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[コラム]関東大震災100年 | 03 - 歴史的建造物の防災 - 旧円通寺客殿 - ぼうさいこくたい2023連携企画【THE HERITAGE TIMES YOKOHAMA KANAGAWA

更新日:2023年8月26日



令和元(2019)年、工学院大学は、能美防災株式会社と産学共同で、茅葺き屋根など伝統的建造物における発災時の延焼防止・燃焼抑制効果を持つ「高粘度液体」を用いた新たな消防技術を開発したと発表した。この技術は、茅葺き屋根などの伝統的建造物に対して付着性の高い「高粘度液体」を用いることで延焼防止・燃焼抑制効果を発揮するもの。

「高粘度液体」とは水に無機物を分散させた粘度の高い液体で、燃焼している表面部分はもちろん、付着時に空気の進入を遮断するため内部への火の燃え広がりを抑制する効果が期待できる。この液体は水での洗浄も容易で建造物への跡残りもほとんど見られず、水と無機物から成るため環境への負荷もない。また、茅葺き屋根の延焼防止・燃焼抑制には大量の水が必要だが、「高粘度液体」は水に比べて流れ落ちにくいため散布量が少なく済み、水源の節約が可能となる。この技術を利用した可搬型装置のプロトタイプが寄贈され、実装されたのが「金沢八景権化山公園」である。



「金沢八景権現山公園」は横浜市金沢区の京浜急行金沢八景駅の西側線路沿いに、令和4(2022)年4月1日に風致公園として開園した。明治維新後に廃寺となった円通寺の境内に位置しており、江戸時代に建てられた「旧円通寺客殿(旧木村家住宅主屋)」を保存・活用している。「旧円通寺客殿(旧木村家住宅主屋)」は元々民間所有の歴史的建造物として横浜市の「歴史を生かしたまちづくり要綱」に基づき認定されていたが、今回の敷地が公園要地として横浜市が取得し、公園施設として改めて保全・活用されることとなった。



保全・活用にあたり公園整備の都合等から建物は一旦解体し再築することとなった。しかし、再築にあたり建築基準法第 63 条「屋根」の構造に関する規定に適合させようすると、歴史的建造物として保全すべき茅葺屋根や板張りの庇を再現できなくなるため、代替措置として「自動首振放水銃、炎検知設備を設置」「消火用エンジンポンプや地下貯水槽を別棟の新築棟に設置」することとし、平成25(2013)年に新設された「特定景観形成歴史的建造物制度」の第一号案件として指定、さらに建築審査会の同意を受けた上で、建築基準法が適用除外とされている(法第3条第1項第3号)。



 
旧円通寺客殿(旧木村家住宅主屋)

旧円通寺客殿は、江戸時代後期に建てられた茅葺屋根をもつ歴史的建造物。その裏山とが織り成す景観は、金沢八景駅のホームから直接眺められ、当地の特徴ある景観として市民に親しまれている。また、それらの景観は往時の金沢八景の情景を現代に伝えるものであり、地域の歴史、風土を知る上で貴重な遺構となっている。


・所 在 地: 横浜市金沢区瀬戸 20 番3号

・種   類:古民家

・設計・施工:不詳

・構造・規模:木造平屋建 寄棟造 茅葺き

       桁行5.5間 梁間5.5間 / 妻側に 2.5 間×2.0 間式台付

・ 建 築 年:江戸時代後期

・指定・認定 :特定景観形成歴史的建造物・横浜市認定歴史的建造物


 

関東大震災では旧横浜市内の人的被害が震災後に発生した大火災による消失地域に集中していることからも、地震への備えは、いわゆる構造的な耐震性の確保と同様に火災に対する備えが重要であることは明らかである。

さらに「旧円通寺客殿(旧木村家住宅主屋)」のように木造しかも茅葺き屋根、駅前の公園という立地を考えれば建築基準法やその代替措置だけではなく、管理者・自主防災組織による初期的な活動が求められることからも、今後ともこの歴史的建造物に寄贈された新たな施設の運用に注目したい。



この特集については、9/17-18横浜国立大学を会場に開催される「ぼうさいこくたい2023」にポスター出展する予定。(コラムタイトルは仮題)




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