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[開港5都市]景観まちづくり会議2025神戸大会 - 06 第2分科会 「宗教と景観~多文化共生のまち神戸を歩く〜」【THE HERITAGE TIMES YOKOHAMA KANAGAWA】

更新日:2025年12月29日


生田神社
生田神社

令和7(2025)年11月30日(日)、「開港5都市景観まちづくり会議2025神戸大会」2日目の朝は、5つの分科会に分かれるエクスカーションで始まる。

それぞれ、分科会1は「景観ルールが具現化された街並みを見て歩いて、考える」、分科会2は「宗教と景観~多文化共生のまち神戸を歩く〜」、分科会3は「”あの日”を歩き、“あす”を描く』-記憶と景観で考える防災まちづくり -」、分科会4は「『水と酒と癒しの旅路』癒しと文化を結ぶルート 魚崎郷~有馬温泉」、分科会5 は「まちとみち」をテーマとしており、[THE HERITAGE TIMES YOKOHAMA KANAGAWA]は各分科会に参加した。


生田神社


当日、天気は晴天。神社には七五三のお参りに訪れる参拝客で賑わっている。まずは生田神社会館で会場で趣旨説明と講義があった。分科会の企画と運営は北野・山本地区をまもり・育てる会、トアロード地区まちづくり協議会、南京町景観形成協議会の7人のメンバー。各都市からは13名が参加した。


「趣旨説明」曹祐仁氏(南京町景観形成協議会)

曹祐仁氏(南京町景観形成協議会)
曹祐仁氏(南京町景観形成協議会)

分科会2のテーマは「宗教と景観~多文化共生のまち神戸を歩く〜」。開港後、多様な宗教・文化が共存共栄しながら特色ある景観が育まれてきた歴史を、まち歩き・対話を通じて学び、多文化共生の可能性を考える。「世界では国籍や人種、宗教の違いから紛争が起きている。北野地区にはわずか2ヘクタールの中に多種多様な宗教施設がいくつもあり、お互いご近所として、支えあって共存している。今日はそれぞれの施設の方からお話を伺って、参加者の知見としたい。」と趣旨説明があった。


「国際港都・神戸をめぐって」加藤隆久氏(生田神社名誉宮司)

加藤隆久氏(生田神社名誉宮司)
加藤隆久氏(生田神社名誉宮司)

続いて、生田神社名誉宮司の加藤隆久氏から、「国際港都・神戸をめぐって」をテーマに、生田神社を中心として、神戸の開港の歴史、北野エリアの宗教施設が集積してきた経緯、トアロードの名前の由来などについて解説いただいた。



「もともと生田神社を守ってきた44戸が神戸(当初の読み方はカンベ)から発達してきた都市」「食べ物、スポーツから文化まで多くのものが神戸から始まった」「フランク・ロイド・ライトの研究家である谷川正己氏がシカゴ・オークパークにあるライトの家を訪ねた際、ライトが明治28(1895)年が来日した時の55枚の写真を発見。その中に生田神社の写真が含まれていたが、本殿の前にはガス灯が写っていた。」といったエピソードもお話しいただいた。


「日本最古の国営オリーブ園」宇津誠二氏(インターナショナルオリーブアカデミー神戸)

宇津誠二氏(インターナショナルオリーブアカデミー神戸)
宇津誠二氏(インターナショナルオリーブアカデミー神戸)

続いて、明治12(1879)年に神戸・北野に造られた、日本最古の国営オリーブ園の伝承活動を行うインターナショナルオリーブアカデミー神戸の宇津誠二氏から、「神戸阿利襪園」について講義をいただいた。

日本初のオリーブ園は、日本の将来の発展を見据えて造られた国営のオリーブ園で、国内でのオリーブ栽培及び製品化の可能性が研究された。現在の再度筋町の林野を開墾して拡張され、1,000本を超えるオリーブが栽培された。その後、民間に払い下げられるが、急速に都市化が進むなか、存続が難しくなり、明治41(1908)年には閉園となり、人々の記憶から消えて行ってしまった。



宇津氏からはオリーブ園の整備の経緯に合わせて、神戸の居留地と雑居地となる北野・山本地区の歴史の紹介があった。

最後に昭和12(1937)年、神戸市観光課が発行した「カウベ」という冊子に掲載された文書が、その当時の風景をよく伝えていることから、村上恵子氏(トアロード地区まちづくり協議会)が朗読し、講義を終えた。講義後は全員で現地見学へ向かった。


生田の森


まずは加藤名誉宮司の案内で生田神社の境内北側にある「生田の森」へ。樹齢500年のクスノキ、神功皇后が三韓渡航の際にすりつぶした魚肉を鉾の先に塗って焼いて食べたのが始まりと伝える「かまぼこの発祥地の碑」、料理に携わる人達の魂の籠った庖丁に感謝すると共に、食文化の向上を願い神戸市内の料理食品関係者によって建立された「包丁塚」などが紹介された。

「夏でもこの森に入ると体感で2〜3度低く感じる。(加藤名誉宮司)」


トアロード・国営神戸オリーブ園跡・神戸北野ホテル


見学先のコーディネートを担当した若山理蘭氏(北野・山本地区をまもり・育てる会)の先導で、生田神社からトアロードを進み、北野ホテル前で国営神戸オリーブ園について、改めて宇津誠二氏から解説いただいた。

神戸北野ホテルは、国営オリーブ園跡地の一部に、前身のホテルの建物を引き継ぎ、フランス料理人の山口浩氏による日本で初めての都市型オーベルジュとして平成12(2000)年に開業。平成27(2015)年、同ホテルの15周年を記念し、前庭にオリーブの記念植樹が行われるとともに、記念モニュメントが設置された。

「今の状況からはイメージしにくいが、周りが畑や野山だったころにこの地に広がっていたオリーブ畑を是非イメージしてもらいたい(宇津誠二氏)」


神戸ムスリムモスク

神戸ムスリムモスク外観
神戸ムスリムモスク外観

神戸北野ホテルから次の見学先である神戸ムスリムモスクに向かう。女性は頭を覆う布を巻いて準備。案内いただいたのは、ナズィール・アーメッド・シディキ氏と藤谷勇介氏。

神戸ムスリムモスクは、第一次世界大戦中・後に神戸に移住するムスリムが増えたことを受けて、昭和10(1935)年、神戸在住のトルコ人、タタール人、インド人貿易商らの出資により建てられた日本で最初のモスクである。


ナズィール・アーメッド・シディキ氏
ナズィール・アーメッド・シディキ氏

大きな玉ねぎ形ドームや三日月を頂く4基の尖塔(ミナレット)など、モスク特有の様式が施された鉄筋コンクリート造り3階建て。設計はチェコ出身の建築家スワガー。施工は竹中工務店。神戸大空襲や阪神・淡路大震災でも被害を免れ、頑強な建築構造をもち「阪神・淡路大震災の際には避難所としてイスラム教徒以外の方も受け入れた。(アーメッド氏)」。

2階に女性用の礼拝室があり、1階から3階まで祈りの声が届くよう吹き抜けが設けられていた。1階中央には聖地メッカの方向を示す壁のくぼみ(ミフラーブ)、横にはイマームが立つミンバル(説教壇)があり、祈りの時間が表示されていた。



神戸ムスリムモスク初の日本人イマーム職(指導者)である藤谷氏は、兵庫県宝塚市出身、看護学を学んでいた時に生命の不思議に触れイスラム教に入信。サウジアラビア王立大学シャリーア法学部で6年間学び、令和6(2024)年、同モスク初の日本人イマームとして戻ってきた。


藤谷勇介氏(祭壇中央)
藤谷勇介氏(祭壇中央)

「狭い地域で平和共存しているところは世界でも珍しい。お互いを知ること、何かあれば話し合うことが大切。(藤谷氏)」

解説の後、モスクに隣接する「イスラム文化センター」で、全員でハラルメニューの昼食をいただく。食べ物に関する話などで会話も弾んだ。


昼食の様子
昼食の様子

「北野では、隣のキリスト教会、寺院、ユダヤ教会とも『ご近所』として日頃から付き合いがある。(アーメッド氏)」

「イスラム教に対する理解を深めるために学校や行政にもでかけて話をすることも多い。(藤谷氏)」


関西ユダヤ教会シナゴーグ【外観見学】

関西ユダヤ教会シナゴーグ外観
関西ユダヤ教会シナゴーグ外観

イスラムモスクから細い道を抜けで向かったのは「関西ユダヤ教会シナゴーグ」。「関西ユダヤ教会シナゴーグ」は、昭和 45(1970) 年に再建されたもの。シナゴーグとはユダヤ教の会堂を意味し、日本では神戸、東京などに存在する。このうち、関西ユダヤ教団シナゴーグは日本で現存最古のシナゴーグである。外観は白色を主体とした2階建ての建物で、ファサードにはアーチ型の装飾があり、ユダヤ教の象徴であるダビデの星(六芒星)を配する。


バグワン・マハビールスワミ・ジェイン寺院(ジャイナ教寺院)

バグワン・マハビールスワミ・ジェイン寺院外観
バグワン・マハビールスワミ・ジェイン寺院外観

日本唯一のジャイナ教寺院。ジャイナ教は、西インドのグジャラート州を中心に広がる、厳格な菜食主義や不殺生で知られる宗教。白の総大理石造り。動植物を象った繊細な彫刻が目をひく。


バグワン・マハビールスワミ・ジェイン寺院内部
バグワン・マハビールスワミ・ジェイン寺院内部
神戸ユダヤ共同体(神戸ジューコム)跡地

福岡賢二氏
福岡賢二氏

昭和12(1937)年、ユダヤ人アナトール・ポネヴェスキーによって、「神戸ユダヤ共同体」が現在の神戸電子専門学校南館の当地につくられた。当時神戸には、日本最大のユダヤ人組織があり、シナゴーグ(ユダヤ教集会所)があった。昭和20(1945)年6月5日の神戸大空襲で建物は焼失したが、隣接の石垣がほぼ当時のまま残っている。その石垣の前で学園の常務理事である福岡賢二氏に説明いただいた。

「この石垣に着目するようになったきっかけは、平成30(2018)年、杉原千畝の母校、愛知県立瑞陵高校から『杉原を讃える記念施設の展示物に石垣の写真を使わせてほしい』という電話だった。(福岡賢二氏)」


神戸ユダヤ共同体(神戸ジューコム)跡地の擁壁
神戸ユダヤ共同体(神戸ジューコム)跡地の擁壁

第二次世界大戦の戦火が欧州に広がりつつある昭和15(1940)年6月、神戸ユダヤ共同体はリトアニアからユダヤ難民を助けてほしいという連絡を受け、受け入れを決定した。同胞のための経済的な援助を求め、ニューヨークの「ユダヤ合同分配委員会」(通称ジョイント)に電報を打ったところ「ユダヤ人を救え。お金は問題ではない(つまり経済的な支援の確約)」と返信があった。その時から、神戸のユダヤ難民救済活動拠点となり多くのユダヤ人を救った。

一方リトアニアでは、杉原千畝領事代理の人道的な行為によって、日本通過ビザを得たユダヤ難民はシベリア鉄道経由で日本を目指した。この「命のビザ」と他の領事館発券のビザによって、また、通過ビザのないユダヤ難民も含めて、4500人を超えるユダヤ難民が主にウラジオストック、福井県敦賀を経由して、神戸にたどり着いた。神戸ユダヤ共同体は、ユダヤ難民に住まいの提供から生活のための給付金、食料、衣服の支給、そして、出国に関する相談、様々な心配事の助言まで、あらゆる支援を全員で献身的に行なった。また、神戸の人々も、心を開いてユダヤ難民を受け入れ、市内の各地で様々なあたたかい交流が生まれた。

「母国で家畜以下の扱いを受けていた彼らにとって、忘れ難い心に温かい思い出として記憶されたと思う。(福岡賢二氏)」


神戸ハリストス正教会(神戸聖母就寝聖堂・ロシア教会)

神戸ハリストス正教会外観
神戸ハリストス正教会外観

ワシリィ杉村太郎司祭に案内いただいた。神戸ハリストス正教会は、日本正教会に属する教会。大正2(1913)年、平野祇園町に会堂が建てられたが、昭和20(1945)年、戦災により焼失。現在の教会は、昭和27(1952)年、チョコレートで有名なヴァレンティン・F・モロゾフ氏らの尽力で建設された。現在も住宅地の中にひっそりと佇む。白い外壁、青いドーム(キューポラ)、八端十字架が特徴的。聖堂内正面にイコノスタシス(聖障壁)がありイコン(聖画像)で覆われているのも特徴。


神戸ハリストス正教会内部
神戸ハリストス正教会内部
神戸北野美術館

神戸北野美術館外観
神戸北野美術館外観

館長の竹中愛美子氏に案内いただいた。神戸北野美術館は北野通りに面する石垣上に明治31(1898)年にドイツ人の住居として建設された異人館。戦後は昭和53(1978)年までアメリカ領事館官舎として使用された後、公開異人館「ホワイトハウス」として公開。阪神大震災後の平成8(1996)年11月に神戸北野美術館として開館。令和2(2020)年から4年間の耐震改修工事を終え令和6(2024)年にリニューアルオープン。神戸市出身の関西圏で活躍する注目の若手アーティストの作品や、北野山本地区と友好交流しているパリ・モンマルトルの画家作品の展示、神戸阿利襪園関連資料の展示、グッズ販売を行っている。


神戸北野美術館内部
神戸北野美術館内部
中華民国留日神戸華僑総会

江丕正氏(中華民国留日神戸華僑総会副会長)
江丕正氏(中華民国留日神戸華僑総会副会長)

建物を案内いただいたのは江丕正氏(中華民国留日神戸華僑総会副会長)。屋内に入ると目に入るのが台湾の子どもの神様「三太子」。「神戸まつりでは毎年、この三太子の被り物を被ってパレードに参加している(江氏)」


「三太子」
「三太子」

現在、中華民国留日神戸華僑総会が使用している建物は、明治42(1909)年頃に竣工し、第二次世界大戦以前は長くドイツ人のゲンセン氏の個人住宅として使用されてきた。設計はA.N.ハンセル(推定)。下見板張りの外壁、ベイウィンドー、煉瓦積みの煙突、ベランダがつくコロニアルスタイル。ベランダは室内化されため、屋内側の窓に鎧戸がついている。



ディスカッション「多様な宗教・文化が共生するまちの景観を未来につなげるには?一開港都市の“魅力づくり”の新たな視点-」


中華民国留日神戸華僑総会の2階の部屋を会場に「多様な宗教・文化が共生するまちの景観を未来につなげるには?一開港都市の“魅力づくり”の新たな視点-」をテーマに3班に分かれてディスカッションを行った。参加者それぞれが、「今日一日を通して感じたこと」、そして「今後チャレンジしたいこと」を書き出し、分科会を振り返る機会となった。

最後に浅木隆子氏(北野・山本地区をまもり、そだてる会会長)が「いろいろな文化に触れることができるのも開港都市の特徴。どの宗教のことも邪魔をせず、ご近所付き合いをしていく。そして異文化への理解が平和にもつながる。」とまとめ、分科会を締め括った。


浅木隆子氏(北野・山本地区をまもり、そだてる会会長)
浅木隆子氏(北野・山本地区をまもり、そだてる会会長)

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