[開港５都市]景観まちづくり会議2025神戸大会 - 07　第３分科会「『”あの日”を歩き、“あす”を描く』-記憶と景観で考える防災まちづくり -」【THE HERITAGE TIMES YOKOHAMA KANAGAWA】

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18 時間前
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令和7（2025)年11月30日(日）、「開港5都市景観まちづくり会議2025神戸大会」２日目の朝は、5つの分科会に分かれるエクスカーションで始まる。

それぞれ、分科会1は「景観ルールが具現化された街並みを見て歩いて、考える」、分科会2は「宗教と景観～多文化共生のまち神戸を歩く〜」、分科会3は「『”あの日”を歩き、“あす”を描く』-記憶と景観で考える防災まちづくり -」、分科会4は「『水と酒と癒しの旅路』癒しと文化を結ぶルート魚崎郷～有馬温泉」、分科会5 は「まちとみち」をテーマとしており、［THE HERITAGE TIMES YOKOHAMA KANAGAWA］は各分科会に参加した。

集合場所は三宮駅から電車で一駅のJR灘駅。まずは阪神・淡路大震災で大きな被害を受け、復興整備された灘浜エリアを歩いていく。分科会の企画と運営は「南京町景観形成協議会」と「新長田駅北地区東部いえなみ委員会」のメンバー。各都市からは約30名が参加した。

灘浜まちあるき

分科会３のテーマは「『”あの日”を歩き、“あす”を描く』-記憶と景観で考える防災まちづくり -」。「震災の記憶」をたどる体験・まち歩きを通じて、まちの景観や暮らしの中にある”語られない教訓”を掘り起こし、防災・減災・復興の視点を次世代や5都市と共有する内容となっている。主な案内は根津昌彦氏（新長田駅北・中地区まちづくり協議会）。

初めに灘駅前で震災前後の空撮写真を用いて、灘浜エリアについての概要説明を受けた。灘駅から海岸エリアまでの間は「灘文化軸」が形成されており、灘駅の駅前広場や歩行者空間にはアート作品が展示されている。参加者は灘文化軸（ミュージアムロード）を歩きながら海岸エリアに向かっていく。

灘浜エリアへ向かう道中には「臨港線跡地」があった。もともと海岸エリアには神戸製鋼の工場があり、工場で作られた製品を海外へ輸出するための役割を果たしていた。現在は歩行者専用道となっており、健康づくりを楽しみながら歩くことができる桜並木の場となっている。

HAT神戸

灘駅から歩いて15分ほどにあるHAT神戸。ここには大規模工場があったが、工場が廃止された後は神戸市基本計画のなかで「東部新都心」と位置付けられ、震災前から整備が進められてきた。

しかし、震災を機に「神戸市復興計画」のなかのシンボルプロジェクトとして位置づけられ、甚大な被害を受けた市街地の住宅や産業の受け皿となる市街地復興の先導的な役割を担う場所となった。規模は120haと非常に大きく、その中には約7000戸の復興住宅のほか、学校、業務・研究などの施設、道路などの公共施設が整備され、震災の面影を感じさせない街となっている。

人と防災未来センター

HAT神戸のなかに位置する本施設では、震災の経験と教訓を継承し、防災・減災の実現のために必要な情報を発信している。施設内には当時の映像や資料や、震災体験者のエピソードなどが展示されており、参加者一人ひとりが震災のことを理解できる機会となった。

蓮池公会堂

「まち歩き」と「人と防災未来センター見学」を終え、参加者は新長田地区にある蓮池公会堂へ移動した。蓮池公会堂では昼食をいただきながら新長田地区の復興に関する記録ムービーを鑑賞した。昼食は新長田地区の婦人部の皆さまによる豚汁の炊き出しをいただいた。

この豚汁は震災時にも提供していた（レシピは多少異なる）とのことだが、昼食でも震災を疑似体験できたのは良かった。そのほか、この分科会に参加されていた神戸大会の曹会長より「老祥記」の豚まんの提供があったほか、モロゾフのプリンが配られた。このモロゾフのプリンには「震災のときも容器が壊れず、神戸市民はプリン容器をコップとして使っている」とのエピソードがあり、参加者にはプリンの空容器もプレゼントされた。

昼食後は根津昌彦氏を中心に「震災後の神戸に関するトークセッション」が行われた。根津さんからは「震災当時は西宮にいた。神戸で地震が起きるとは思わなかった。」とのエピソードが語られた。震災後は新長田駅北・中地区の共同化事業等に携わっており、「復興計画を策定する際は地域住民等と意見が対立する場面があった」と振り返っていた。

新長田まち歩き

トークセッションのあとは新長田駅北地区と南地区のまちを歩きながら、新長田の復興まちづくりの説明を受けた。新長田駅北地区は新長田駅の北に広がる、ケミカル産業が中心の59.6haのエリアだが、震災では約8割の建物が被害を受けた。震災後は早期の復興及び安全・安心で快適な市街地整備を目指し、土地区画整理事業が行われた。復興整備にあたっては「道路拡幅」「協調的建替住宅」「共同建替住宅」などの工夫が用いられていることを、案内の根津氏から説明いただいた。

また、当地区は「杜の下町」構想が掲げられており、緑豊かな生活環境をつくり、住商工が相乗する魅力あるまちづくりが形成されている。その中核施設として整備された「シュープラザ」も視察したが、本施設は老朽化等により事業縮小傾向にあり、施設1階の靴屋も11月末で閉店とのことだった。

新長田駅南地区は新長田駅の南に広がる19.9haのエリアだが、この地区では多様な都市機能の集積等を図り、44棟の再開発ビルが建設され、それらを地下・地上・2階デッキレベルの3層に繋いで歩行者ネットワークを形成する、といった取組がなされてきた。この事業は震災後から昨年まで長期にわたり実施されていたが、当初の事業の目論見から外れ、巨額の費用と巨額の赤字を抱えている旨の説明があった。

また、本地区には「復興の象徴」として「鉄人28号」の巨大モニュメントが展示されており、参加者一同の集合写真を撮影した。

防災等に係る5都市トーク

１時間ほどのまち歩きを終えて、再び蓮池公会堂に戻り、4班に分かれて「今日の歩きで感じたこと」「これからすること、できること」をテーマに参加者同士の意見交換を行った。意見交換のなかでは「こういった設備が街に必要」といった意見や「コミュニティの大事さ」といった感想が出され、活発な議論が行われた。

意見交換のあと、昨年の開港5都市景観まちづくり会議横浜大会後から不定期に行われていた「防災部会」のメンバーである他4都市より、「防災に関する取組」などの報告が行われた。なかでも函館市からは「大火が多い町。その経験から道路拡幅・防火帯建築が必要とされ、整備されてきた」というエピソードが語られたのが印象的だった。