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[開港5都市]景観まちづくり会議2022新潟大会 - 08 分科会4「食・町・文化をワイワイ巡る湊町新潟古町の新旧よいとこ探訪」【THE HERITAGE TIMES YOKOHAMA KANAG-

更新日:2022年11月13日


令和4(2022)年9月24日(土)、「開港5都市景観まちづくり会議2022新潟大会」2日目の朝は、5の分科会に分かれるエクスカーションで始まる。

THE HERITAGE TIMES YOKOHAMA KANAGAWAは、分科会1 「開港場新潟の底力-米・人・学問-」、分科会2「過去と未来が醸すまち」、分科会3「新潟市民も知らない湊新潟のディープ下町隠れた歴史巡り~全国有数の遊郭街跡と廻船問屋街を歩く〜」、分科会4「食・町・文化をワイワイ巡る湊町新潟古町の新旧よいとこ探訪」、分科会5「水辺景観を活かしたにぎわい空間を創出する都市未来像~国際MICE CITYを目指して〜」の全ての分科会に参加した。


分科会4のテーマは「食・町・文化をワイワイ巡る湊町新潟古町の新旧よいとこ探訪」。歩き食べ飲み話を聞いて、湊町新潟の中心地である古町の新旧を巡り、新潟の様々な チャレンジし、旧き良きを新しくする取組を共有する内容となっている。



<新潟大会分科会4参加者>

 分科会4には各都市から15人が参加した。企画した新潟メンバーは3人。まちづくりイベントの運営にもたずさわりプライベートの立場で参加する新潟市職員の渡邉秀太氏(新潟市こども未来部保育課)、古町商店街の空き店舗対策でアート制作を行うアート集団手部部長の手部じゅん氏と球根育成のために捨てられるチューリップの花を使い巨大花絵を制作する「にいがた花絵プロジェクト実行委員会」の関京子氏。加えて当日は「にいがた花絵プロジェクト」メンバーであり新潟大会実行委員会副委員長の上杉知之氏が参加して街並みや歴史についての解説を行った。



<喫茶エトアール・プリュス(モーニング朝食)>

 分科会4は朝ごはんから始まった。「エトアール プリュス」は、古町で長年愛された「カフェ・ド・エトアール」の味と雰囲気を引き継ぐ喫茶店。昭和51(1976)年創業の古町の老舗喫茶店の代表格であった「カフェ・ド・エトアール」が平成30(2018)年に一時閉店した後、古町の人たちの閉店を惜しむ声を受けて翌年春に「エトアール プリュス」として復活。現在は旧店舗時代から勤めていた枝並氏がお店を切り盛りしている。


ハムタマゴチーズトーストはカリッとトーストされた分厚い食パンにチーズ、ハム、薄切りゆでたまごが乗り、食べやすいよう6カットされている。ボリューム満点。


ピザトースト・ナポリタン・フルーツヨーグルトにドリンク(紅茶かコーヒー)がつくデイリーセット(880円)が人気だ。分科会では、モーニングセット(ベーコンエッグトースト、ミックスサンド、ハムタマゴチーズトースト、ホットケーキ・ヨーグルト付き)の4種から参加者それぞれが選択し、味わった。


<市民活動支援センター NCCT(ニコット)>

 新潟市市民活動支援センターは、営利を目的とせず、不特定多数の者の利益の増進に寄与するために行うさまざまな分野の市民公益活動を支援するため 、新潟市が平成16(2004)年に設置された。

ここの会議室で改めて参加者の自己紹介の後、企画メンバー手製のパンプレットを用いて分科会4のルートと内容が説明された。パンフレットには昔の街並みの写真とその撮影ポイントをルート上に示し、まちの移り変わりを感じながらのまち歩きスタートとなった。


<上古町の百年長屋SAN>

 上古町商店街にある「上古町の百年長屋SAN」。 ここは、築100年の古民家をリノベーションし、令和3(2021)年12月にオープンしたちいさな複合施設だ。あられと砂糖を使ったお湯に浮く新潟の伝統菓子「浮き星」を楽しめる喫茶、ポップアップや展示・企画を行う「文化商店 踊り場」、フラワーショップ「candy by kandy」、新潟食材研究所「ティオペペ」、デザイン事務所「hickory03travelers」が入居する。



 大きな梁が特徴的な2階カフェスペースで金澤李花子氏(上古町の百年長屋SAN副館長)が施設の説明を行った。東京で編集の仕事についていた金澤氏は、地元を離れ10年経って戻ってきたときに「古町をもっとワクワクするためには人が物理的に集まれる場所が必要だ」と感じ、「あったらいいな」をイラストにし、配ったのが令和2(2020)年12月のこと。そのイラストが上古町商店街で20年雑貨店の運営とデザイン業務をおこなっているhickory03 travelers(ヒッコリースリートラベラーズ・合同会社アレコレ)の代表で同施設館長の迫一成氏の目に留まり、SANの推進役として金澤氏に声がかかった。


SAN副館長の金澤氏


そこから1年でのスピードオープンに金澤氏自身も「5年ほどかけて取り組むイメージを持っていたが急展開で驚いた。まずはゆっくりと楽しみながら取り組んでいきたい」と話していた。施設名の「SAN」は、明るい太陽(SUN)から転じて、古町三番街・3つのステージ(1階、2階、奥庭)・三方よし・参道・参加する・企画運営するhickory03 travelersから音と意味をとり名づけた。


SANの2階。ここは普段カフェで買ったものが食べられるスペース。隣には小上がりがあってそこは家族連れに人気


<日本酒試飲タイム 錦屋酒店>

参加者一行は昼食会場の港すしに到着。昼食の前に昭和26(1951)年創業の錦屋酒店から今大会のテーマ「温故知新」に従って、旧き「よき酒」、新しき「よき酒」、こんな「よき酒」として日本酒3種の提供があり、飲み比べを行った。旧き「よき酒」として紹介された長岡市朝日酒造の久保田萬壽は今から30年以上前にリリースされた新潟清酒の代表であり飲み飽きしない淡麗辛口。新しき「よき酒」として紹介された佐渡市天領盃酒造の雅楽代(うたしろ)は、後継者不在だった酒蔵が珍しい個人による企業買収(M&A)で20代の若い蔵元が就任し立ち上げた新ブランド。こんな「よき酒」として紹介された妙高市鮎正宗酒造の鮎たかねは蔵内の湧水仕立てで上越地方のお酒としては甘く柔らかいのが特徴。利き酒では、まず酒の名前を隠したまま味わい、参加者同士で酒の好みを語り合った。


お店をついで10年という加藤氏


錦屋酒店の加藤裕子氏は新潟生まれの新潟育ち。小学校の教員として働いていた頃、上越や佐渡など新潟県内各地で勤務し、教え子たちに新潟の良さを伝えている中で「酒どころ新潟をもっとアピールしたい」と思うようになり実家の酒屋を継ぐことを決意した。「お酒とともに新潟のいいところをPRしています」と加藤氏。参加者たちは加藤氏が出すにいがた清酒クイズを楽しみながら清酒について学んだ。


利き酒の時間。手前は港すし提供の肴


<港すし(昼食)>

 港すしは、昭和8(1933)年に西堀通りの堀端の屋台から創業し、昭和11(1936)年には、現在の古町9番町で店をかまえ、3代に渡り暖簾を守っている老舗寿司店。3代目の川上伸一氏はNPO法人堀割再生まちづくり新潟の代表理事でもある。錦屋酒店の利き酒は港すしの2階個室で行われており、引き続き昼食の時間となり、新潟名物の南蛮エビやアラや新物のいくらなどの寿司に参加者たちは舌鼓を打った。


昼食の寿司


川上氏は「新潟は上方の文化が入っているのでいなり寿司も食べられる。いなり寿司の中にはくるみが入ったものもある」などと新潟の食文化について触れ「最近ブリが一番取れるのは北海道」と語り、函館参加者とブリの話で盛り上がった。

寿司の味が格別だったことはもちろんだが、利き酒の肴として提供された卵焼きと干瓢も美味しかった。


昼食の様子。右側で席を案内しているのが川上氏


<地酒防衛軍 吉川酒店>

 古町のはずれ、こんぴら通り商店街にある「地酒防衛軍吉川酒店」は創業120年を超える老舗の酒屋。店主をモデルにしたイラストと地酒防衛軍の文字とエンブレムがプリントされた赤い旗がよく目立つ外観だ。地酒防衛軍という名前は、隊長(店主の吉川章大氏)がウルトラセブン好きであるということと、新潟の地酒を守りたいという思いから名付けられたそう。この日は蔵元頸城酒造から「世界の小松(吉川氏の命名)」と呼ばれ、その名がオリジナルラベルにもなっている小松氏が来店しており、参加者は小松さん直々に説明を受けながら頸城酒造の「越路乃紅梅」の試飲を体験した。中でも秋限定販売の「秋刀魚と呑む越路乃紅梅」のなかでも無濾過純米原酒やその火入れ前の生酒などが紹介され、違いを味わった。


地酒防衛軍吉川酒店外観


新潟県の酒イベントとして絶大な人気を誇る「にいがた酒の陣」は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2020年、2021年と開催されていなかったが今年は感染対策を講じて新しいスタイルで10月8日(土)9日(日)に「にいがた酒の陣NEXT(ネクスト)」として復活することになる。頸城酒造も2日目の10月9日に出展予定だ。


「世界の小松」が試飲の説明


<古町柳都カフェ>

 柳都カフェは、かつては“美や古”の名で知られた歴史ある待合のお座敷の一部を古町花柳界の魅力を体験できる芸妓カフェとして、平成30(2018)年にオープン。平日の昼限定で柳都振興株式会社所属の古町芸妓が、お茶やお菓子を運ぶ。土曜日には2階広間で古町芸妓の踊りの鑑賞もできる。お座敷ではない場所で芸妓の芸や姿が見られるとして、新潟花柳界と市民や観光客との接点となっている。


柳都カフェ外観


 新潟では全国でも珍しく専門の株式会社が芸妓の養成や派遣などを担う。個々の置き屋だけでは存続が難しくなった35年前、力を合わせて新潟の地に芸妓文化を残していこうと株式会社化に踏み切った。

 新潟では、若手芸妓を「振袖さん」、一定の経験を積んだ芸妓を「留袖さん」と呼ぶ。この日は、10年目の「留袖さん」の菊乃氏の三味線で、6年目の「振袖さん」志穂氏と10年目の「留袖さん」結衣氏が2曲、舞を披露した。




踊りの後は質問タイムが設けられ、振袖さんと留袖さんの衣装の違いや、株式会社の社員として入社する芸妓の仕事内容、最近では新潟だけでなく県外(山梨や長野)からも応募があり芸妓として活動していること、新しい発想を取り入れインスタグラムでの発信やコロナの中でクラウドファンディングに挑戦したことなどの話が芸妓たちの口から語られた。


分科会4は、古町通、本町通、人情横丁、柾谷小路、鍋茶屋通、こんぴら商店街などを深くコンパクトに周った。当日は雨が降っていたが、アーケードがある道が多く傘を出さずに済んだことがありがたかった。

いくつかの商店街アーケードを通行したが、アーケードの下では出店があったりイベントが開催されており活気があった。古町5番町には、ドカベンなどのマンガで有名な水島新司さんのキャラクター銅像が並び、一角には日本アニメ・マンガ専門学校がある。新潟にはアニメやイラスト、CGなどを学ぶ教育機関が多く、商店街を彩るアートや看板などに学生の描いた絵やマンガが多用されているのも特徴的だと感じた。商店街には案内人である手部氏の手がけたアート作品も多く見られた。

案内人の手部氏が手がけたアート作品の前で


受け継がれた喫茶店、長屋を改修したコミュニティ拠点、伝統も新進も大切にする新潟清酒の世界、新しいスタイルで今の新潟に溶け込む芸妓たち。「湊町新潟の中心地古町の新旧めぐり」のテーマ通り、歴史のあるまちの中で今に生きる人たちの声を聞くことができた分科会だった。

参加者の集合写真


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