞!
毎年夏にお城をテーマにした自由研究を募集している「城の自由研究コンテスト」。第24回目となる今回の応募作品の中から受賞作品が展示されていた。
神奈川県内からは、昨年、「先祖は豊後武士!?~岡城誕生は文治元年か、元暦元年か~」で優秀賞を受賞した横浜市立本牧中学校3年の市毛愛理氏が「岡城と豊前五城はなぜ築かれた?~緒方三郎惟栄の真の意図~」でワン・パブリッシング賞を受賞し、2年連続の入賞となった。

お城EXPO十周年ヒストリールーム
日本最大のお城の祭典 お城EXPOの十年間の軌跡。過去10回のポスターパネルの展示とお城EXPOの歴史を思い出の写真とともに振り返る映像が流されている。来城者は「この時から来始めたんだった。」や「この時の展示がユニークで面白かった」など思い出を語り合っていた。映像ではお城EXPO開催の発端となったエピソードの紹介も。

回 | 名称(開場) | 会期 | メインビジュアル | 来城者数 | 出展者数 |
第1回 | お城EXPO2016(パシフィコ横浜会議センター) | 2016年12月23日. - 25日(3日間) | 攻める、守る、魅せる。 | 18,825人 | 29団体 |
第2回 | お城EXPO2017(パシフィコ横浜会議センター) | 2017年12月22日 - 24日(3日間) | 再び参城。 | 19,115人 | 59団体 |
第3回 | お城EXPO2018(パシフィコ横浜会議センター) | 2018年12月22日 - 24日(3日間) | 今年も参城。 | 20,170人 | 62団体 |
第4回 | お城EXPO2019(パシフィコ横浜会議センター) | 2019年12月20日(前夜祭)+21日・22日(2日間) | 令和も参城。 | 17,536人 | 73団体 |
第5回 | お城EXPO2020(パシフィコ横浜ノース) | 2020年12月18日(前夜祭)+19日・20日(2日間) | いざ、参城。 | 9,189人 | 49団体 |
第6回 | お城EXPO2021(パシフィコ横浜ノース) | 2021年12月17日(前夜祭)+18日・19日(2日間) | 城熱の祭典。 | 13,624人 | 64団体 |
第7回 | お城EXPO2022(パシフィコ横浜ノース) | 2022年12月16日(前夜祭)+17日・18日(2日間) | 城熱沸騰。 | 15,487人 | 99団体 |
第8回 | お城EXPO2023(パシフィコ横浜ノース) | 2023年12月16日・17日(2日間) | 城熱満載。 | 18,088人 | 98団体 |
第9回 | お城EXPO2024(パフィコ横浜ノース) | 2024年12月21日・22日(2日間) | 城熱の日。 | 20,754人 | 114団体 |
第10回 | お城EXPO2025(パシフィコ横浜ノース) | 2025年12月20日・21日(2日間) | 城熱、十周年。 |
休憩処 / 弁当軽食販売処
ノース隣のパシフィコ横浜アネックスホール2階には「休憩処」「弁当 / 軽食販売処」が用意されていた。昼食時の休憩処では多くの入城者で賑わっていた。

「弁当 / 軽食販売処」では、お城EXPO限定メニューとしてお城EXPOのメインビジュアルを掛け紙に施しているお馴染みの「お城EXPO2025特製炒飯弁当(崎陽軒)」やお城EXPO10周年のロゴ入り包み紙の「特製中華まん(江戸清)」、「チョコ兜ケーキ(ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル)」、「上海五目もち米焼売(馬さんの店龍仙)」、「兜ドーナツ(UNI COFFEE ROASTERY)」、「特製幕之内御膳(JR東海リテイリング・プラス)」などが販売されていた。

ますます暑くなる城熱!
今回も神奈川県内の城情報に焦点を当ててダイジェストで紹介したが、お城EXPOの魅力は、全国から集まった城関連のブースやプログラムであり、十分まる一日楽しめる内容である。また、全国の城情報に触れることで、まるで日本全国を旅をした気分も味わえ、また各地の「歴史を生かしたまちづくり」の取組みを知ることもできる貴重なイベントであるといえる。今後もこのイベントが横浜で開催されることを願う。

![[記者発表]市認定歴史的建造物 霞橋(西区)の灯具を復元!~12月23日(火曜日)に点灯式を開催します~【横浜市】](https://static.wixstatic.com/media/36bc9a_39f9b8e651034ec9ae5772ef78b80f64~mv2.png/v1/fill/w_810,h_643,al_c,q_90,enc_avif,quality_auto/36bc9a_39f9b8e651034ec9ae5772ef78b80f64~mv2.png)
![[開港5都市]景観まちづくり会議2025神戸大会 - 07 第3分科会 「『”あの日”を歩き、“あす”を描く』-記憶と景観で考える防災まちづくり -」【THE HERITAGE TIMES YOKOHAMA KANAGAWA】](https://static.wixstatic.com/media/36bc9a_48d6a3c58a4043948e14aeaa640b207d~mv2.jpg/v1/fill/w_980,h_736,al_c,q_85,usm_0.66_1.00_0.01,enc_avif,quality_auto/36bc9a_48d6a3c58a4043948e14aeaa640b207d~mv2.jpg)
![[レポート]山城ガールむつみ「三浦一族ゆかりの城 〜伊勢宗瑞の来襲!〜」【お城EXPO2025】](https://static.wixstatic.com/media/36bc9a_464c28af705140a68cc4c0ffdda4706f~mv2.jpeg/v1/fill/w_980,h_653,al_c,q_85,usm_0.66_1.00_0.01,enc_avif,quality_auto/36bc9a_464c28af705140a68cc4c0ffdda4706f~mv2.jpeg)
コメント