[レポート]ぼうさいこくたい2023 - 「歴史を生かしたまちづくり」関連展示【THE HERITAGE TIMES YOKOHAMA KANAGAWA】

令和5(2023)年9月17日(日)と18日(月・祝)の2日間、防災に関する活動を実践する多様な団体・機関が一同に会し、取組・知見を発信・共有する日本最大級の防災イベント「防災推進国民大会(通称:ぼうさいこくたい)2023」が横浜国立大学を会場に開催され、過去最多の380団体が参加、それぞれが思考を凝らしたプレゼンテーションを行なった。
開催日は両日とも晴天に恵まれ、9月半ばを過ぎたとは思えないほどの暑さの中、熱心にセッションやワークショップに参加し、また各プレゼンテーションで説明に聞き入る多くの参加者(主催者発表によると2日間で1万6千人)で賑わった。
[THE HERITAGE TIMES YOKOHAMA KANAGAWA] も歴史を生かしたまちづくりに関するニュースサイトとして、令和5(2023)年に関東大震災から100年目を迎えるのを期に、横浜市内の震災遺構、震災復興期の歴史的建造物に着目し、また、こうした歴史的建造物を後世に渡り遺していくための防災に関する取り組みについて紹介する特集コラムをパネル出展したが、[THE HERITAGE TIMES YOKOHAMA KANAGAWA] 以外にも「歴史を生かしたまちづくり」に関連のあるプログラムがあったので、会場の様子とともにその一部を紹介する。
Os-1(オリジナルセッション)NHK民放6局 防災プロジェクト いのちともに守る / 主催団体: NHK民放6局 防災プロジェクト
Os-7(オリジナルセッション)神奈川の関東大震災から100年の教訓を未来につなぐ / 主催団体: オリジナルセッション神奈川Os-7実行委員会
P-41(プレゼンテーション)地域とともに災害から文化財をまもる~文化財防災センターの取り組み~ / 主催団体:独立行政法人国立文化財機構 文化財防災センター
P-42(プレゼンテーション)歴史文化と災害対策~歴史文化資料保全の大学・共同利用機関ネットワーク事業の紹介~ / 主催団体:国立歴史民俗博物館
P-75(プレゼンテーション)アメリカの市民はなぜ義援金を送ったのか〜関東大震災、黎明期の国際災害支援〜 / 主催団体:一般財団法人世界防災フォーラム
P-79(プレゼンテーション)防災専門図書館の出張ミニ企画展「関東大震災から100年 ~備えよう!首都直下地震」 / 主催団体:防災専門図書館(公益社団法人 全国市有物件災害共済会)
PS-53(ポスターセッション)地域と共にある防災教育~「震生湖」生誕から100年目を迎えて~ / 主催団体: 神奈川県秦野市教育委員会
PS-54(ポスターセッション)神奈川県博物館協会加盟館園連携事業「神奈川震災100年プロジェクト」について / 主催団体:神奈川県博物館協会
PS-55(ポスターセッション)関東学院の校舎や国宝円覚寺舎利殿を通して読み解く関東大震災 / 主催団体:関東学院大学 建築・環境学部 建築エンジニアリングコース
PS-56(ポスターセッション) THE HERITAGE TIMES YOKOHAMA KANAGAWA | 関東大震災100年連続コラム / 主催団体: ヘリテイジタイムズ横浜・神奈川
Os-1(オリジナルセッション)NHK民放6局 防災プロジェクト #いのちともに守る / 主催団体: NHK民放6局 防災プロジェクト

NHK/民放キー局の6局が協力して出展。「6局アナウンサー出演のシンポジウム」「6局キャラクターが結集する子供向け防災教室」「番組上映や制作者の講演」など、様々なイベントが展開された。
9月18日のオリジナルセッション「番組上映や制作者の講演」は各局のリレー形式で進められるセッションでNHKは「8K カラーでよみがえる関東大震災」と題し、NHKスペシャル「映像記録 関東大震災~帝都壊滅の三日間~(前編)」「映像記録 関東大震災~帝都壊滅の三日間~(後編)」でも紹介された関東大震災の直後に撮影されたフィルムや平成30(2018)年秋に鎌倉市内で発見された西野写真館旧蔵の写真原板(ガラス乾板)を高精細にカラー化した8K映像が投影され、そこから読み取れる事象や新たな発見などが紹介された。
登壇は吉田律人氏(横浜都市発展記念館 主任調査研究員)、落合淳氏(NHKエデュケーショナル エグゼクティブプロデューサー)、山口勝氏(NHK横浜放送局 チーフアナウンサー)。
吉田律人氏は「高精細カラー化して新たにわかったこともあり、こうした手法もより重要性が増してくると感じた。一方で行きすぎると捏造にもなりかねない。元資料を残すという博物館本来の役割もまた重要」と、また落合淳氏からは「先人が当時最先端の機材でこうした記録を残してくれたおかげでこのように現在に伝えることができている。サイエンスジャーナリストとしてシンパシーを感じる」とコメントした。
「歴史を生かしたまちづくり」の中で、こうした記録を残す作業がいかに重要であるか、再認識させられた内容であった。なお、これらの映像や画像はNHK横浜放送局による屋外展示(O-8(屋外展示)命をまもる 未来へつなぐ」防災ブース / 主催団体: NHK横浜放送局)でも見ることができた。
Os-7(オリジナルセッション)神奈川の関東大震災から100年の教訓を未来につなぐ / 主催団体: オリジナルセッション神奈川Os-7実行委員会

ぼうさいこくたい事務局から指名された地元神奈川の9団体(かながわ人と智をつなぐ防災・減災ネットワーク / 防災塾・だるま / 神奈川地学会 / ひらつか防災まちづくりの会 / (一社)神奈川県建築士会 / (公社)日本建築士会連合会 / 神奈川大学建築学部災害リスクマネジメント 研究室 / 防災&情報研究所 / 神奈川大学建築学部建築学科 落合努)で構成された実行委員会による講演・ワークショップ・ポスター展示などがギッシリと詰まったセッション。

「横浜の土砂災害と火災旋風災害」など関東大震災に関わる地学的見地からのプレゼンテーションが並ぶ。

オリジナルセッション会場の入口付近で目をひく「化石サンゴ」の展示。神奈川県の丹沢地区が元々南方の熱帯地域にあったことを示す「丹沢化石サンゴ礁」から採取された。(神奈川地学会)

関東大震災での被災状況の写真や平塚市内の関東大震災慰霊碑が紹介されていた。(ひらつか防災まちづくりの会 )

水害予防組合議長を歴任した綱島飯田家の現当主飯田助知氏が代表を務めた「鶴見川水害予防組合史増補復刻委員会」が企画・編集し鶴見川流域ネットワーキングが発行した「鶴見川水害予防組合史」の増補復刻版の紹介。委員には平井誠二氏(大倉精神文化研究所)、 岸由ニ氏(慶應義塾大学名誉教授)が名を連ねる。
O-8(屋外展示)命をまもる 未来へつなぐ」防災ブース / 主催団体: NHK横浜放送局

関東大震災当時の被害状況などを「8Kカラー映像」としてリマスターした約10分の動画を上映。クイズなども実施。

テントの外には関東大震災の今昔被災写真も展示されていた。
O-30L(屋外展示)自然災害伝承碑スタンプラリー 伝Q / 主催団体:田中手帳株式会社

手帳製作を生業にしている企業が仕掛ける自然災害伝承碑をめぐるスタンプラリーの紹介。
O-31R(屋外展示)地震と災害時の建物復旧と保守 / 主催団体: 一般社団法人 日本曳家協会

被災建物の復旧方法と強化保守方法の実際に施工した工事内容の説明写真のパネル展示。曳き家は歴史的建造物の保全技術としても重要。
P-41(プレゼンテーション)地域とともに災害から文化財をまもる~文化財防災センターの取り組み~ / 主催団体:独立行政法人国立文化財機構 文化財防災センター

「地域防災体制の構築」「災害時ガイドライン等の整備」などの地域連携の取組や普及啓発・情報収集など事業の5つの柱と「災害時及び防災の支援」の実践活動の紹介。
P-42(プレゼンテーション)歴史文化と災害対策~歴史文化資料保全の大学・共同利用機関ネットワーク事業の紹介~ / 主催団体:国立歴史民俗博物館

自然災害発災時に危機に直面する文化財。特に地域に点在する民間所有の文化財の保全は困難を極める。ここでは、地域の歴史文化を象徴する多様な資料を様々な危機から守り、後世に伝える取り組みとして「歴史文化資料保全の大学・共同利用機関ネットワーク事業」が紹介されていた。
P-50(プレゼンテーション)大地の成り立ちから知る防災のヒント / 主催団体: 日本ジオパークネットワーク

ジオパークのメンバーである島原大変を伝承している島原半島、東日本大震災の三陸、熊本地震の阿蘇など全国での「過去に学び次世代につなぐ」活動を紹介する。

神奈川県からは箱根シオパークが町民とともに実施した自然災害伝承碑の調査の取組を紹介。
P-71(プレゼンテーション)空から見る関東大震災 / 主催団体:ジオ神奈川

震災直後の横浜を日本帝国陸海軍が飛行船や水上飛行艇で撮影した航空写真を1/25,000地形図に貼り重ねている。
P-73(プレゼンテーション)地震だ!台風だ! 防災情報の活用で命を守る / 主催団体:横浜地方気象台

関東大震災の概要や被災状況の写真。

観測所の地盤が隆起したことで70cmほど見かけの潮位が下がったことを示す検潮儀記象。
P-74(プレゼンテーション)神奈川県における取組紹介 / 主催団体: 神奈川県

関東大震災の被災状況の写真や震災伝承の取組みなどが紹介されていた。
P-75(プレゼンテーション)アメリカの市民はなぜ義援金を送ったのか〜関東大震災、黎明期の国際災害支援〜 / 主催団体:一般財団法人世界防災フォーラム

防災に関わる国際支援の事例として、地方の無線局が繋いだアメリカからの迅速で多大な支援などが解説されていた。

アメリカからの支援に対して出された大統領宛に送られたお礼の手紙がその関係者を探すプロジェクトとともに紹介されていた。
P-76(プレゼンテーション)過去から未来へつなぐ災害教訓のバトン / 主催団体: 国土地理院関東地方測量部

全国各地「自然災害伝承碑」の記録を収集する取組の紹介。横浜では横浜公園の1か所のみが登録・公開されている。
P-79(プレゼンテーション)防災専門図書館の出張ミニ企画展「関東大震災から100年 ~備えよう!首都直下地震」 / 主催団体:防災専門図書館(公益社団法人 全国市有物件災害共済会)

防災専門図書館の紹介。古い現物資料が多くありレファレンスも充実しているとの案内だった。
PS-53(ポスターセッション)地域と共にある防災教育~「震生湖」生誕から100年目を迎えて~ / 主催団体: 神奈川県秦野市教育委員会

震生湖について、地域の小学生たちが、地域の文化財として学ぶだけでなく、地震防災という視点をもって取組んだ学習内容についての紹介。
PS-54(ポスターセッション)神奈川県博物館協会加盟館園連携事業「神奈川震災100年プロジェクト」について / 主催団体:神奈川県博物館協会

神奈川県博物館協会に加盟する博物館等の「神奈川震災100年プロジェクト」参加館園がさまざまな切り口で展開する展示事業の概要と見どころが紹介されていた。
PS-55(ポスターセッション)関東学院の校舎や国宝円覚寺舎利殿を通して読み解く関東大震災 / 主催団体:関東学院大学 建築・環境学部 建築エンジニアリングコース

1919年当時の関東学院校舎の図面から作製した模型や、神奈川県の国宝円覚寺舎利殿の構造解析モデルによる耐震の検討などが紹介されていた。
PS-56(ポスターセッション) THE HERITAGE TIMES YOKOHAMA KANAGAWA | 関東大震災100年連続コラム / 主催団体: ヘリテイジタイムズ横浜・神奈川

横浜市内の震災遺構、震災復興期の歴史的建造物に着目し、また、こうした歴史的建造物を後世に渡り遺していくための防災に関する取り組みについての紹介。
<ぼうさいこくたい2023概要>
・日 時:令和5(2023)年9月17日(日)午前10時から午後6時
令和5(2023)年9月18日(月・祝) 午前10時から午後3時30分
・場 所:横浜国立大学(横浜市保土ケ谷区常盤台 79-1)
・テ ー マ:「次の 100 年への備え - 過去に学び、次世代へつなぐ - 」
・主 催:防災推進国民大会 2023 実行委員会
(内閣府・防災推進協議会・防災推進国民会議)
・協 力:神奈川県、横浜市、横浜国立大学
・入 場 料:無料
<関連記事>
05 - 震災復興建造物 - ホテルニューグランド本館 / 旧横浜商工奨励館 / 外国人向け復興住宅