江ノ島電鉄由比ガ浜駅を降り、長谷寺へと続く由比ガ浜通りに出る。この一帯は、鎌倉文学館(旧前田侯爵別邸 鎌倉市指定景観重要建築物等)、のり真安齋商(鎌倉市指定景観重要建築物等)をはじめ、これまで度々歴飯シリーズでも取り上げてきた歴史的建造物が集積するエリアでもある。今回の歴飯は、令和6(2024)年6月にオープンしたばかりの「鎌倉 北橋 (カフェ)」を訪ねた。
由比ガ浜通りから鎌倉最古とも言われている「甘縄神明社」の参道に沿って歩いていくと、一際目を惹く洋館が見えてくる。今回紹介する「鎌倉 北橋」は、鎌倉市の景観重要建築物等にも指定されている旧加賀谷邸を改装してオープンした。建物は、かつて生活の中心となっていた和館に書斎や応接室といった外向きの利用を中心とした洋館が付く、いわゆる「洋館付き住宅」と呼ばれる住宅タイプである。スタジオジブリの映画『となりのトトロ』に登場する「サツキとメイの家」をイメージすると分かりやすいかもしれない。正確な建設時期は不明だが、大正期の建築とされている。周辺のシンボル的な存在にもなっている凡そ2層分の高さを持つ洋館は、スレート葺きの屋根材と屋根上に付く擬宝珠の装飾等が、明治41(1908)年にこの地に建てられた福島浪蔵邸(旧諸戸邸、現:鎌倉市長谷子ども会館 鎌倉市指定景観重要建築物等)に似ており、少なからず影響を受けていたと思われる。
同店は、洋館部分をカフェに、和館部分は蕎麦屋として、それぞれ入り口を分けて営業している。今回はカフェについて紹介する。庭側から廻り、木製庇の付いた玄関をくぐる。内部は変則6角形の平面構成となっており、正面やや右奥がカフェカウンター、その脇に建設当時のものと思われるマントルピースが遺っている。天井の木製メダリオンからはシャンデリアが下がり、優しい光を放っている。天井高があるため、店内は開放的な空間となっている。カウンターで注文を済ませ、席に着く。同店では、蕎麦粉のスイーツも提供しており、この日は蕎麦粉のカップケーキだった。ケーキの上に乗せられた蕎麦の実がアクセントとなっている。合わせて注文したカフェラテのほろ苦さとも相性が良く、良い時間を過ごすことができた。カフェのメニューは今後も増えていきそうなので、次回は蕎麦と合わせて堪能してみたい。
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