[開港5都市]景観まちづくり会議2025神戸大会 第4分科会 「『水と酒と癒しの旅路』癒しと文化を結ぶルート 魚崎郷~有馬温泉」【THE HERITAGE TIMES YOKOHAMA KANAGAWA】
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- 2025年12月29日
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令和7(2025)年11月30日(日)、「開港5都市景観まちづくり会議2025神戸大会」2日目の朝は、5つの分科会に分かれるエクスカーションで始まる。
それぞれ、分科会1は「景観ルールが具現化された街並みを見て歩いて、考える」、分科会2は「宗教と景観~多文化共生のまち神戸を歩く〜」、分科会3は「『”あの日”を歩き、“あす”を描く』-記憶と景観で考える防災まちづくり -」、分科会4は「『水と酒と癒しの旅路』癒しと文化を結ぶルート 魚崎郷~有馬温泉」、分科会5は「まちとみち」をテーマとしており、[THE HERITAGE TIMES YOKOHAMA KANAGAWA]は各分科会に参加した。
分科会4では、東灘区に位置する灘五郷の一つ「旧魚崎郷」の酒蔵を中心とした文化的景観と、北区に位置する有馬温泉、そして神戸市の郊外部を巡った。
魚崎地区は、阪神・淡路大震災で多くの木造の蔵が倒壊し、廃業に追い込まれた酒蔵もあった。伝統的な街並みが消失してしまった中で、歴史や文化の継承を目指して「魚崎郷まちなみ委員会」が組織され、建築物の新築時の修景や緑化等の協議を行っている。同委員会には地域住民だけでなく、地域の主要産業となってきた酒造会社も参加しており、協力して魅力あるまちづくりを進めている。当日は同委員会のメンバーが先導役となり、まち歩きが行われた。
浜福鶴 吟醸工房(解説:灘浜福鶴蔵 宮脇米治氏)
震災で蔵が倒壊したが、建て替えと合わせて機械化を図り、現在に至る。酒の辛口・甘口は麹で決まると思われがちだが、実は水によるところが大きい。灘の「男酒」、伏見の「女酒」と呼ばれるが、灘は硬水を使った辛口、伏見は軟水を使った甘口を指している。
昔は各蔵で酒のベースとなる「酛(もと)」を作る必要があり、時計のない時代に攪拌(かくはん)時間を測るため、杜氏が唄を歌いながら櫂(かい)で桶を混ぜていたという。参加者も櫂入れの作業を体験した。

復元された石畳の道
震災で多くの石畳の道も失われたが、ここは唯一復元された場所である。両脇の黒塀と合わせて、往時の街並みを継承する空間となっている。

6号モニュメント
魚崎郷地区景観形成市民協定の範囲を示すモニュメントの一つ。協定地区内には合計6つのモニュメントが設置されている。

灘五郷の発展と宮水(解説:菊正宗酒造(株)増田康之氏)
旧魚崎郷を含む灘五郷において酒造りが発展した理由として、①「宮水」と呼ばれる良質な伏流水、②水車精米、③六甲おろしによる冷却効果、④住吉川を活用した舟運が挙げられる。酒の成分の約8割は水であり、水で味が決まる。水道水との大きな違いは、鉄やマンガンの含有量が少ないことだ。鉄やマンガンは清酒を茶色く着色させてしまう。①の宮水には3つの伏流水が含まれており、このうち「札場筋伏流」はカルシウムやカリウムが豊富で、このミネラル分が酵母の発酵に重要な働きをする。隣接する西宮市では「宮水保全条例」を制定し、開発時に地下水に影響を与えることがないよう、灘五郷酒造組合との事前協議を義務化している。なお、宮水は原則として酒造りにしか使用できない。②の水車精米は、江戸時代末期から住吉川沿いに多くの精米水車が点在したことで発達した。明治40年前後の最盛期には、精米所に約1,000人の従業員がいた。これらの要因に加え、兵庫県北部の吉川(よかわ)地区が良質な山田錦の一大栽培地であること、また篠山地区が丹波杜氏の拠点であったことなど、複数の好条件が重なり、この地の酒造りは発展を遂げた。

昼食
昼食は櫻正宗酒造にて、鍋と宮水で仕込んだ地酒をいただく。デザートに提供された酒粕のアイスクリームも含め、酒文化を堪能する時間となった。

昼食後はマイクロバスで有馬温泉へ移動した。
有馬温泉は羽柴秀吉と縁が深く、湯治に通っただけでなく、かつては「湯山御殿(ゆやまごてん)」と呼ばれる豪華な湯殿が設けられていたと伝わる。その「湯山御殿」があったとされる極楽寺では、震災で損傷した庫裏の建て直し工事の際、岩風呂の遺構が出土し、現在は一般公開されている。街中の街灯や橋の欄干には、秀吉にちなんだ「千成瓢箪」のモチーフが配されている。
そんな有馬温泉の街を「有馬温泉ボランティアガイド」の解説とともに巡る。
有馬の温泉は、滝川(太閤通りの暗渠)と六甲川に囲まれた三角地帯の内側からしか湧いていないという。有馬での湯治は1工程が7日間であり、長く逗留する客も多かった。そのため湯治宿では、1日目は食事が出るが、2日目からは宿泊客が自ら食材を購入して調理をする「自炊」の時代もあったとのことだ。

有馬川親水広場
有馬温泉は六甲山の北側の狭い範囲に発展した温泉街のため、街中に広場が少ない。震災の復興事業としてこの親水広場が整備され、現在は「さくらまつり」など地域のイベント会場として活用されている。

御所房
谷崎潤一郎も通った老舗旅館。国の登録有形文化財にも指定されている。

有馬天神
古くから温泉街の厄除けとして信仰を集めてきた。境内からは「天神源泉」が湧き出している。火災に遭った歴史があるため、石の鳥居と扁額のみが近世のものだという。

三ツ森 炭酸泉店
有馬温泉名物「炭酸せんべい」は、炭酸泉を使用して作られたサクッとした食感の銘菓である。その老舗「三津森本舗」が炭酸泉の源泉近くに建てた「三ツ森 炭酸泉店」にて、分科会のまとめが行われた。同店の建物は、「NAGATA Bamboo」として知られた竹製品の輸出業を営む長田通商(株)創業家の居宅として、昭和初期に神戸市御影に建てられた建屋の一部を移築したものだ。

各都市の参加者からは、魚崎地区のまちづくりにおいて景観だけでなく「宮水」という目に見えない資源を守る仕組みがあることに感銘を受けたといった感想が聞かれた。また、有馬温泉でも「有馬まちなみ景観委員会」を中心に景観協議が行われているが、看板等のルール徹底に対する課題があることなどが共有され、今後のまちづくりへの新たな視点を得る機会となった。

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